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シンガポールの携帯電話事情(3) - 中国のスマートフォンメーカーも参入

2014.12.12

Updated by Kazuteru Tamura on December 12, 2014, 12:00 pm JST

東南アジアの中でも著しく経済発展を遂げたシンガポールは、スマートフォン事情も他の東南アジア諸国とは異なる様相を示している。東南アジアの国としては珍しくiPhoneの比率が高いシンガポールであるが、新たに複数の中国のスマートフォンメーカーがシンガポールに参入した。今回はそんなシンガポールにおける最新のスマートフォン事情を紹介する。

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iPhoneの比率が高め

シンガポールではApple製のスマートフォンiPhoneの比率が高い。実際にシンガポールの街中を歩くとiPhoneを目にする機会が非常に多い。シンガポールにおけるiPhoneの比率はピークよりは減少しているものの、依然としてiPhoneの比率が高い。世界的に見てiPhoneの比率が高い日本と比べると、シンガポールのiPhoneの多さに気付きにくいかもしれないが、他の東南アジア各国と比べるとiPhoneの比率の高さが顕著であり、シンガポールも世界的に見てiPhoneの比率が高い部類に入る。ただ、都市国家であるシンガポールはスマートフォンの市場規模が大きくないため、販売台数はそれほど多くないと思われる。

シンガポールではiPhoneの広告も非常に多い。バス停、MRTの駅、地下道などでiPhone 6やiPhone 6 Plusの広告をよく目にする。広告が多く積極的にマーケティングをしているということは、それだけiPhoneの需要が高いと考えられる。iPhone 5以降のiPhoneからはシンガポールが一次販売国に含まれていることも、それを物語っていると言えるだろう。なお、シンガポールの移動体通信事業者ではSingapore Telecommunications(以下、SingTel)、M1、StarHubの全3社がiPhoneを取り扱っている。

他の東南アジア諸国では低価格なスマートフォンが主流であり、高価格なiPhoneは比率が低い。しかし、シンガポールは著しい経済発展によって経済的に余裕がある層が多いことから、このようにiPhoneが多い市場になっていると考えられる。

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▼MRTドビー・ゴート駅のiPhone 6の広告。
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▼バス停にもiPhone 6の広告が見られる。
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▼SingTelの販売店に設けられているAppleのブースは他社のブースよりもスペースが広い。
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▼市内にある各種販売店とは性質が異なるが、チャンギ国際空港の制限エリア内にはApple公認のApple Premium ResellerであるiStudioが営業しており、iPhoneなどApple製品を専門的に取り扱う。
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新たに中国のスマートフォンメーカーが参入

シンガポールでは複数の中国メーカーが新たに参入している。これまでグローバルで展開してきたHuawei Technologies(華為技術)などを除き、2014年に入ってからはしばしば新興メーカーとも呼ばれる中国のメーカーがシンガポールへの新規参入を果たしている。

2014年にシンガポールに参入した中国のメーカーとしては北京市に本社を置くBeijing Xiaomi Technology(北京小米科技:以下、Xiaomi)や東莞市に本社を置くGuangdong OPPO Mobile Telecommunications(広東欧珀移動通信:以下、OPPO)が挙げられる。

Xiaomiは2014年2月よりシンガポールでスマートフォンの販売を開始した。Xiaomiは東アジアでは複数の国や地域で展開してきたが、東アジア以外の国や地域における展開はシンガポールが初となった。シンガポールでは移動体通信事業者のSingTelとStarHubがXiaomiのスマートフォンを取り扱っており、StarHubの販売店にはXiaomiのマスコットキャラクタである米兎も置かれていた。

OPPOはXiaomiと同時期にシンガポールへの参入を果たしている。OPPOのスマートフォンはSingTelとM1が取り扱っており、SingTelの販売店にはOPPOのコーナーが設けられていることもあった。シンガポールではOPPO N1 miniとOPPO Neo 5が好調という。特にOPPO Neo 5はシンガポールで最も手軽な価格のLTE対応スマートフォンと謳って展開しており、SingTelとM1の両社がスマートフォンのラインナップに採用している。

