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会議時間を半減できる!?無言会議の効能

2014.10.23

Updated by Ryo Shimizu on October 23, 2014, 11:40 am UTC

 最近、新しい会議の方法を試しています。
 それは「無言会議」というものです。

 どういう会議かというと、全員がPCを持って会議室に入り、そこでひたすらキーボードで会議をするというものです。
 この会議、集まる意味があるのか、という視点よりもまず、そもそもなぜ会議は音声で進行するのか、という興味から初めて見ました。


スクリーンショット 2014-10-23 10.51.05.png

 無言会議を開催するには、全員が入れるチャットソフトが必要です。
 FacebookでもChatworkでも構いませんが、FacebookやChatworkは全メンバーが入っているとは限らないので、今回は社内で自作したチャットソフトを使って行いました。

 そもそも、ブレインストーミングでは無言で思考する時間があります。
 一定時間を決めて、その間は私語を一切禁止して付箋等にアイデアをどんどん書いていくのです。

 最初に無言会議をやろうと思ったのは、付箋に書くべきアイデアや意見をキーボードで書いた方が速いのではないか?という興味からです。

 付箋を使ったブレインストーミングで発言を禁止する無言時間を設ける目的は以下の二つです。

・職域や職制によってアイデアに対する評価が偏ってしまうことを避ける(偉い人のアイデアに逆いにくいなど)
・人数が多いと発言できる人が減るため、全員が一度集中して一つのテーマを考えるよう仕向ける

 ところが当然ながらキーボードで入力したとしても、他の人の発言が見える状況では、通常の会議と同じような進行になってしまいました。

 そこで、まずは匿名制を採用しました。
 こういう工夫がオンタイムにできるのが、自作ソフトを使うメリットでもあります。

スクリーンショット 2014-10-23 10.50.20.png

 発言者の名前を隠して、匿名の状態で意見を出し合うと、名前が出た状態で意見を出し合うよりは活発な意見がでるようになりました。

 しかしこれだと、やはり全く発言しない人と沢山発言する人で大きな差が出てしまいます。

 そこで、5〜10分程度の一定期間の無発言時間を設け、その間はテキストエディタなどに意見を大量に書き溜め、その後、チャットで意見を一気に公開するというやり方に切り替えてみました。

 すると、少なくともアナログの付箋紙に書いた状態でチャットをするよりも遥かに効率的に意見交換ができるようになりました。

 通常、付箋紙を使ったブレインストーミングの場合、考えている時間よりも、考えた結果をシェアする時間(意見発表の時間)の方が長くなり、煩雑になりがちです。

 けれども、テキストエディタに書き溜めたものを、一気にチャットで共有するというやり方の場合、活字化された情報なので慣れている人なら一気に読めますし、斜め読みしても意味をだいたい捉えることが出来ます。

 しかも同時に議事録もとれるので一石二鳥です。
 付箋を使った会議に比べ、半分以下の時間で意見交換が完了しました。また、議事録を清書する時間も省略できるので、実際には1/3くらいの時間に短縮されたとも言えます。

 ブレインストーミングの場合、明らかに付箋を使ったアナログな方法よりも効果があることが解りました。
 適宜、口頭で課題共有や質問をしながら進行するので完全な無言ではありませんが、無言でキーボードをタイプする時間を設けることで大人数が参加する会議でも取りこぼしのない意見収集ができるようになりました。

 これはもしかすると他の会議にも応用できるのではないか?
 そう考えた私は、プロジェクトの進捗報告会議も無言会議形式でやってみることにしました。

 通常、プロジェクトの進捗報告会議はそれぞれの担当者が自分の担当している内容の進捗報告をするのですが、誰か一人が何かでトラブルを起こしていたりすると時間を浪費することになりがちです。最悪なのは、トラブルの内容について上司がガミガミと言い始めて、会議に参加している無関係なその他全員の時間が浪費されることです。

 そこでまず全員が同時にチャットで進捗状況の報告をします。

スクリーンショット 2014-10-23 12.03.19.png

 すると、簡単な報告の人はすぐに報告が完了します。

 次に、相談・議論すべき課題の数を数え上げ、長くなりそうだったら関係のない報告者は会議から解放してあげます。
 それからじっくりと相談・議論を行えばいい、というわけです。

