シンガポールの携帯電話事情(2) - プリペイドSIMでLTEを使う
2014.12.05
Updated by Kazuteru Tamura on December 5, 2014, 17:00 pm JST
2014.12.05
Updated by Kazuteru Tamura on December 5, 2014, 17:00 pm JST
シンガポールは経済発展を遂げた結果、東南アジアにおけるビジネスの拠点とすることも多い。また、多数の観光スポットがあるために観光客も多い。一方、日本ではSIMロック解除の義務化への動きもあり、海外渡航時に現地のプリペイドSIMを利用するケースが増えるかもしれない。そこで、今回は多くの日本人が渡航するシンガポールのプリペイドSIMの購入方法などを紹介する。
シンガポールを訪問する多くの日本人はチャンギ国際空港から入国することになるだろう。そのチャンギ国際空港では両替所や観光案内所などでプリペイドSIMを買える。移動体通信事業者の専用ブースもあり、外国人でも手軽にプリペイドSIMを買える。
Singapore Telecommunications(以下、SingTel)のプリペイドSIMはRHB銀行とCHANGI RECOMMENDSで購入できる。
RHB銀行は両替所としてチャンギ国際空港内に多数の窓口が設けられており、両替ついでにSingTelのプリペイドSIMを買いたいと伝えれば、その場ですぐに購入できる。SingTelのプリペイドSIMに関する案内が置かれており、両替所のスタッフも取扱業務として把握しているので、移動体通信事業者の販売店でなくてもスムーズに購入できる。
CHANGI RECOMMENDSはいわゆる観光案内所で、少なくとも各ターミナルの到着階には1ヶ所以上あるため、外国人でも見つけやすいはずである。観光案内所であるだけに観光客への案内には慣れていると思われ、両替所より親切に対応してもらえるかもしれない。
▼チャンギ国際空港にあるRHB銀行。両替レートやプリペイドSIMの案内が掲載されている。
▼チャンギ国際空港内のCHANGI RECOMMENDS。SingTelの案内があり、奥にはSingTelのマスコットキャラクタもいる。
▼SingTelのマスコットキャラクタ。プリペイドSIMにもこのマスコットキャラクタが描かれている。
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StarHubのプリペイドSIMはユナイテッド・オーバーシーズ銀行(以下、UOB銀行)で購入できる。窓口にはUOB銀行または大華銀行と書かれている。こちらも両替所であるだけに至る所に窓口があり、探すのには困らない。UOB銀行の窓口にはStarHubのプリペイドSIMに関する案内があるので、こちらでも両替のついでにプリペイドSIMを購入できる。
StarHubは専用ブースを設けており、そちらで購入することもできる。StarHubの専用ブースではモバイル無線LANルータのレンタルも行っており、外国人向けサービスはUOB銀行の窓口より充実している。また、プリペイドSIMで正常に利用できないなどトラブルに見舞われた場合、UOB銀行よりも確実なサポートが期待できる。ただ、StarHubの専用ブースは24時間営業ではないため、時間によっては営業していないので注意しておきたい。
▼チャンギ国際空港にあるUOB銀行。両替レートやプリペイドSIMの案内が掲載されている。
▼チャンギ国際空港にはStarHubの専用ブースも設けられている。
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SingTelやStarHubのプリペイドSIMは両替所などで買えるが、M1のプリペイドSIMはチャンギ国際空港内にあるM1の専用ブースで購入することになる。両替所であれば24時間営業であるためいつでもプリペイドSIMを購入できるが、M1の専用ブースは営業時間が限られているため、他社と比べて買いにくいかもしれない。価格面やネットワークの品質面でM1が突出して優位なわけではなく、M1に拘らないのであればSingTelやStarHubを選べば良いだろう。
▼チャンギ国際空港にあるM1の専用ブース。
シンガポールでは2014年4月1日より1個人で購入可能なプリペイドSIMの枚数が3枚に制限されている。従来は10枚であったが、プリペイドSIMの不正利用が絶えなかったため、政府による制限が強化された。
海外渡航時に1国で多数のプリペイドSIMを購入することは一般の旅行者では数少ないケースと思われるが、渡航頻度が高くプリペイドSIMの有効期限内に追加で購入する場合などは注意しておきたい。なお、プリペイドSIMを購入する際にはパスポートの提示が求められるため、ホテルや荷物預かり所に荷物を置いてからプリペイドSIMを買う場合などはパスポートを忘れないよう注意したい。
▼シンガポールのプリペイドSIMは各社1枚ずつ購入した。左からSingTel、StarHub、M1。
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シンガポールではSingTel、StarHub、M1の全社がプリペイド向けにLTEサービスを解放している。プリペイドSIMを購入する際に4G LTEまたは4Gを使いたいと伝えれば、簡単にLTE対応のプリペイドSIMを購入できる。LTEでは通じないこともあるので、4G LTEまたは4Gと言った方が伝わりやすいだろう。4Gと言えばHSPA+方式に対応したプリペイドSIMを出される国や地域もあるが、シンガポールではそのようなことはなかった。
