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Proximity Networkは「ネットとリアルの境界を越えて広がるソフトウェア」のプラットフォームへ 〜インフォシティが想定するフューチャービジョン

2014.10.15

Updated by Asako Itagaki on October 15, 2014, 21:00 pm UTC

インフォシティが8月に発表したiBeaconを手軽に導入できる汎用型スマートフォンアプリ「B+POP」(iOS版/Android版)は、店舗や施設内に設置したBeaconモジュールを利用して、来店者の現在位置や状況に応じてスマートフォンに自動通知を送信するプロモーションを実現するO2Oソリューションだ。同社代表取締役の岩浪剛太氏は、「アップルがiBeaconに対応したことで、以前から想定していた近接通信ネットワーク"Proximity Network"で広がるアプリケーションの未来が現実に近づいてきた」と語る。

今回はB+POPを利用した事例を、9月26日、人気アーティスト"ナノ"のライブツアー「World of stars」東京公演の時の様子を交えて紹介する。

▼開場時刻の会場前の様子(Zepp東京)。
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▼スマートフォンを持参している来場者が多い。
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場所とタイミングで7種の情報を出しわけ

B+POPの基本的な機能は、Beaconモジュールから通信を受けてユーザーのスマートフォンに情報をポップアップで表示するというシンプルなもの。Beaconからの距離や表示する情報のパターンを変えることで、「案内」「クーポン配布」「ウェブへの誘導」「アンケート」などさまざまな用途目的に使用できる。

▼B+POPメッセージ表示条件(図版提供:インフォシティ)
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特定の場所に人が集まるイベントで、来場者に対する情報発信にも使えるアプリだ。ナノのライブツアーでの活用も、「会場に来た人にだけいいことがある仕組みを作り、最終的にはファンクラブの会員を獲得したい」という目的があった。

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今回の企画では、13時頃から会場となったZepp東京最寄り駅近辺での会場案内表示、会場敷地内でのウェルカムメッセージ、会場出入口近辺でのSNS連動用アイコンデータの配布、物販コーナー至近での購入特典(壁紙データ)配布の4つの情報を配信。さらに開場後開演まではフロア入口ロッカー近辺での注意事項表示、ライブ終了後はロビーでサプライズ特典として当日限り視聴可能な映像の告知と、アンケートの依頼を送信した。

来場者にアプリを事前にダウンロードしてもらうことが企画成功の肝となるが、AppStoreでiOS版のアプリが公開されたのは直前の9月24日。Android版の提供は間に合わなかった。わずか2日間と短期間に、アーティストの公式サイトでの告知から、ファンの間でTwitterを通して口コミで広がった。当日朝、会場限定販売のグッズ目当てで並んでいた約150人に聞いたところ、約半数のiPhoneユーザーのうち、8割程度はアプリをダウンロードしていたという。

▼当日券売り場の横にはB+POPのサインが掲示されていた。
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▼送信する情報によってビーコンのレンジを変えることで、ポップアップのタイミングをコントロールできる。
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▼ロビーのビーコンはロッカーの上(写真左・赤丸の位置)にテープで固定して設置していた(写真右)。小さくて軽いのでパネルの裏などにも貼り付けて設置できる。配線も必要ないため、イベント会場などでの設営も手間がかからない。
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一昔前のサーバースペックのデバイスがあらゆるところにある時代

B+POPはもともとインフォシティが開発していた「Beacon Plus」というSDKがベースになっている。iBeaconなどのBLE(Bluetooth Low Energy)の他、Wi-Fi、NFC、GPS、などの技術を応用した位置情報アプリの開発キットだ。Beacon PlusはSDKであるため最終的にはアプリ開発が前提となるのに対し、B+POPは、クライアントアプリとコントロール用サーバーを提供することで、開発の手間なく手軽にO2Oソリューションを試せるソリューションとして位置付ける。

Beacon Plusは、インフォシティが取り組むユーザーの行動支援を目的としたProximity Network(近接通信)関連技術の一つ。「スマートフォンやタブレットなどのモバイルデバイスの性能が飛躍的に向上して、一昔前の「クラウド」が流行りだしたころのサーバーと同等スペックの端末が世界中いたるところにある時代が来た。スマートフォン周辺のモノがProximity Networkで接続されることで、ソフトウェア開発の対象となるデジタルアーキテクチャが爆発的に拡大する。場所そのものにもジオデータを付与して端末と接続することなどで従来とは違うことができるようになる」と株式会社インフォシティ代表取締役の岩浪氏はその意義を語る。

アップルの本気で非常識が常識化する

アップルのハードウェアとOSの進化もこの方向を向いているという。「例えばWWDC2014で発表されたiOS 8の仕様にはデベロッパー向けにCLFloorクラスという建物の何階にいるかをアプリに伝える機能が追加されており、新しいiPhone 6にも高度センサーが搭載されています。屋内測位に関しては、Visit Monitoringコマンドが追加されています。またTouch IDのオープン化もはかられており、アップルがO2Oやリテールテックを超え、リアルの世界に自分たちのアーキテクチャを延長しようとしている意図が読み取れます」(岩浪氏)

また、位置情報に紐づいたアプリのインストールには、iOS 7から提供されているAppStoreの、near-me(近くで人気のアプリを表示する機能)も強化されており、「この場所ではこのアプリをインストールしたほうがいい、とロック画面に表示できるようになりました。場所ごとのアプリ、というのは今までの常識にはありませんでしたが、アップルがこれを推進することで、ユーザーをひきつけ、今までの非常識を常識化するかもしれません」(岩浪氏)

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「ネットとリアルの境界を越えて広がるソフトウェア」のプラットフォーム

このような状況の下、2020年に向けて店舗が今すぐ取り組んだ方が良いこととして岩浪氏は、「光ファイバーを引く」「Wi-Fiを設置する」「Beaconを設置する」「ジオデータを整備する」「店舗のアプリをリリースする」という5点を挙げた。

「たとえば、かつてiPodは単体では動作しない端末として登場しました。Mac上のiTunesと接続し、CDでリッピングした音楽のデータはインターネット上のCDDBからさらにメタデータ取得することで、便利に使うことができるようになりました。のちにiTunes Music Storeもスタートしたわけですが、これらはまとめて「単一のデバイスを超えて存在するソフトウェア」というとらえ方ができます。Proximity Networkの進展はこのような世界を広げ、デジタルアーキテクチャの爆発的な多様化が起こるのではないかと考えています」(岩浪氏)

デジタルネットワークがリアルな「場所」に染み出し、個人が持つ端末に作用する。ネットとリアルの境界を越えて広がるソフトウェアのプラットフォームが目の前に現れようとしている。

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板垣 朝子(いたがき・あさこ)

WirelessWire News編集委員。独立系SIerにてシステムコンサルティングに従事した後、1995年から情報通信分野を中心にフリーで執筆活動を行う。2010年4月から2017年9月までWirelessWire News編集長。「人と組織と社会の関係を創造的に破壊し、再構築する」ヒト・モノ・コトをつなぐために、自身のメディアOrgannova (https://organnova.jp)を立ち上げる。