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本稿を執筆している2015年8月27日は、改正個人情報保護法が参議院委員会で可決されることが予定されている日です。午前11時現在、参議院内閣委員会では審議が行われていますが、ここまでのところ議論の多くはマイナンバー法案のサイバーセキュリティ対策で占められています。(※編集部注:予定どおり可決されました)

パーソナルデータに関する検討の第一回開催が、2013年9月2日。同年12月には制度見直し方針が示され、法改正に向けた検討が本格化します。その後、2014年6月に「パーソナルデータの利活用に関する制度改正大綱」が示され、さらに1年を経ていよいよ改正法が可決されるかと思いきや、日本年金機構の大規模インシデントによって審議がストップしたのは、記憶に新しいところです。

パーソナルデータに関する検討会の初期には、JR東日本のSUICAのデータ外販に関する問題提起が生じました。また同時期にはOECDが33年振りにプライバシーガイドラインが改正されました。今回のテーマ9(参照)で議論の中心となった、匿名加工情報とデータ越境に関する検討は、正しく今回の法改正の背景そのものでもあったと言えます。

しかしながら、ここまでの検討や、法案条文、そして国会審議を見ていくと、今ひとつスッキリとは解釈できないことが残っています。

たとえば匿名加工措置では、その手法ひとつとっても、「仮名化されたデータは匿名加工情報なのか」「違うとしたらこれまでの医療分野でのデータの取扱いはどうなるのか(参照)」といった問題が残っていることが、今回の議論で改めて浮き彫りになりました。またデータ越境に関しても、日本法人の海外子会社の扱い(参照)や、日本法の域外適用の具体的な執行方法等、日本を中心とした検討だけでも、課題は山積です。

このように、具体的な定義や運用については、今後改組される予定の個人情報保護委員会の規則や、さらに業界団体としての認定個人情報保護団体が、その実務を担うことになりますが、その実態はいまだ明確になっていません。

「家に帰るまでが遠足」とは、私たちが子供の頃によく聞かされた言葉です。しかし今回の法改正に関しては、「法案が可決するまでが遠足」ではなく、「委員会規則が定められるまでが遠足」でもなく、最終的な改正法の全面施行がなされるまで、おそらく実務面での検討は続けられることになるでしょう。

さらにいえば、施行された後も様々な執行体制の見直しは繰り返されますし、またその3年後には「次の次の改正」も検討されています。すなわち「そして遠足は続く」と考えておくことが、専門家のみならず事業者にとっても、正しい態度であるように思えます。

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特集:プライバシーとパーソナルデータ

情報通信技術の発展により、生活のあらゆる場面で我々の行動を記録した「パーソナルデータ」をさまざまな事業者が自動的に取得し、蓄積する時代となっています。利用者のプライバシーの確保と、パーソナルデータの特性を生かした「利用者にメリットがある」「公益に資する」有用なアプリケーション・サービスの提供を両立するためのヒントを探ります。(本特集はWirelessWire News編集部と一般財団法人日本情報経済社会推進協会(JIPDEC)の共同企画です)