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ユーザーが自在にアングルを切り替えられる動画配信システム「VIXT」を発表

2014.09.18

Updated by Yuko Nonoshita on September 18, 2014, 16:46 pm UTC

電通とISID(電通国際情報サービス)は9月17日、インターネット上の動画をマルチアングルで切り替えられる多視点動画配信システム「VIXT(ビクスト)」を発表した。従来、映像コンテンツは完パケと呼ばれる、パッケージ化された作品を見るだけだったのに対し、VIXTではユーザーが自らコンテンツのアングルを自在に切り替えて見られるようにしている。

デモ画面では、東京パフォーマンスドールのライブを6つのアングルから撮影した映像を使い、メイン画面とその他のアングルをサムネイル画面で同時再生した状態で、会場マップ上に示されたカメラをクリック(タップ)すると、メイン画面のアングルが切り替えられるようになっていた。動画の再生に専用アプリやプラグインなどは不要で、汎用ブラウザが使うのでタブレットでも視聴できる。「ユーザー主体の映像配信によって、今までにない視聴体験を提供できる」と開発者側は意気込む。

▼VIXTはブラウザ上で再生した動画をマルチアングルで自在に切り替えられるシステムで、タブレットでも再生できる。
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同様のマルチアングル再生システムは、先日紹介したNTTが西武ドームで実施したスタジアム エンターテインメント サービス<https://wirelesswire.jp/Todays_Next/201409091153.html>でも実用化が進められているが、VIXTは繰り返し動画が見られる点が大きく異なる。VIXTのサーバーを通じて動画を再生すると、ユーザーがどのタイミングでどのアングルを選んだかがカラーバーとして記録され、後で繰り返し再生したり、他のユーザーとシェアすることもできる。また、他のユーザーが同じ再生位置でどのアングルを選んでいるかもグラフなどで表示できる。カラーバーに再生位置を指定するピンを立てられ、コメントを追加するといった機能も用意され、テキストによるオーディオコメンタリーのような解説を加えられる。

▼カメラの位置をタップすると視点が切り替わり、再生情報はカラーバーに記録され、コメントなども付けられる。
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マルチアングル以外に、ユーザー同士が保存した動画アングルやコメントを通じてコミュニケーションを楽しむモードを作ることもでき、こちらでは従来通り、同じ動画を複数で視聴しながら、サイドメニューにあるパフォーマーの情報を楽しんだり、ユーザーからの動画を選んだりできる。お気に入りのパフォーマーだけを追いかけた動画や、ライブを監修したスタッフのオススメ動画を選んで、同じ動画を違う視点から何度も楽しめることから、コンテンツの寿命を延ばし、話題になるチャンスを増やす再視聴という新しい映像価値を生みだせる。ライブやコンサートが終了した後に、SNS上でユーザー同士がもりあがることが多いそうで、その際に動画を繰り返し見られるようにすれば、ファンサービスにもなる。

▼再生専用画面ではサブメニューにパフォーマーやユーザーの情報を組み合わせることができる。
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今回のデモ画面はVIXTを使った動画配信の一例であり、切り替えられるアングルの数やユーザーインターフェイスなどは要望に応じカスタマイズが可能となっている。今回発表されたデモ画面はFlasheベースに制作されているが、HTML5など使いやすい技術が登場すれば、それらも積極的に採用していくという。システムは特許出願中だが、なるべく汎用性の高い技術を採用し、ユーザーインターフェイスや新しい見せ方のアイデアをさらに拡げていこうとしている。同社内だけで開発を進めるのではなく、より幅広い人たちとコラボレーションするため、オープンパートナーシップを組める環境も提供することを目指している。

システムとしても、ライブハウスやホールに設置するよりも、まずは、パフォーマーやアーティスト側から自分たちのコンテンツをより魅力的に見せるための手段として提供していく予定だ。また、エンタテインメントのみならず、医療や教育、操作マニュアルなどでの採用も視野に入れており、これらの分野は、人材教育に映像資料を使われることが多いが、繰り返し、見たいアングルで再生したいという要望は高いと見込まれている。

▼エンターテインメント以外に教育や医療、マニュアルとしての導入も視野に入れている。
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そして、最も大きな特長と言えるのが新しい映像価値の開拓である。VIXTでは、どのユーザーが作成した動画が最も再生回数が多いといった情報はもちろん、それぞれのアングル別の視聴率なども集計できる。加えてユーザー属性の分析も可能なので、マルチアングルにそれぞれマッチする広告を複数配信したり、映像を切り替えられた時に広告を入れ込むといった新しい広告手法の開発も進めており、こちらも特許出願中である。

▼VIXTではネット技術ならではの機能を採用し、視点の価値を再発見することにも取り組んでいこうとしている。
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今後の具体的な取り組みとしては、カメラアングルのバリエーションを拡げるために、魚眼やワイド撮影を組み合わせたり、パフォーマーにウェアラブルカメラを装着したり、ドローンを使って空中撮影するなど、様々な実験的なアイデアも取り入れていく予定だ。画面を部分的にズーミングしたり視点を左右に動かすなども技術的には可能で、すでにマルチアングルでのスポーツ中継などで実験的に行ってきた経験もある。ただし、多視点での映像提供はコンテンツによって求められる視点が異なるため、技術寄りもユーザーの求める映像はどういったものかを中心に、より最適なマルチアングル映像配信の手法を開拓していきたいとしている。

同社の調査によると、映像コンテンツ市場は国内で約4.5兆円、世界で約54.5兆円としており、今後もさらに成長すると見込まれている。映像コンテンツ制作に関わる、撮影や編集、記録、配信スタイルも変化しているが、中でも視聴はユーザーが主体となってコントロールできる環境が提供されるようになり、さらに新しい映像体験が求められているという。電通とISIDは、映像体験の改革に向けて、今後も新しい取り組みを継続的に行っていくとしており、その第一段としてVIXTは位置づけられている。オンライン動画配信関連の技術は、国内はもとより海外からも新しい規格やアイデアが登場しており、VIXTやpotaVeeが今後どう進化し、それらの競合との違いをどう打ち出していくのか、引き続き注目していきたい。

▼VIXTは、グランフロント大阪北館・ナレッジキャピタルのザ・ラボ内にあるアクティブスタジオ体験スペースにて、9月19日から21日までの3日間、無料で初公開されるが、会場内では、Wi-Fiを使ったマルチデバイスに向け配信プラットフォーム「potaVee(ポタビ)」も合わせて紹介される。さっぽろ雪まつりや東京国立博物館でのキトラ古墳特別展での利用実績があり、VIXTのような動画配信に適しているという。
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▼タブレットでもタップでアングルの切り替えはスムーズにでき、保存機能も使えるようになっている。
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【参照情報】
電通とISID、新しい映像体験を創造するプロジェクトを始動(2014年9月17日)(プレスリリース)
グランフロント大阪北館・ナレッジキャピタル

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野々下 裕子(ののした・ゆうこ)

フリーランスライター。大阪のマーケティング会社勤務を経て独立。主にデジタル業界を中心に国内外イベント取材やインタビュー記事の執筆を行うほか、本の企画編集や執筆、マーケティング業務なども手掛ける。掲載媒体に「月刊journalism」「DIME」「CNET Japan」「WIRED Japan」ほか。著書に『ロンドンオリンピックでソーシャルメディアはどう使われたのか』などがある。