シンガポールは富裕層が多いものの所得格差も大きく、安価なスマートフォンの売れ行きは好調とのことである。そのため、OPPOはシンガポールにおいてもハイエンドのスマートフォンだけではなく、ミッドレンジ以下のリーズナブルなスマートフォンをラインナップに加えている。また、OPPOはシンガポールを含めた東南アジアにおける展開を強化する方針で、OPPO製品を専門に取り扱うシンガポール法人直営のコンセプトストアをシンガポールに開設し、新製品の発表会をシンガポールで開催するなど、東南アジアにおける動きは中国のメーカーでは最も活発と言っても過言ではない状況である。

シンガポールは華僑が多いことや、ビジネスの拠点として世界各地から企業が集まることから、中国企業としては進出しやすい市場とされている。ただ、シンガポールのスマートフォンの市場規模を考えると、東南アジアで販売台数やシェアの増加を狙うのであれば、シンガポール以外の市場に注力する必要がある。実際に、XiaomiやOPPOはシンガポール以外の東南アジア諸国においても展開しており、各国で独自のマーケティングを繰り広げている。中国メーカーのみならず各メーカーにとってシンガポールは東南アジアにおける展開の足掛かりとなることはあっても、特別に注力される市場となることはないだろう。

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▼SingTelの旗艦販売店に展示されているXiaomi Redmi 1S。
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▼StarHubの販売店にはXiaomiのマスコットキャラクタである米兎が置かれている。そばにはXiaomi Redmi Noteが展示されていた。
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▼SingTelの販売店にはSamsung ElectronicsやSony Mobile Communicationsなどと並んでOPPOのコーナーが用意されていた。
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▼SingTelの販売店に置かれているOPPO Neo 5 (R831L)。OPPOはシンガポールで最安のLTE対応スマートフォンと謳っている。
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▼OPPOはサンテック・シティにコンセプトストアとして直営の販売店を開設した。
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SAMSUNGやASUSも販売店を構えて展開

先述の通りシンガポールはスマートフォンの市場規模が大きくないため、各メーカーとも特別に積極的なマーケティングは展開していないが、韓国のSamsung Electronicsや台湾のASUSTeK Computer(華碩電脳)なども独自の販売店を構えて展開している。大型のショッピングモールにはSamsung ElectronicsやASUSTeK Computerの販売店が入居しており、スマートフォンの体験や購入ができる。

Samsung Electronicsの販売店は規模が大きく、シンガポールでもSamsung Electronicsの強さを見せつけている。最新のハイエンドからローエンドまで幅広いスマートフォンのラインナップを用意しており、ハイエンドのSamsung GALAXY Note 4 4G+も手に取って試すことができた。また、LTE対応スマートフォンとしてはリーズナブルな価格に設定されているSamsung GALAXY ACE 4 LTEの売れ行きが好調という。独立した携帯電話販売店ではSamsung GALAXY ACE 4 LTEが並べられているところを頻繁に目にしていたので、それだけ流通量が多く販売台数を稼いでいることは確かだろう。

ASUSTeK Computerの販売店ではASUS ZenFone 5 LTEが最も売れているとのことである。店頭では最も目立つ位置にASUS ZenFone 5 LTEを配置しており、力の入れ具合が見て取れた。

シンガポールは富裕層が多いイメージが強いが、決してハイエンドばかりが販売されているのではなく、ミッドレンジ以下のリーズナブルなスマートフォンもかなりの台数が売れていると考えられる。高価格なiPhoneの比率が高い一方で、多くの低価格なスマートフォンが出回っているということは、富裕層の多さや所得格差など今のシンガポールを表していると言えるかもしれない。

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▼Samsung Electronicsの販売店は規模が大きく、人の出入りが絶えなかった。
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▼Samsung ElectronicsのフラッグシップであるSamsung GALAXY Note 4 4G+ (SM-N910G)。SingTelでは下り最大300Mbpsの高速なデータ通信を利用できる。
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▼Samsung GALAXY ACE 4 LTE (SM-G313F)はリーズナブルな価格のLTEスマートフォンとして用意されている。
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▼ASUSTeK Computerの販売店。入り口付近にASUS ZenFone 5 LTEが展示されている。
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田村 和輝(たむら・かずてる)

滋賀県守山市生まれ。国内外の移動体通信及び端末に関する最新情報を収集し、記事を執筆する。端末や電波を求めて海外にも足を運ぶ。国内外のプレスカンファレンスに参加実績があり、旅行で北朝鮮を訪れた際には日本人初となる現地のスマートフォンを購入。各種SNSにて情報を発信中。