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iPhone6s PlusとiPad Proの向こうにある世界

Tablets Can Be Accelerate Your Business?

2015.09.28

Updated by Ryo Shimizu on September 28, 2015, 13:42 pm UTC

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 iPhone6s Plusを使うことにしました。
 昨年、初めてiPhone6が出た時にはそのあまりの大きさに辟易し、予約をキャンセルしてしまったのですが、ちょうど先日、愛用していたiPhone5Sが壊れてしまったこともあって、買い替えどきかなと思って思い切って変えました。

 色は女性人気の高いローズゴールド。

 128GBです。

 これだけあると愛用しているiPad mini 128GBと同程度にKindle本を入れても持ち歩けますし、マンガなどを読む場合にも苦労しません。

 また、KeynoteなどのiWorkアプリがiCloud Driveを使うので、容量はあるに越したことはありません。

 しかし覚悟はしていましたがやはり大きい。
 私のようにそそっかしい人間はこれだけ大きいとすぐに置き忘れてしまいそうです。

 小さすぎても置き忘れるのですが、大きすぎても置き忘れるという。
 なかなかうまくいかないものです。

 さて、私としては興味深かったのは、大きな画面を活かしたiWork系アプリがどこまで実用的に使えるか、ということです。

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 Keynoteは、スライド内容の確認と微調整くらいならなんとか可能かな・・・という感じでした。ただ、キーボードを出すと画面の半分が覆われてしまうので、ここで本格的なスライドを作れるかというと相当厳しい感じです。

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 また、私は他のスライドから引用することが多いので、一度にひとつのプレゼンテーションファイルしか開けないというのも困ります。

 結局、私が一番頻繁に使うKeynoteは、残念ながらiPhone6s Plusでもちゃんとは使えなそうです。

 地味に大きい問題は、横画面でしか使えないことです。
 
 フリック入力キーボードは、縦画面にすると実にコンパクトに収まるので、縦画面で使えるならもっと実用的に使えそうなのに、と感じたのが残念なところでした。

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 ワードプロセッサであるPagesは、縦画面でも使えるため、「おっ」と驚くほど「使えそう」な予感がします。

 ただし残念ながらPagesを使う時はキーボードを大量に打つときなのでたぶんPagesをiPhone6s Plusで実用的に使うケースというのはそんなにないと思います。

 やはりあくまでも微調整・修正がiPhone「でも」できるという段階を抜けだしていません。

 このあたり、iPad Proではどうなるのか興味深いところです。またはiPad Airで実現したSplit Viewを使うと或いはもっと便利なのでしょうか。

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 意外と使えそうな予感がしたのが表計算ソフトのNumbersです。
 ご覧のように、数式も入力しやすくなっています。

 ただし、やはりタッチで操作するのは普通のExcelと違い、モードの切り替えが複雑になって大量の数値をドカドカ入力する、というような用途には向いていないようです。

 私がExcelをよく使うのは事業計画や見積ですが、やはりこの画面で見積書を作るのは厳しそうだと思いました。これは主に使い勝手の問題です。

 ただ、簡単な計算やワリカンなどはこれで十分なので、普段、会議などで「あれの原価と工数と外注費の組み合わせはどうするんだっけ?」というような計算が必要になった時に、いちいちノートPCを開かなくても、この程度の数式ならiPhone6s Plusだけで入力、計算できるとは思います。それでもけっこう高度な使い方になってしまいますし、やはりキーボードにはかなわないのが残念なところです。

 おそらくiPad Proの投入やこうしたiWork系のアプリの投入というのは、当然、現在主流となっているクラムシェル型ノートPCをタブレットやスマートフォン(とタブレットの中間であるファブレット)で代替していきたいという意志の現れでしょう。

 この領域は、Microsoftも必死で開拓しようとしています。

 というのも、そもそもMicrosoftにとって、Word,Excel,PowerPointといったOfficeスイートはビジネスの生命線でもあるからです。

 こうしたオフィススイートが不要であれば、そもそもWindowsを選択する理由はもはやあまりありません。

 1990年代から2000年代前半にかけて、Windowsは極めて重要なソフトウェアプラットフォームであり、オフィススイートを中心としてゲームや様々な実用ソフトが提供されていました。

