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台湾で始まったLTEサービス - 4G加入者の増加が好調な遠傳電信

2014.10.10

Updated by Kazuteru Tamura on October 10, 2014, 12:00 pm JST

台湾では2014年5月下旬以降に移動体通信事業者各社が相次いでLTE方式による通信サービスを4Gとして開始した。今回はいち早くに自社ブランドのLTE対応スマートフォンを投入し、LTEエリアの拡大にも注力するなどして、LTEサービスへの加入者数が好調に伸びている遠傳電信(FarEasTone Telecommunications)にフォーカスを当てる。

台湾のLTEサービスの加入者数でトップに

台湾では2014年5月末から6月はじめにかけ、6月3日にサービスを開始した遠傳電信のほかに中華電信と台湾大哥大がほぼ同時期にLTEサービスを開始した。遠傳電信は周波数オークションを経てLTE用の周波数として700MHz帯(Band 28) の10MHz幅と1.8GHz帯(Band 3)の20MHz幅を獲得し、現在は700MHz帯の10MHz幅と1.8GHz帯の5MHz幅でサービスを提供する。

台湾では国家通訊伝播委員会(NCC)が通信関連の業務を担うが、遠傳電信はその国家通訊伝播委員会による統計情報として、台湾における2014年8月末時点でのLTEサービスの加入者数で首位となったことを発表している。遠傳電信のLTEサービスの加入者数は開始から僅か3ヶ月余りで約25万件に達し、台湾におけるLTEサービス加入者数全体の約40%を占めるという。

遠傳電信がLTEサービスの加入者でトップになったことは様々な要因が考えられるが、特にエリア、通信品質、LTE国際ローミングなどの通信サービス面を充実させたことが功を奏したといえるだろう。

エリア面では2014年末までに人口カバー率99%の達成を目標とするなど、都市部はもちろんのこと農村部までエリアの拡大を進めている。通信品質では2014年8月29日より利用可能な周波数を追加し、キャリアアグリゲーションの導入計画も発表するなど、高品質な通信サービスを提供することをアピールしている。LTE国際ローミングは日本を含む24の国と地域で提供しており、提供する国と地域の数は台湾のみならず世界においても多い部類に入る。このようにサービス面を拡充したことが、加入者の増加する要因となり、遠傳電信も強みとしてアピールしている。

▼700MHz帯は屋内でも届きやすいことを強調し、エリアが広いこともアピールしている。1.8GHz帯では最大で20MHz幅が使えるようになることを示しているが、1.8GHz帯は全帯域を使える状態ではないため、通信速度のアピールはしないものと思われる。
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周波数は700MHz帯と1.8GHz帯を利用

遠傳電信は先述の通り700MHz帯の10MHz幅と1.8GHz帯の20MHz幅を保有している。700MHz帯は現有事業者が存在しないが、1.8GHz帯は一部を遠傳電信と台湾大哥大がGSM方式で使用している。そのため、GSM方式の停波を前倒しすることがなければ各社のGSM方式のライセンスが期限を迎える2017年6月までは一部の周波数を利用できないことになる。このような理由で、現時点においては700MHz帯の10MHz幅と1.8GHz帯の5MHz幅でサービスを提供している。

遠傳電信は人口カバー率99%の計画を掲げるなどエリア面を重視している。700MHz帯は利用できる帯域幅が広いことや、周波数が低く広範囲をカバーするために有利であることから、700MHz帯をメインの周波数として展開している。筆者自身が遠傳電信だけはLTEサービスの開始前から地下エリアなど広い範囲でLTEの電波が入ることを確認しており、遠傳電信がエリアの拡大に注力していることはLTEサービスの開始前から見て取れた。

