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ドラえもんの四次元ポケットと瞬間プログラミングの威力

2014.08.06

Updated by Ryo Shimizu on August 6, 2014, 09:01 am UTC

 日本国民はもちろん、世界中の人に愛されているドラえもん。
 ドラえもんは未来から来た猫型ロボットですが、Pepperは残念ながらドラえもんほどの魅力を感じさせません。

 なぜだろう?と思ったら、そういえばPepperには四次元ポケットがついてないのです。

 他に人間と一緒にいるロボットといえば、例えばR2-D2とかC-3POとかが考えられますが、R2-D2は極めて高度な人工知能を持つものの人間の言葉が喋れません。C-3POは600万言語を喋ることができるがR2-D2ほど賢くはありません。

 しかし戦闘で活躍するのはたいていはR2-D2で(戦艦に搭載されていたから当然かもしれませんが)、C-3POはどちらかというとたまに役に立つうっかり八兵衛という感じです。

 アトムは10万馬力と飛行能力、攻撃能力を持っています。
 そう。実はフィクションに登場するロボットには「人間にはできないこと」ができて初めて役に立つ、という性質があるのです。

 ところがPepperは今のところ人間にできること以下のことしかできそうに見えません。
 まだ発売されていませんし、発売されたら絶対に買おうと思っていますが、まだまだ不十分なのです。

 

 ドラえもん百科かなにかによると、ドラえもんの四次元ポケットは、実際に格納されているのではなく、ドラえもんが頭に思い浮かべたものをその場で原子合成して出力する、一種の3Dプリンターであるという設定があったような気がします。公式な設定からは削除されてしまったようですが、あまりに鮮烈な設定だったので子供の頃の記憶として覚えています。まあ四次元だろうが3Dプリンターだろうがどちらでもいいです。結局、無数のものを格納しておいて、現実世界に実体化させるという機能は一緒なので。

 そう。実はドラえもんは歩く3Dプリンターというのが主な機能で、喋るとかドラ焼きを食べるとかは完全なるオマケ機能なのです。いわばドラえもんはヒューマンエージェントUI付き自走式3Dプリンターというのが正確な商品カテゴリーでしょう。

 キテレツ大百科のコロ助がほぼ役立たず(だが可愛い)という愛玩機械であるのに比べ、ドラえもんとアトムは人間を圧倒するような能力を持っているのです。

 その意味では瞬時に帝国軍のコンピュータをハッキングしてドアを開閉したり、地図を表示したりするR2-D2は人間の自然言語を理解・解釈してその場でプログラムを創りだす万能プログラミング機械と捉えることもできます。

 さて、ではドラえもんの四次元ポケットのような高度な電子回路まで再現できる3Dプリンターは今のところまだ作られていませんが、これは時間の問題だと思います。

 しかし、これを「ある目的に沿った道具が瞬間的に現れる」と解釈すると、全く別の考え方が産まれます。
 つまり、スマートフォンです。

 スマートフォンは、基本的に必要なアプリを必要な時にいつでもダウンロードして使うことが出来ます。
 ところが問題があります。

 「必要とする機能は明らかなのに、その目的が特殊過ぎて専用に作られたアプリを探し出すのが大変だ」ということです。その点ドラえもんは、要望に応じて商品をレコメンドする機能を持っていますので「ジャイアンにいじめられた!仕返ししたい」というクエリーに対して「スモールライトでジャイアンを小さくしていじめてみては?」という提案を行うことが出来るのです。

 ところが現代の科学力では、ここまで高度な推論と判断を行うのは、IBMの最先端人工知能Watsonでも無理です。

 しかし先日の高校生たちの活躍を見て、私は自らが創りだしたMOONBlockによって瞬間的に自分の目的とする道具を創りだす方法を見つけることが出来ました。これを「瞬間プログラミング」と呼ぶことにします。これはアプリを探してダウンロードするよりもずっと高速で便利です。

 瞬間プログラミングでは、まず達成したい目的があります。
 たとえば「ラーメンを作るから3分測りたい」などです。

 するとすぐにこんなプログラムを書きます。

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 この程度なら、まあスマートフォンのタイマー機能でも充分です。

 しかし、料理では唐揚げなど、2分揚げて30秒ごとに休ませたり、などの特殊なタイマーが必要になることがあります。

 また、レシピによっても時間が変化します。しかしレシピ通りに作らないと味は確実に落ちてしまいます。そのため、プロは必ず専用のタイマーを使います。

 しかし家庭の料理では普通は面倒臭いのでタイマーなどセットしていられません。

 しかし瞬間プログラミングなら、瞬間的に「唐揚げ専用タイマー」を作ることが出来ます。

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 enchantMOONを使う場合、さらにハイパーテキストやネットワーク上の画像を使うことが出来ます。
 これは最初想像していたよりも遥かに高速に表現したいものが表現できます。