シンガポールでは3社ともFDD-LTE方式を採用しており、周波数帯は2.6GHz帯(Band 7)と1.8GHz帯(Band 3)で提供している。そのため、LTEネットワークを利用するのであれば、2.6GHz帯と1.8GHz帯のFDD-LTE方式に対応した端末を用意したい。2.6GHz帯のみ、もしくは1.8GHz帯のみでも使えなくはないが、利用可能なエリアが限られる場合があるので、2.6GHz帯と1.8GHz帯の両方に対応した端末を用意することを推奨する。
都市国家であるだけに3社ともシンガポール全土をLTEサービスの提供エリアとしているが、地下やMRT乗車中は3Gに落ちることもあった。ただ、殆どはLTEネットワークに接続されており、速度も速いので快適に使えた。
3社のLTE対応プリペイドSIMで3社のLTEネットワークを比較したが、エリア面では大きな差を感じることはなった。ただ、速度についてはSingTelとM1は50Mbpsを超える速度が出ることも多かったが、StarHubはあまり速度が出ない印象であった。最高速度がそれほど出なくても実用的に使うには十分だろう。M1は上りの速度が40Mbps近く出ることもあり、大容量なファイルもスムーズに送信できて非常に助かった。
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▼SingTelのLTEネットワークで通信速度を測定。
▼SingTelのLTEネットワークは海上でも使えた。
▼StarHubのLTEネットワークで通信速度を測定。
▼M1のLTEネットワークで通信速度を測定。
▼M1は上りの速度が40Mbps近く出ることもあった。
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チャンギ国際空港におけるプリペイドSIMの購入方法を中心に紹介したが、市内に出てからも購入できる。セブン-イレブンでSingTelとStarHubのプリペイドSIMなどを販売しており、そこでプリペイドSIMを買えるのである。
市内には移動体通信事業者の販売店もあり、SingTel、StarHub、M1の各販売店で各移動体通信事業者のプリペイドSIMを買えるが、販売店によってはプリペイドSIMを取り扱っていない場合もある。実際に、M1の販売店ではプリペイドSIMを取り扱っていないために、近くのStarHubの販売店に行くように勧められた。
また、路上でプリペイドSIMを販売しているところもあるが、できるだけ正規の窓口や販売店で買うようにしたい。やはり、プリペイドSIMを購入するのであればチャンギ国際空港で購入しておくべきだろう。
▼セブン-イレブンにはSingTelとStarHubの案内が貼られている。プリペイドSIMやトップアップなどを購入できる。
▼セブン-イレブンのレジの奥にはスマートフォンなども並べられていた。
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シンガポールではSingTel、StarHub、M1のプリペイドSIMを購入したが、SingTelはありきたりなMini SIM (2FF)サイズとMicro SIM (3FF)サイズのデュアルカットであったものの、StarHubとM1はMini SIM (2FF)サイズとMicro SIM (3FF)サイズとNano SIM (4FF)サイズのトリプルカットとなっていた。デュアルカットは他の国や地域でもよく見かけるのでそれほど珍しくはないが、トリプルカットは珍しいと言えるだろう。ただ、今後はNano SIM (4FF)サイズを採用した端末も増える見通しであるため、他の地域でもトリプルカットが増えるだろう。
▼トリプルカットであるためMini SIM (2FF)サイズ、Micro SIM (3FF)サイズ、Nano SIM (4FF)サイズの3種類を自由に切り抜ける。
シンガポールで印象的であったことは、プリペイドSIMの購入が非常に容易ということである。シンガポールを訪問する外国人の殆どは両替所に寄るはずであり、観光案内所に寄る外国人もいる。外国人が寄る場所でプリペイドSIMを買えるため、わざわざプリペイドSIMの売り場を探す必要がない。また、両替所は24時間営業であり、パブリックエリア・制限エリアともに両替所を見ない方が難しいくらい至る所に両替所があるため、チャンギ国際空港内であればいつでもどこでもプリペイドSIMを買える状態である。バゲージ・クレームで預け荷物が出てくるのを待つ間に両替とプリペイドSIMの購入も済ますこともできる。プリペイドSIMのパッケージにはマニュアルが同封されており、手順通りに設定などを進めればすぐに使えるようになる。
また、チャンギ国際空港はトランジット客が多く制限エリア内の施設も充実しており、制限エリア内にある多数の両替所でプリペイドSIMを購入することができる。トランジットでチャンギ国際空港に寄る場合でも、プリペイドSIMを購入して高速なLTEネットワークでインターネットを楽しめる。このように移動体通信事業者を問わなければ、プリペイドSIMの購入は非常に容易なのである。外国人が手軽にプリペイドSIMを買えることはリスクも伴うが、手軽にモバイルインターネット環境を得られるということで、おもてなしの一つと言えるかもしれない。
▼制限エリア内にあるUOB銀行の両替所。プリペイドSIMの案内が見られる。裏にはRHB銀行の両替所がある。
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登録はこちら滋賀県守山市生まれ。国内外の移動体通信及び端末に関する最新情報を収集し、記事を執筆する。端末や電波を求めて海外にも足を運ぶ。国内外のプレスカンファレンスに参加実績があり、旅行で北朝鮮を訪れた際には日本人初となる現地のスマートフォンを購入。各種SNSにて情報を発信中。