 しかし、2000年代後半になると、実質的にほとんどのアプリがWebサービスとして提供されるようになり、ダウンロードしてから実行しなければならない昔ながらのアプリはウィルスやマルウェアの混入が疑われるため望ましくないものになっていきました。

 セキュリティ的に問題ないアプリだけを配布するWindows Storeを用意したり、AppleがMac AppStoreを展開し、デフォルトではWebブラウザからダウンロードしたアプリの実行を禁止するなどの措置をとるのも、同様の理由です。

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 だとすると、もはやPCにおけるアプリケーションとはなんなのでしょうか。

 実際、筆者もWindows Storeでアプリをダウンロードした経験はほとんどありません。

 一番驚いたのは、たとえばlzhなどのように一般的なフリーソフトで解凍可能な圧縮ファイルを展開しようとすると、デフォルトでは展開できず、「Windows Storeでこの拡張子に対応したアプリを探しますか?」と聞いてくるところまでは親切なのですが、なんとそうしたアプリには利用料金が掛かるということでびっくりしてStoreを閉じてしまいました。

  lzhはもともとフリーソフトだけで圧縮解凍が可能なのに、Windows Store経由では有料のアプリを推薦されるのです。

 これはユーザーから不信感を持たれても仕方がないと思います。
 Windows3.1の頃からのユーザーとしては、Windowsよりも歴史が古いlzhが、まさかいつのまにかこんな扱いになっているとはにわかに信じられませんでした。

 そして新しいアプリをWebサイトからダウンロードしてきて実行しようとすると、お決まりのセキュリテイが立ち上がります。これが立ち上がることがわかりきっていても、ユーザーはひたすら待たなければなりません。明らかにアプリをダウンロードさせるという行為が、OSを危険に晒し、その危険から遠ざけようとする行為が、そのOSのユーザー体験全体を低下させているのです。

 今やWindowsもMacも、自社で作ったアプリ以外はできるだけ動かしたくない、というような振る舞いをします。

 むしろそのような状況では、そもそもアプリなどダウンロードできないようにした方がいいのではないかと思うほどです。

 実際に、いまやOSベンダーが用意するAppStoreに並ぶアプリは、どれもこれも小粒なものばかりになってしまいました。無料か、数百円のものがほとんどです。

 昔は何万円もしたテキストエディタがフリーソフトに置き換わり、高くても数千円、というアプリばかりになったのは、ユーザーとしては喜ばしいことかもしれませんが、ソフトウェア産業全体としては衰退の兆しが見えているといえます。

 こうした状況に比べると、スマートフォンやタブレットのエコシステムは極めて健全に思えます。

 特にiOSは、Apple以外のストアからアプリをダウンロードするということがOSのレベルで禁止されているので混乱が少ないと思います。最近は中国ではそれを回避するようなものも出てきているようですが、普通に使うぶんには安心して使うことが出来ます。

 Androidはオープンソースを標榜しているため、むしろ逆に公式以外の野良ストアからのダウンロードを認めなければならないというジレンマに侵されていますが、これもデフォルト状態ではダウンロードできないようになっているのでPCやMacよりは遥かに混乱が少ない状態です。

 しかしどうしてもPC/MacといったデスクトップOSを手放せない事情が2つあります。

 ひとつは、アプリ開発、もうひとつは、プロダクティビティソフトウェアです。

 現状、iOSもAndroidも、それ単体では原則としてアプリを開発できるようになっていません。

 開発するためには必ずデスクトップ環境を必要とします。

 そしてもう一つ、プロダクティビティソフトウェア、これはオフィススイートに代表される製品群で、わかりやすくいえば、Word, Excel, PowerPointといった製品や、AdobeのPhotoShop、Premire、AfterEffects、InDesign、Dreamweaver、あとは音楽を制作するためのFL StudioやMAX MSP、3DCGのための3DStudio MAXなどのソフトウェア群です。