 今、例えばパワーポイントのプレゼン資料を作れと言われても、15分で作ろうとしたら殆どまともなものは作れません。

 しかし、enchantMOONによる瞬間的なハイパーテキストオーサリングなら、ネットワーク速度の問題はありますが、ネット上の画像の切り貼りがメインの企画書なら、瞬間的に作ることが可能です。

 先日、長岡花火を見に行った帰りで、眠気防止のために車内で簡単なゲームをしよう、ということになりました。しりとりでは飽きてしまうので、なにか違ったゲームがしたい、と思った時、パーキングエリアで私は瞬間的に閃いて、ダッシュボードにカーナビとして設置したiPad上のMOONBlockでゲームを作りました。

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 これは、0から9までの数字をランダムに表示するという非常に簡単なゲームプログラムです。
 一種の光る据え置き型10面ダイスです。

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 これはどうやって遊ぶのか。
 

 まず、全員で次にどの数字が出るのか一人ずつ予想します。「0」と答える人もいれば「3」と答える人も居ます。他の人と同じ数字を選んでもOKです。

 一通り終わったら、助手席の人が画面をタップします。
 するとコインの音が鳴って、数字が変化します。

 変化した数字が予測した数字と一致した人には1点入ります。
 しかし、誰も一致しなかった場合、点数は繰り越され、どんどん上がって行きます。

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 つまり、2点、3点、4点と上がって行くのです。
 場合によっては10点を超えることもあります。

 最初に50点まで貯めた人が優勝、というルールにしました。
 これが案外、盛り上がります。

 それもそのはず、実はこのゲームは、ラスベガスで最も人気のあるギャンブル、クラップスの変形なのです。

 enchantMOONを持っている人だけで遊ぶ場合は、自分の予測した数字をまずMOONに書いてもらい、それをスタンドで立てて掲示します。

 その方がよりハッキリと予測がわかるのです。

 「ゲーム」を作る時に、得点計算から勝敗判定から全部をコンピュータにやらせよう、というのは技術者の発想です。

 しかしゲームクリエイターは、例えばアナログゲームなどに慣れています。
 アナログゲームの場合、必要なのはサイコロのようなちょっとした道具と、ルールだけです。

 道具ではなくルールにこそより大きな価値があるのです。
 そしてルールを作るというのは、つまるところプログラミングです。

 たとえばいつまでもTwitterやFacebookばかりみていてなかなか仕事に戻らない悪癖を直したいと思ったら、次のようなプログラムを組んではどうでしょうか。

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 これは10分後に会社のホームページを強制的に表示するプログラムです。グループウェアのトップページにジャンプするのでもいいでしょう

 あまりにも仕事を忘れてしまう人が戒めに使うのはいいかもしれません。

 また、プログラムとして実行しなくても簡単なメモや備忘録ならMOONBlockだけでも作れます。

スクリーンショット 2014-08-06 9.58.54.png

 しかも終わったリストは簡単に畳むことが出来ます。

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 まあこの例はまだ冗談の領域ですが、多言語間の翻訳など、自然言語をビジュアル化することで得られる恩恵は実のところ計り知れません。

 というように、コンピュータの使い方はまだまだ掘り起こされていません。
 MOONBlockはひとつのヒントですが、まだ完璧にはほど遠い状態です。

 重要なのは、この瞬間的にプログラムを組む、とか、必要性に応じてその場でプログラミングする、ということがこれまで非現実的だったものが、やり方の工夫次第ではもう現実に可能になりつつあるということです。

 瞬間プログラミングが充分発達すると、それはドラえもんの四次元ポケットになるかもしれません。
 四次元ポケットが3Dプリンターだとすれば、ドラえもんのひみつ道具はデータやソフトウェアの形で供給・保管されていることになります。

 ソフトウェアを瞬時に構築・構成すると、即座に形になって現れる、というのがドラえもんの重要なポイントです。

 
 夢はひろがりますね

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清水 亮(しみず・りょう)

新潟県長岡市生まれ。プログラマーとして世界を放浪した末、 '17年にソニーCSLとWiL LLC.とともにギリア株式会社を設立し、「ヒトとAIの共生環境」の構築に情熱を捧げる。 '17年より東京大学先端科学技術研究センター客員研究員を兼務。著書として「教養としてのプログラミング入門(中央公論社)」「よくわかる人工知能 (KADOKAWA)」「プログラミングバカ一代(晶文社)」など。

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