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アイデアとテクノロジーから生まれる体感型広告の開発秘話とは(後編)〜アドテック関西 プレイベントレポート〜

2014.11.21

Updated by Yuko Nonoshita on November 21, 2014, 16:00 pm JST

11月17日にOsaka Innovation Hubで開催された「アドテック関西2014」のプレイベントの後編をお届けする。関西で制作された広告の事例や制作の裏側についていろいろな話が紹介された。

大阪に本社があるパナソニックは現在、広報機能を東京へ移転している。とはいえ、関西ノリは今も変わらず、アイデアが思わぬ方向へ発展することもあるという。その一つが、パナソニックが近く公開を予定している「太陽光屋台」の事例だ。京都にある美大の学生が課題で考えた、太陽光で調理する屋台が本物の屋台制作にまで発展した。

「元々の課題テーマはエネルギー問題の解決で、ソーラーパネルを電力源とする屋台だったのが、実際に作るならもっと大仕掛けにしようとだんだんアイデアが拡がった」とパナソニッククリエイティブチームの高須泰行氏は経緯を語る。最終的意は、炊飯から調理まで自動化された屋台ができ、展示会でも実物を展示したという。CM映像も作られたが、実物のほうがインパクトがあり、子どもを中心に大好評だったという。制作コストは予算の3倍以上かかったが、仕上がった屋台はコスト以上の完成度となった。

▼実際に調理ができる太陽光屋台は幅広いユーザーにパナソニックのブランドをアピールすることができた。
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同じセッションに登壇した電通関西支社の中尾孝年クリエーティブディレクターは、関西の広告作品のノリのよさや勢いについて「東京よりもクライアントとの距離が近いからではないか」と分析する。江崎グリコの「アイスの実」とAKB48がコラボした「江口愛実」キャンペーンは大きな話題になったが、こうしたチャレンジも東京なら通らなかったかもしれないという。「最近では失敗しないように、市場分析やテストマーケティングを元に広告を作る動きもあるが、無難な作品にしかならないし、前人未到の成功は事前分析できない。面白いものを作ろうとすると現場ががんばるのでコスト以上のものができることも多い」と語る。

▼パナソニックの高須泰行氏(右)と電通関西支社の中尾孝年氏は「関西のノリの良さも新しい広告が生まれる土壌になっているかもしれない」と語る
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次のセッションに登壇した電通関西支社の堀内弘誓氏と荻野直幸氏は、広告をとりまくビジネスが大きく変わり、デジタル時代ならではのやり方で生活者にリーチする必要があると言う。ただし手法は変化し、2007〜10年頃に流行ったインタラクティブブームから、トレンドコースターやロッテのイヤホン型ウェアラブルデバイスのように、リアルな制作物から話題性を生み出そうとする動きがあるという。インターネットを使いながら、ネットの外との動きを連動させるなど、新しい発想が求められ、萩野氏と堀内氏は、制作側はあらゆる手段を活用する「手口フリー」の姿勢が大事であり、それらの組合せで相乗効果を生み出す「手口の統合」も大事だとしている。

ネットからの拡散がマスメディアと同じ効果を発揮する例もあり、堀内氏が手掛けたミスタードーナツのポン・デ・ライオンのキャラクターは「CMはわずか数回だったが、全国に1300ある店頭で認知され、ネットを中心にファンが増えて商品の購買にもつながった」という。ファンが様々な2次制作物をネットで発信したのも功を奏しており「クライアントは権利を主張するより、ゆるやかな共犯関係を築くべき」ともコメントしている。

▼商品のキャラクター化でヒットしたポン・デ・ライオンはファンの2次制作で人気がさらに高まったと電通関西支社の堀内弘誓氏。
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もう一つの成功事例が、初音ミクをパッケージに採用したロート製薬の目薬の事例で、担当した萩野氏は「初音ミクだけでもネットでは話題になるがいかにリアルと結びつけるかが課題だった」と言い、ファンがマネしてくれるように目の位置に商品を持ったポーズのポスターを作ったり、パッケージの上でARライブを開催するなど、商品の購買につながる仕掛けを考えた。

▼ネットで大人気の初音ミクを使う場合、いかにリアルに結びつけるかが大変だったと荻野直幸氏。
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デジタルだけでなく、アートとテクノロジーを結びつける広告が求められ、社内の技術を翻訳して広告にする依頼が増えているとも。必要なのは楽しんだり、体験につなげることで、その例として、川の水質を浄化するバクテリアを知ってもらうために、ゴルフボールにバクテリアを仕込んでわざと池ポチャさせるイベントが紹介された。「説明しにくいものもデザインで置き換えると腑に落ちるし、印象にも残る。あえて参加してもらう

▼ゴルフの池ポチャで難しいテクノロジーを楽しんでもらう仕掛けは広告ならではといえそうだ。
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今回のプレイイベントではここでは紹介した以外にも多くの具体例や裏話が紹介された。アドテック関西は展示会とカンファレンスで構成されるが、有料プログラムでは、その場にいなければ聞けない内容が盛りだくさんということで、今から期待したいところである。

【参照情報】
アドテック関西2014 公式サイト

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野々下 裕子(ののした・ゆうこ)

フリーランスライター。大阪のマーケティング会社勤務を経て独立。主にデジタル業界を中心に国内外イベント取材やインタビュー記事の執筆を行うほか、本の企画編集や執筆、マーケティング業務なども手掛ける。掲載媒体に「月刊journalism」「DIME」「CNET Japan」「WIRED Japan」ほか。著書に『ロンドンオリンピックでソーシャルメディアはどう使われたのか』などがある。