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[2014年第31週]KDDIの1Qは増収増益、格安で使えるLG G2 mini、アートイベントでBeacon

2014.08.04

Updated by Naohisa Iwamoto on August 4, 2014, 14:30 pm JST

この週は、前週のNTTドコモに続いてKDDIの決算が発表になった。KDDIの2015年3月期(2014年4月〜2015年3月) 第1四半期の決算は、営業収益が前年同期比1.8%増の1兆206億円(通期業績予想に対する進捗率は22%)、営業利益が同9.0%増の1948億円(同27%)と増収増益だった。パーソナルセグメントにおけるモバイル通信料収入の大幅増収が貢献し、前年同期比で161億円の増益となった。連結営業利益の2期連続の2ケタ成長に向けて順調な進ちょくを見せているとする(報道発表資料:2015年3月期第1四半期決算説明会(2014年7月30日))。

格安SIM、格安スマホのバリエーションが広がる

格安SIMや格安スマホの動きが止まらない。毎週のようにいくつもの事業者が新サービスや端末の提供をアナウンスしている。この週はインターネットイニシアティブ(IIJ)が、SIMロックフリーのLTE対応スマートフォン「LG G2 mini」(LG Electronics製、以下LG)の販売を開始したと発表している。LG G2 miniはLGのプレミアムモデルの製品で、4.7インチのディスプレイ、800万画素のメインカメラを搭載し、OSにAndroid 4.4を採用している。ディスプレイをたたくパターンでロックを解除できる「ノックコード」も搭載する。IIJではLG G2 miniを家電量販店や販売店を通じて販売し、「IIJmioウエルカムパック」などとセットにして低コストでスマートフォンを持てることをユーザーに訴求する。

またIIJの子会社であるハイホーは、LG G2 miniとhi-hoのSIMカードをセットにした「hi-ho LTE typeDミニマムスタート with G2 mini 【LTE】」の提供を始めた。端末代金込みで月額2980円から提供し、高性能な端末を低料金で提供することでスマートフォン初心者層などの開拓を進める(報道発表資料:IIJ、SIMロックフリー端末「LG G2 mini」の取り扱いを開始)。

U-NEXTは、格安SIMサービスの「U-mobile」に高速データ通信が可能な容量が異なるなど新しいプランを追加した。また、サービス名称を変更してサービス内容のわかりやすさを高めた。U-mobileではこれまで、3GBまでのプランと、「ダブルフィックス」と呼ぶ2段階定額制を用意していた。今回、新しく1GBまでの小容量プランと、5GB、7GBn大容量プランを追加した。また、音声通話ができるプランを「U-mobile 通話プラス」、データ通信だけのプランを「U-mobile データ専用」に変更してわかりやすさを高めた。通話ができる1GBプラン「U-mobile 通話プラス 1GB」は月額1580円、データ通信だけの1GBプラン「U-mobile データ専用 1GB」は月額790円などとなっている(報道発表資料:格安SIMカード『U-mobile』で新たに大容量&ライトサービスを提供開始)。

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プリペイド式のSIMに新規参入。兼松コミュニケーションズは、NTTドコモの回線を利用したMVNO事業に本格参入し、プリペイド方式のSIMカード「COMST T-SIM」を、直販サイト、独自販売ルートにより日本全国と海外8カ国で販売開始した。COMST T-SIMは、SIMカードとチャージ済みのプリペイドカードのセット商品。ラインアップは、「日額プラン」(税込み3980円)、「1GBプラン」(税込み3980円)、「3GBプラン」(税込み6980円)の3種類を用意する。例えば、日額プランでは31日間の利用期間内に1日あたり50MBの高速データ通信が可能だ(関連記事:兼松コミュニケーションズ、コンビニでチャージできるプリペイド式のSIMを発売)。

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HTC J butterfly新製品、ワイモバイルの基本料無料キャンペーン

大手キャリアなどの製品、サービスも負けてはいない。KDDIは「HTC J butterfly」(HTC Corporation製、以下HTC)の最新モデルである「HTC J butterfly HTL23」を2014年8月下旬以降に発売する。HTCがau限定モデルとして提供する第4弾になる。メインカメラには1300万画素と200万画素の2つのレンズを搭載し、撮影後にピントの合う距離を選択できる「UFocus」や、擬似的な立体効果を楽しめる「3次元効果」などの機能を搭載した。またフロントカメラも500万画素の高画素タイプを採用し、自分撮りを高精細に仕上げられる。

2つのレンズで奥行き感が楽しめるデュオカメラを搭載! 新しい「HTC J butterfly」について
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ハイレゾ音源に対応し、同梱の「JBL ハイパフォーマンス インイヤー ヘッドフォン」でよりリアルな音を楽しめるほか、デュアルフロントステレオスピーカーで臨場感あるサウンドを再生できる。キャリアアグリゲーションに対応したLTEと、最大110MbpsのWiMAX 2+の双方で通信が可能。ディスプレイは5インチのフルHD、おサイフケータイ/NFC、ワンセグ/フルセグ、赤外線通信、防水/防塵への対応とフル装備のスペックを持つ(報道発表資料:2つのレンズで奥行き感が楽しめるデュオカメラを搭載! 新しい「HTC J butterfly」について)。