 これはオフィスにおける仕事の生産性を上げることを目的にして作られたことから、「プロダクティビティソフトウェア」と呼ばれています。

 このプロダクティビティソフトウェア群の存在が、デスクトップ環境を使い続けなければならないLast One Thingになっています。

 Googleは2006年にこのプロダクティビティソフトウェアをすべてWebに移行する、Google Document(旧Google Docs & Spreadsheets)を開始しています。これは無料で誰でも使うことができるWebサービスです。

 しかし、初登場から10年ほど経過したいま現在に至っても、「オフィススイートはGoogle Documentで十分」という世界は残念ながら訪れていません。

 それはやはりパフォーマンスが遅かったりとか、細かな使い勝手がデスクトップ・アプリケーションと比較すると悪かったりするからです。

 実際、現在のGoogle Documentの提供する機能は非常に限定的で、オープンソースで提供されているOpenOfficeにすら見劣りします。

 ある部分はとても優れているものの、別の部分が物足りないため、全体としては使いづらいものになってしまっています。

 その他のプロダクティビティソフトウェア、例えば3Dツールや動画制作ツールもWebアプリケーションへの移行は現在のところあまり上手く行っていないようです。

 これはWebがいずれもっと進化してソフトウェアプラットフォームとして高機能になれば解決される問題かもしれませんが、目下のところ、こうしたオルタナティブ・プロダクティビティ・ソフトウェアが使われている場面は限定的です。

 しかし、いずれタッチスクリーンのマシンが主流になっていくというビジョンからすると、このプロダクティビティ・ソフトウェアのタブレットUIへの適応化というのは決して避けて通ることはできない領域です。

 だからこそ、AppleもMicrosoftも、オフィススイート製品のタブレット対応を急いでいるのでしょう。その意味では、iPad Proはそれを試す重要な試金石になると言えるでしょう。

 今回、iPhone6s Plusを使って、一番気に入ったのは、意外にもGarageBandでした。

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 ギターやドラム、キーボードが弾けるようになっていて、自分で演奏したものをMTR(マルチトラックレコーダー)の如く重ねていけるのです。

 手の中に入るサイズ感の楽器として考えると、iPhone6s Plusは相当良く出来ています。

 GarageBandで簡単なリズムを作ったり、メロディを弾いたりするのは純粋に楽しく、気が付くと夢中になってずっと遊んでしまいます。

 特に運指が下手でギターをいくら練習しても上手くならなかった筆者からすると、GarageBandのギターは非常に遊びがいのある玩具です。

 もちろん、普段MAX MSPで曲を作りこんでいる人たちからすれば、GarageBandは依然として遊びの領域を出ていないのかもしれませんが、iPadが登場した初期も沢山のシンセサイザーやサンプラーがリリースされたことを考えても、タブレットに最初にやってくるプロダクティビティソフトウェアは音楽ソフトなのかもしれません。

 そしてそのうちに「ああ、これでもぜんぜん良くない?」というタイミングが来るのではないかと思っています。

 そうなると、そこからタッチスクリーンに適した形のWordなりExcelなりPowerPointなりのお作法がもう一度発明される余地があるでしょう。なにしろそれらの起源はマウスが発明される以前に遡るほど古く、マウスが発明された時点から考えて、ほとんど進化していないからです。

 そのときこそ、人類のコンピューティングは次の時代の扉を開くと思うのです。

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清水 亮(しみず・りょう)

新潟県長岡市生まれ。プログラマーとして世界を放浪した末、 '17年にソニーCSLとWiL LLC.とともにギリア株式会社を設立し、「ヒトとAIの共生環境」の構築に情熱を捧げる。 '17年より東京大学先端科学技術研究センター客員研究員を兼務。著書として「教養としてのプログラミング入門(中央公論社)」「よくわかる人工知能 (KADOKAWA)」「プログラミングバカ一代(晶文社)」など。

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