一方で、台北市、新北市、台中市、高雄市においては2014年8月29日より5MHz幅ながら1.8GHzでのLTEサービスを正式に運用している。高トラフィックエリアから1.8GHz帯を導入し、利用者の増加で通信品質が落ちることを防ぐ。また、1.8GHz帯を追加したことで、既存の700MHz帯と束ねたキャリアアグリゲーションを導入することも明らかにしている。キャリアアグリゲーションの導入で、通信速度の高速化も実現できる。LTEサービスの開始前から地道にエリアを構築して獲得した周波数を上手く運用することで、結果的に通信サービスの品質が向上して遠傳電信の武器となっている。

しかし、台湾でLTEサービスが開始してからまだ4ヶ月余りであり、遠傳電信以外の各社もキャリアアグリゲーションの導入などサービス面の拡充を計画している。したがって、遠傳電信はLTEサービスの開始から僅か3ヶ月分の統計で首位を獲得しただけでは決して安泰とは言えない。

▼遠傳電信の販売店に設置されている広告で4G LTEを大々的にアピールしている。
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▼遠傳電信のLTEに接続されているLG G3で通信速度を測定した。
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自社ブランドのLTE対応スマートフォンを投入

遠傳電信はFar EasTone Smartシリーズとして、自社ブランドの端末を投入している。遠傳電信の自社ブランドの端末にはスマートフォンからフィーチャーフォンまで様々な端末が用意されているが、その中にはLTE対応スマートフォンも含まれており、リーズナブルな価格で販売されている。

台湾は日本や韓国のようにハイエンドのスマートフォンばかりではなくミッドレンジがボリュームゾーンであり、またLTEサービスの加入はLTE対応端末を所有することが前提となるため、安価なLTE対応スマートフォンを投入することはLTEサービスへの加入を促進することにもなる。台湾の移動体通信事業者では台湾大哥大も自社ブランドでTaiwanMobile Amazingシリーズとして安価なLTE対応スマートフォンを投入するが、遠傳電信の場合はLTEサービスの開始前から、しかも台湾大哥大が自社ブランドのLTE対応スマートフォンを投入する1ヶ月以上も前から安価なLTE対応スマートフォンを投入してきた。

Far EasTone Smartシリーズ初のLTE対応スマートフォンとなったFar EasTone Smart 405は早くも在庫がなくなったようであるが、現在はFar EasTone Smart 403やFar EasTone Smart 503といったLTE対応スマートフォンが店頭に展示されており、リーズナブルな価格で購入することができる。最も低価格に設定されているFar EasTone Smart 403は流通量も多いせいか、スマートフォンやパソコン関連のショップが集まる光華商場の販売店でも多く見られた。

LTEサービスが開始してしばらく経過したところでASUSTeK ComputerやInFocusなども安価なLTE対応スマートフォンを相次いで投入しており、移動体通信事業者のブランドで投入されたLTE対応スマートフォンは存在感が薄くなりつつある。しかし、LTEサービスの開始当初はLTE対応スマートフォンの数が少なかっただけに、加入者の増加に貢献したことは間違いないだろう。

台湾ではLTEサービスが開始して半年足らずで、スマートフォンのラインナップも激しく変化を見せている。遠傳電信に限ったことではなく、LTEサービスの加入者を増加させるためにはサービス面だけではなく、端末のラインナップも鍵となりそうである。

▼遠傳電信の販売店に展示されているFar EasTone Smart 403。安価なLTE対応スマートフォンである。
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▼遠傳電信ブランドで投入された最初のLTE対応スマートフォンFar EasTone Smart 405。リアパネルには遠傳電信のロゴタイプがプリントされている。低価格であるが質感は高く仕上げられている。
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▼遠傳電信の販売店に展示されているFar EasTone Smar 503。製造は鴻海科技集団(Hon Hai Technology Group)のFIH Mobileが手掛ける。
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田村 和輝(たむら・かずてる)

滋賀県守山市生まれ。国内外の移動体通信及び端末に関する最新情報を収集し、記事を執筆する。端末や電波を求めて海外にも足を運ぶ。国内外のプレスカンファレンスに参加実績があり、旅行で北朝鮮を訪れた際には日本人初となる現地のスマートフォンを購入。各種SNSにて情報を発信中。