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VoLTEを提供するFoxconn傘下の國碁電子 – Foxconnが開発した端末を用意

VoLTEを提供するFoxconn傘下の國碁電子 – Foxconnが開発した端末を用意

AMBIT Microsystems, a subsidiary of Foxconn operating VoLTE – Selling devices developed by Foxconn

2015.07.01

Updated by Kazuteru Tamura on July 1, 2015, 11:42 am JST

通称Foxconnとして知られるFoxconn Technology Group(鴻海科技集団:以下、Foxconnグループ)傘下で台湾の移動体通信事業者である國碁電子(AMBIT Microsystems)は2015年5月15日より移動体通信サービスを開始した。亞太電信(Asia Pacific Telecom)を存続会社として亞太電信と統合する計画の國碁電子はFoxconnグループの意に反して単独で移動体通信サービスを提供することになった。通信方式はLTE方式のみで提供しているため、音声通話はすべてVoLTE (Voice over LTE)となる。なお、亞太電信との統合計画や國碁電子が単独で移動体通信サービスの提供を開始した経緯などの詳細については前回掲載分の記事を参照されたい台湾・台北を訪問した際にFoxconnグループの移動体通信サービスとして注目される國碁電子を取材したので、今回は主に國碁電子が取り扱う端末について紹介する。

Foxconnグループ開発の端末を販売

國碁電子は移動体通信サービスの開始に合わせて端末の販売も開始した。スマートフォンは「InFocus M810 VoLTE版本」の1機種、モバイル無線LANルータは「Gt MHS-102」の1機種で、合計2機種のみを取り扱う。いずれもFoxconnグループ傘下の企業が開発と製造を手掛けた端末である。具体的には、InFocus M810 VoLTE版本はFoxconnグループ傘下のFIH Mobile、Gt MHS-102はFoxconnグループ傘下の鴻海精密工業(Hon Hai Precision Industry)が開発と製造を担当した。

國碁電子は移動体通信用の周波数としてLTE用に割り当てられたAPT700 FDDと呼ばれる700MHz帯(Band 28:以下、Band 28)と900MHz帯(Band 8:以下、Band 8)を保有するが、移動体通信サービスの開始当初はBand 28における5MHz幅のみを使用する。LTE方式でBand 28を採用する移動体通信事業者は増加しており、それだけに対応端末も一気に増加している。しかし、國碁電子はLTE方式のみで移動体通信サービスを提供し、音声通話はVoLTEのみと特殊な状況にあるためか、Band 28のLTE方式に対応している端末でもデータ通信すら利用できないケースが少なくないことを確認した。なお、國碁電子は自らが販売を手掛けるInFocus M810 VoLTE版本とGt MHS-102のみを動作保証対象の端末としている。

▼國碁電子の直営店。
國碁電子の直営店。

▼國碁電子の直営店にはInFocus M810 VoLTE版本とGt MHS-102の化粧箱が飾られている。
國碁電子の直営店にはInFocus M810 VoLTE版本とGt MHS-102の化粧箱が飾られている。

VoLTE対応スマートフォンはInFocus M810 VoLTE版本のみ

國碁電子は音声通話がVoLTEのみとなるため、國碁電子で音声通話を利用するためにはVoLTEに対応した端末が必要となる。國碁電子によると自社のVoLTEに最適化された端末のみVoLTEを利用可能としており、それがInFocus M810 VoLTE版本となる。國碁電子が取り扱うモバイル無線LANルータのGt MHS-102はデータ通信専用であるため、InFocus M810 VoLTE版本が國碁電子のVoLTEに対応した唯一の端末となる。

InFocus M810 VoLTE版本は通常版のInFocus M810をベースとしてソフトウェアのカスタマイズによって國碁電子のVoLTEに最適化しており、ハードウェアは通常版のInFocus M810と共通である。なお、通常版のInFocus M810は発売時のOSのバージョンがAndroid 4.4.2 (KitKat)で、2015年6月上旬よりAndroid 5.0.2 (Lollipop)へのバージョンアップが提供されているが、InFocus M810 VoLTE版本は2015年6月末の時点でバージョンアップは提供されていない。InFocus M810 VoLTE版本はソフトウェア面で特別なカスタマイズが加えられているため、購入する場合はバージョンアップが遅れる可能性や実施されない可能性も考慮しておく必要がある。

