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ドイツの「インダストリー4.0」政策に感じる既視感

2014.09.04

Updated by Satoshi Watanabe on September 4, 2014, 01:36 am JST

事で調べものをしていて、ドイツの推進する「Industrie 4.0」というコンセプトというか政策パッケージに出くわしたので簡単に紹介したい。
まずは本家情報から、というのでGermany Trade & Investに行ってみるとこのように書いてある。
Industrie 4.0 とは、従来の生産プロセスにまつわるロジックを逆転させる技術の進歩によって可能となった、「集中型」生産から「分散型」生産へのパラダイムシフトです。これはまた、産業用生産機械の役割の変化としても言い換えることができます。つまり、これらの機械はもはや単に製品を「加工」するだけではなく、生産プロセスと機械装置の相互コミュニケーションを通じて遂行するべきタスクを正確に決定することができるようになるということを意味しています。
Industrie 4.0 は、組み込みシステムを用いた生産技術とスマート生産を結びつけ、テクノロジーを新たな時代へと導く道筋を提示しています。これは、産業および生産のバリューチェーンとビジネスモデルの根本的な転換 (例:スマートファクトリー) をもたらすことでしょう。
なんとなく分かるような気がせんでもないが、翻訳文そのままではっきりとは分からない。
という訳で、幾つか日本語記事をさらってみるとこんな感じとなる。
まず、ベッコフオートメーションの川野俊充氏の説明定義文
「Industrie 4.0」は、これらをさらに進化させ「サイバーフィジカルシステム(Cyber Physical System)」に基づく、新たなモノづくりの姿を目指すというものだ。サイバーフィジカルシステムとは、センサーネットワークなどによる現実世界(Physical System)と、サイバー空間の高いコンピューティング能力(Cyber System)を密接に連携させ、コンピューティングパワーで現実世界をより良く運用するという考え方。モノづくりでは、設計や開発、生産に関連するあらゆるデータをセンシングなどを通して蓄積しそれを分析することで、自律的に動作するようなインテリジェントな生産システムが想定されている。
また、定義ではないが、位置づけ理解として、ローランドベルガーの福田稔氏のコメントより。
インダストリー4.0はデジタル化とネットワーク化が産業界全体にもたらすインパクトをすべて包含している点でより上位の概念である。
同じく位置づけ理解として、日経のTech Frontlineより。
そのコンセプトを一言で表すと、「つながる工場」である。インターネットなどの通信ネットワークを介して工場内外のモノやサービスと連携することで、今までにない価値を生み出したり、新しいビジネスモデルを構築したりできる。ひいては、それがさまざまな社会問題の解決に結び付くというのだ。
と、いろんな切り口が含まれているが、まとめてしまうと、「情報技術、特にインターネットを利用しての分散的で柔軟な生産システムの革新」と要約できる。鍵は、ネットワークと3Dプリンター、及びこれらを統合的に取り扱う統合管理層、全体アーキテクチャーの組み合わせである。
3Dプリンタ周りは、研究サイドでの本分野の第一人者と言える慶応大学の田中先生と、たまたま話す機会があるので議論させて頂いているが、ネットワーク化と標準化が進む流れの先にこのようなコンセプトビジョンと動きが出てくるというのは確かに分かるところである。ただ、国を挙げて実際に政策レベルで旗を降っているというのは面白いというか思い切ったというか。
細かい話、例えば標準化がどのような形で進んでいるかや、大手を含めたプレイヤーのコミットと関わり具合など個別の論点はたくさんあるが、それはそれとして全体印象としてなんだか妙に既視感がある。
なんだろう?としばらく考えると、ネットバブルの頃に盛んに言われた産業デコンストラクションとバリューチェーンの再統合の話と似ている。道具立てと目標としてるところ及び想定適用範囲は異なるが、コンセプト的には兄弟みたいなものである。
いわば、2周目、二回戦とも言えるこの動きは、情報とネットワークの普及による変化、特に対応デバイスが増えることでの変化はまだまだ継続中の大きな動きであるとの理解をシンプルに届けてくれる。世の中全てがネットワーク化する方向である、との決めつけは乱暴であるが、上手く生かして新しくも優れた形態を模索する動きは他にも出てくるだろうことは固くない。上記記事中で何度か指摘されている、隣接トレンドのIoTなど最たるものである。
というあたり、ごく当たり前の話ではあるが、新しいビジネストレンド、新しいブームが海の向こうからやってきた(ので乗り遅れないようにしないと!)という目線のみで物事を考えていてはやっぱりいかんなということを確認しつつ、情報をハンドルする段階から、実体物やモノをハンドルする領域に着実にネットワークの利用状況が入ってきているとの基本理解が強く成り立つところである。
さて、大事な話を最後簡単に触れると、本施策は世界的なモノづくり産業の基本ルールになるかというところである。現状見ている限り、利用されるところでは利用されるであろうが、モノ全てが個別多様な生産のあり方を必要とするかというと必ずしもそうと思えない。標準品や標準規格があることの方が利便性が高いという分野は多々存在する。よってもって、結論としては何らかの棲み分けというのは割と最初から分かっていることではあるが、進む分野では確実に進むであろうし上手く取り入れた企業が競争ポジションを優位に出来得るというのも同時に理解されるところである。折に触れて動向を確認してよいテーマと言えよう。

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渡辺 聡(わたなべ・さとし)

慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科 特任助教。神戸大学法学部(行政学・法社会学専攻)卒。NECソフトを経てインターネットビジネスの世界へ。独立後、個人事務所を設立を経て、08年にクロサカタツヤ氏と共同で株式会社企(くわだて)を設立。大手事業会社からインターネット企業までの事業戦略、経営の立て直し、テクノロジー課題の解決、マーケティング全般の見直しなど幅広くコンサルティングサービスを提供している。主な著書・監修に『マーケティング2.0』『アルファブロガー』(ともに翔泳社)など多数。

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