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安藤美姫を叩くのが当たり前だと思っているから日本からサビ残が減らないのだ

2015.01.05

Updated by Mayumi Tanimoto on January 5, 2015, 09:19 am JST

新年からイヤーな感じのニュースが飛び込んでまいりました。

安藤美姫「私の人生は私のもの。 あなたのものではありません」とアンチに怒りの反論

安藤美姫「3ショット」批判コメントに英語で「卑しい」  かつてのアイドルスケーターはなぜ叩かれる

フィギュアスケート選手の安藤美姫さんが、2013年に未婚のまま長女を出産し、自身のインスタグラムで、娘さんとフェルナンデス選手との2ショット写真を掲載したことで、SNS経由で誹謗中傷のコメントが大量に湧いている様です。

炎上騒ぎを受けて、日本スケート連盟様は「フィギュア界の印象が悪化」と激怒いたしましたが、激怒したことで中の人はキモイ爺さんばかりだとうことがわかり、しかもそれを報道したマスコミは「mean」は「卑しい」ではなく「意地悪」という意味を知らなかったアホだったということでTwitter民の怒りを買い、フェミの方や左系の方も参戦してドンドン延焼しているという事態になっております。

そもそも、安藤選手はスポーツ選手であり、スケートをツイーっと滑るのがお仕事でありますから、ツイーッと滑って実績さえだせば私生活で何をしようとそれは勝手なわけであります。

実績とは、氷の上を上手にツルツルと滑ることです。それ以上でも以下でもありません。

フィギュア選手は芸能人だからイメージが清純じゃなきゃだめだ、とは言っても、そもそも、性交することや、股から子供をひねり出すことというのは、排便とか放尿とか放屁することと同じで、清純も不潔も何もなく、人間なんですから当たり前のことであり、何をそんなに大騒ぎするのかと、経産婦であるワタクシは思うわけですが。

ところで安藤選手に湧くコメントや報道は、日本でなぜサビ残が減らないかという命題に対する答えになっています。

このブログでも何回も書いておりますが、日本の職場からサビ残が減らない理由は、要するに、職能別の採用や業績評価をやっていないからです。個々人の技能や特性を「あなたはあなた、私は私」と認めず、技能や実績自体では人様を評価しないからです。その代わりに

「苦しそうだが頑張った」
「休まなかった」
「根性がある」
「いつも飲み会にくるからいい奴だ」
「感じがいい」
「社会常識がある」
「俺と共通点がある」
「若い女の子らしく華やかな服だ。素直に言うことを聞くし、弁当を作るのがうまいな」

とういうことを重視します。

つまり、評価されるのは、その人の印象であり、自分の期待通りの発言や行動をするかであり、「日本の世間一般で期待される役割」に沿ったかどうかであり、スケートが上手かどうか、すごいアプリを作ったかどうか、ネットワークの設計がうまいかどうか、的確な統計分析ができるかどうか、そういう数字やもので見える実績ではないのです。

ですから、氷の上をツルツルするのがいくらうまくても、世間様が期待するイメージ通りのことをいい、イメージ通りの行動をとらなければ、良い評価は頂けないのです。

コーディングやネットワークの設計は最高にうまいのにあなたの給料が営業のチャラ男より安い理由。それはこの島の人々があなたを実績で評価せず「感じがいいかどうか」「飲み会にくるかどうか」で評価しているからです。

頭の悪い若手の5倍の早さで仕事をこなしてしまうあなたよりも、鼻水たらしてコーディングする若手の方が評価されてしまうのです。印象が重要なのでデスマは永久になくならないのです。

つまり、才能も技能もないが、良い印象を与えることができる人間にとって、この島は長時間労働さえ我慢すれば大変居心地の良い所なのです。期待通りの行動さえとっていればいいわけですから。これは、踊りの型さえ習得してしまって、それを同じ様に繰り返すことができれば良い成績になるのと同じことです。

しかし、自分の頭で考えたり、他人と違うことをやる様な人間にとっては地獄であり、口は下手だが実績を出せる人間には地獄の様なところなのです。

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谷本 真由美(たにもと・まゆみ)

NTTデータ経営研究所にてコンサルティング業務に従事後、イタリアに渡る。ローマの国連食糧農業機関(FAO)にて情報通信官として勤務後、英国にて情報通信コンサルティングに従事。現在ロンドン在住。