通常版のInFocus M810は2014年第3四半期に台湾で発売された。発売時の価格は9,988台湾ドルに設定されており、InFocus公式のオンラインストアでは2015年6月末の時点で値下げは実施されていない。一方でInFocus M810 VoLTE版本の価格は10,988台湾ドルとなっている。通常版のInFocus M810より発売日は半年以上も遅いが、國碁電子向けのカスタマイズが含まれているためか通常版のInFocus M810より1,000台湾ドルも高く設定されている。

▼InFocus M810 VoLTE版本の化粧箱にはVoLTEとシールが貼られている。
InFocus M810 VoLTE版本の化粧箱にはVoLTEとシールが貼られている。

▼InFocus M810 VoLTE版本の化粧箱の内部と同梱品。
InFocus M810 VoLTE版本の化粧箱の内部と同梱品。

▼InFocus M810 VoLTE版本の前面。
InFocus M810 VoLTE版本の前面。

▼InFocus M810 VoLTE版本の背面。
InFocus M810 VoLTE版本の背面。

▼InFocus M810 VoLTE版本の側面。金色を帯びており、高級感を演出している。
InFocus M810 VoLTE版本の側面。金色を帯びており、高級感を演出している。

ブランド以外はFoxconnグループが手がけるInFocusのスマートフォン

Foxconnグループが製造を手掛ける端末は数え切れないくらいに多く、特に米国のAppleが展開するiPhoneシリーズやiPadシリーズの製造をFoxconnグループが手掛けることは有名である。しかし、InFocusブランドのスマートフォンはそれらとは事情が異なる。

InFocusはプロジェクタの分野などで有名な米国の企業であるが、スマートフォンの分野ではFoxconnグループとライセンス契約を結んでおり、InFocusブランドのスマートフォンは開発や製造から流通やサポートまでFoxconnグループ傘下が担当する。InFocusとしてはブランドを供与するライセンス事業となり、実質的にブランド以外はすべてFoxconnグループが手掛けることになる。それだけに、InFocusブランドのスマートフォンはFoxconnのスマートフォンとして認知されることもあり、実際に台湾ではInFocusブランドのスマートフォンをFoxconnの携帯電話を意味する鴻海手机として販売する様子が見られた。決して台湾におけるスマートフォンの販売台数シェアは高くないものの、台北捷運の駅では広告を出すなど存在感は示している。

國碁電子と統合する計画の亞太電信はLTEサービスの開始に合わせてブランドを刷新し、ブランド名をこれまでのA+ Worldから新たなGtに改めた。ブランドの刷新はFoxconnグループの意向が反映されており、Foxconnグループの支配による新生・亞太電信として歩み始めることを誇示した。

Foxconnグループの意向はこれだけでなく、亞太電信が販売する端末のラインナップにはInFocusブランドのスマートフォンが目立つようになった。亞太電信の取扱店や体験館にはInFocusブランドのスマートフォンを展示するために比較的広いスペースを用意、InFocusブランドのスマートフォンでは最上位となるInFocus M810の大きな広告を掲示、後にInFocus公式のオンラインストアでも扱うことになったが亞太電信のLTEサービス開始に合わせて亞太電信限定(当時)でInFocus M810 藍寶石限定版を投入するなど、InFocusブランドのスマートフォンを特別扱いするような動きが見られる。

先述の通りInFocusブランドのスマートフォンは実質的にFoxconnのスマートフォンであるため、Foxconnグループに支配された亞太電信の一連の動きは必然とも言える。すでに亞太電信にはFoxconnグループの方針が色濃く出ており、またInFocusブランドのスマートフォンはFoxconnグループにとって特別扱いしたい存在であることが分かる。それだけに、國碁電子が取り扱う唯一のVoLTE対応スマートフォンがInFocusブランドであることも納得できる。

▼台湾ではInFocusブランドのスマートフォンを鴻海手机として売る様子が見られる。
台湾ではInFocusブランドのスマートフォンを鴻海手机として売る様子が見られる。