 ただし、極めて順調に行ってるプロジェクトの場合、進捗確認会議は「特に問題ありません」という報告をするだけになりがちです。

 その場合は、このような会議をすると却って時間がかかることになります。
 実際、通常は10分で済んでいた進捗確認のための会議が、今回は30分も掛かってしまいました。

 とはいえ、時間が掛かったから悪い、ということでもないのではないか、と思います。

 表面上は順調に見えているプロジェクトの方が、実はその裏側に致命的な問題が発生していても気付かない、ということがあります。

 無言時間を設けることで作業内容を具体的に報告させることができるので、むしろ口頭のみで「いまのところ問題なしです」と言われるよりは細かな作業内容や進捗状況を確認でき、また、プロジェクトマネージャはあとからログを読み返して「彼はこう言ってたけれども、本当はこんなところでつまづくんじゃないか」と振り返ることが出来ます。

 そう考えると、時間が伸びたとしても、より効果的な会議にできていると言えるのではないかと思います。

 ただ、当然のツッコミとして、「キーボードで会話するのだったら、その場に集まる意味はどこにあるの?」という疑問があります。

 今回も当然、そういう指摘を受けました。

 しかしそれは、実のところ明らかな違いがあるのです。
 それは「議題に集中する」ということです。

 人と顔をあわせて話をする場合と、離れたところから顔をみないで話をする場合では、議題への集中に大きな隔たりができます。

 情報技術が発達した恩恵で、24時間いつでも議論ができるようになりました。
 しかしそれは反面、24時間いつでも議論に巻き込まれてしまうというマイナス面も持っています。

 また、当然ながら、相手が議論したいときが、こちらが議論に応じる準備ができているときとは限りません。

 細心の注意を払ったとしても、相手が議論する体制になっているかどうか推し量るのは難しい問題です。

 そこで会議は必ず相手の顔を見る必要があります。
 私も経験がありますが、電話のみの会議、つまり音声会議をすると、議事の進行がとても遅くなります。
 それは電話の向こう側の相手がどういう状態か、ちゃんと聞いているのかわからなくなるからです。

 しかしテレビ会議の場合は、議事の進行はかなり早くなります。
 少なくとも相手の顔が見えるので、相手が話を聞ける状態かどうかくらいは把握できるからです。

 けれども、テレビ会議でも越えられない壁があります。
 それは空気感です。

 こちらがいくら熱っぽく語ったとしても、テレビの向こう側ではかなり冷めて受け止めらてしまいます。
 熱意はテレビ画面を通してしまうとかなり伝わりにくくなってしまうのです。

 テレビ会議は情報を伝達するという目的ならば充分かもしれませんが、気持ちを伝えるという点では向きません。

 イメージとしては、たとえば電話で愛の告白をされるのに似ています。
 電話で告白されて、そのまま付き合う人というのはまずいないと思います。

 なぜかといえば、相手がどのくらい本気なのか全く解らないからです。
 それがテレビ電話であってもかわりません。

 相手の状況が全くわからないので、なにかの罰ゲームでやらされているのかもしれないし、そのときの気の迷いかもしれない。
 テレビの前でいくら真剣な表情をしてもそれが本当に真剣であると伝えるのは至難の業なのです。

 
 従って、たとえ情報技術を使って会議の半分が無言で進行するとしても、顔をつきあわせて会議をするのはとても大切です。

 情報伝達や共有に関してはデジタル技術に一日の長があるとしても、情熱や真剣味はフェイス・トゥ・フェイスでなければ伝わらないからだと私は思います。

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清水 亮(しみず・りょう)

新潟県長岡市生まれ。プログラマーとして世界を放浪した末、 '17年にソニーCSLとWiL LLC.とともにギリア株式会社を設立し、「ヒトとAIの共生環境」の構築に情熱を捧げる。 '17年より東京大学先端科学技術研究センター客員研究員を兼務。著書として「教養としてのプログラミング入門(中央公論社)」「よくわかる人工知能 (KADOKAWA)」「プログラミングバカ一代(晶文社)」など。