またKDDIは、自然災害発生時の被災地での迅速なエリア復旧や、利用者が集中する屋外イベントなどのトラフィック対策としても利用している車載型基地局を、キャリアアグリゲーションに対応させる。まず、この夏の花火大会などのイベントで導入する。8月2日〜3日、9日〜10日の「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」(茨城県)、9日の「ふくろい遠州の花火」(静岡県)、15日〜17日の「コミックマーケット86」(東京都)、29日〜31日の「Sweet Love Shower」(山梨県)で導入。その後9月以降の予定はauホームページで順次公開する(報道発表資料:「キャリアアグリゲーション」対応の車載型基地局の導入について)。

2014年8月1日にY!mobileのサービス提供を開始したワイモバイルは、PHS電話機に適用される「ケータイプラン」の基本使用料を3年間無料にする「ケータイ基本使用料3年間無料キャンペーン」を8月1日から31日まで実施する。キャンペーン期間に「ケータイプラン」を新規契約した個人の利用者は、特典としてケータイプランの基本使用料である月額1381円が、契約期間である3年間にわたって無料になる。さらに新規契約事務手数料も無料で提供する(関連記事:ワイモバイル、「ケータイ」の基本料金を3年間無料にするキャンペーン)。

一方、ヤフーが提供するYahoo!には、自動車ユーザー向けの新サービスが加わった。スマートフォン向けの無料カーナビアプリ「Yahoo!カーナビ」がそれ。高品質なイラストで道路や建物、ナビゲーションを表現するだけでなく、無料のカーナビアプリとして初めてVICSに対応した。VICSが提供するリアルタイムの渋滞情報や交通規制情報を元にして、適切なルートを音声と地図で案内する。また、2万4000カ所の時間貸し駐車場のリアルタイム満車・空車情報の提供、ガソリン価格情報を反映したガソリンスタンド検索などの機能も備える(報道発表資料:「Yahoo!カーナビ」アプリ、本日より提供開始)。

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NFVは2017年に本格導入、新宿のアートイベントでBeaconを利用

このほかのこの週の主なトピックを紹介する。

移動体通信、IT分野の調査を手がけるMCAは、NFV(Network Functions Virtualization)に関連するインフラ市場動向調査の結果をとりまとめ、発表した。NFVは、2015年度に一部での導入が想定され、2017年度に本格的な導入が進むと分析。その後、NFV化率は高まっていくと見る。NFV通信関連インフラ市場の規模は、2015年には190億円となり、2018年には880億円にまで拡大すると予測する(関連記事:NFV市場は2018年度に880億円に拡大--MCA調査)。

KDDIとKDDI研究所は、LTEの次世代の通信規格である「LTE-Advanced」向けの無線機内蔵小型アンテナ「アクティブアンテナシステム 」(Active Antenna System、以下、AAS)で、指向性制御技術を実装した屋外実験を行った。電波を強める方向と弱める方向を制御することでカバーエリアの調整が容易になるため、他の基地局との干渉を抑えることができる。実験の結果、マクロセル内のスモールセルエリアのダウンロード速度が従来の基地局装置を利用した場合の1.6倍になることや、消費電力を約50%低減できることを確認した(関連記事:KDDI、LTE-Advanced向けの新型アンテナで指向性制御技術の屋外実証実験)。

ノキア ソリューションズ&ネットワークス(以下、ノキアネットワークス)とパナソニック システム ネットワークス(PSN)は2014年7月31日、ノキアネットワークスがPSNのキャリア向け無線ネットワーク事業を譲り受けることで基本合意書を締結したと発表した。ノキアネットワークスが取得するのは、携帯電話キャリア向けのLTE/3G無線基地局システム事業、光・無線中継装置などの応用無線機器システム事業からなる無線ネットワーク事業。2014年9月末までに本契約書を締結し、2015年1月1日に事業譲渡を完了させる予定だ(関連記事:ノキア、パナソニックから無線基地局など無線ネットワーク事業を譲り受け)。

「新宿クリエイターズ・フェスタ 2014」での展示作品、および本フェスタで採用されるアプリックスの Beacon
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アプリックスIPホールディングスは、新宿区が主催するアートイベント「新宿クリエイターズ・フェスタ 2014」(8月22日〜9月7日)で同社のMyBeacon Proシリーズを使ったサービスを提供する。同フェスタでは、新宿駅や駅周辺などの公共空間、民間施設に芸術作品が設置される。この芸術作品にMyBeacon Proを取り付け、作品やアーティスト情報を来場者が時分のスマートフォンで確認できるようにする。利用するのは、アプリックスの新製品「MyBeacon Pro 防水防塵タイプ MB004 HD」と同シリーズの「MB004」。草間彌生氏や河口洋一郎氏など著名なアーティストの作品も屋外に設置されるため、防水防塵仕様のBeaconも採用した(報道発表資料:アプリックスIPホールディングス Aplixの新型Beaconが「新宿クリエイターズ・フェスタ 2014」で採用 )。

昨年の第31週のできごと

・ドコモは減益、KDDI、ソフトバンクは大幅増益
・NECのスマホ撤退とUQの新サービス
・ソフトバンクが新メール、サムスン電子看板をドコモが販売

[2013年第31週]主要3社の1Q決算は? NECがスマホ撤退、"人が通訳"する新サービス

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岩元 直久(いわもと・なおひさ)

日経BP社でネットワーク、モバイル、デジタル関連の各種メディアの記者・編集者を経て独立。WirelessWire News編集委員を務めるとともに、フリーランスライターとして雑誌や書籍、Webサイトに幅広く執筆している。