▼台北捷運の一部の駅ではInFocus M350の広告が見られる。
台北捷運の一部の駅ではInFocus M350の広告が見られる。

▼Foxconnグループ傘下の三創数位(Sanchuang Digital)が運営を手掛ける三創生活園区(SYNTREND)に入居する亞太電信の体験館にはInFocusブースのスペースが広めに確保されている。
Foxconnグループ傘下の三創数位(Sanchuang Digital)が運営を手掛ける三創生活園区(SYNTREND)に入居する亞太電信の体験館にはInFocusブースのスペースが広めに確保されている。

▼亞太電信の体験館に展示中のInFocus M810。中央がInFocus M810 藍寶石限定版である。
亞太電信の体験館に展示中のInFocus M810。中央がInFocus M810 藍寶石限定版である。

▼亞太電信の直営店に掲示されているInFocus M810の大きな広告。
亞太電信の直営店に掲示されているInFocus M810の大きな広告。

亞太電信のモバイル無線LANルータを販売

國碁電子はモバイル無線LANルータのGt MHS-102も取り扱う。Gtは新生・亞太電信が展開するブランド名であり、亞太電信が取り扱うモバイル無線LANルータをそのまま販売する。異なる移動体通信事業者のブランドを冠した端末を販売することは少々違和感を覚えるかもしれない。しかし、あまり多くの販売台数を見込めない中で國碁電子独自のデザインに変更するとコストがかかり、また亞太電信と統合することが前提であるため、Gtブランドをそのまま販売している。

Gt MHS-102はデータ通信専用であるため、InFocus M810 VoLTE版本とは異なりVoLTEによる音声通話に対応する必要がない。國碁電子独自のカスタマイズが不要であるためか、亞太電信と同じく3,490台湾ドルとリーズナブルな価格に設定されている。
先述の通りGt MHS-102はFoxconnグループの鴻海精密工業が開発と製造を手掛けている。亞太電信のカタログにはFoxconnグループが製造を手掛けることを意味する鴻海製造と明記しており、Foxconnグループが製造することを前面に出している。

▼亞太電信のカタログに掲載されたGt MHS-102には鴻海製造と明記されている。
亞太電信のカタログに掲載されたGt MHS-102には鴻海製造と明記されている。

サービスから端末までFoxconnグループで賄うキャリア

Foxconnグループ傘下の國碁電子はFoxconnグループの企業が開発や製造を手掛けた端末を取り扱っており、移動体通信サービスから販売する端末の開発や製造までFoxconnグループで賄っていることになる。

國碁電子による移動体通信サービスは亞太電信と統合するまでの暫定的なものであり、國碁電子としては多くの加入者を集める狙いはない。それだけに動作保証対象の端末は少なくても問題ないが、亞太電信との統合が完了すればそうはいかない。両社の統合案が国家通訊伝播委員会(NCC)に承認されることが前提となるが、移動体通信サービスから端末までFoxconnグループで賄う珍しい状態が見られる期間は決して長くないだろう。

Foxconnグループの本気は國碁電子と亞太電信の統合後であり、台湾全土におけるVoLTEの展開も本格化する見通し。本格的に新規参入となるFoxconnグループが既存の移動体通信事業者と対抗するためにどのような仕掛けを繰り出すのか要注目である。

▼亞太電信の体験館で展示中のInFocus M530には國碁電子のSIMカードが挿入されている。異なる移動体通信事業者のSIMカードが挿入されていることは釈然としないかもしれないが、國碁電子と亞太電信の関係を考慮すればこのようになる経緯は理解できるはずである。
亞太電信の体験館で展示中のInFocus M530には國碁電子のSIMカードが挿入されている。異なる移動体通信事業者のSIMカードが挿入されていることは釈然としないかもしれないが、國碁電子と亞太電信の関係を考慮すればこのようになる経緯は理解できるはずである。

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田村 和輝(たむら・かずてる)

滋賀県守山市生まれ。国内外の移動体通信及び端末に関する最新情報を収集し、記事を執筆する。端末や電波を求めて海外にも足を運ぶ。国内外のプレスカンファレンスに参加実績があり、旅行で北朝鮮を訪れた際には日本人初となる現地のスマートフォンを購入。各種SNSにて情報を発信中。