枯山水

図の流れを意識せよ〜位置と順序が視点を導く

follow the flow

2015.09.09

Updated by Hiroshi Imaizumi on 9月 9, 2015, 13:51 pm JST

前回、図は意味を引っ張り出してくるためのきっかけだという話をしました。図化とはそれらを平面上に配置することであり、パーツが数珠つなぎになっている文章よりも、読み手の想像・連想による解釈の幅が大きい、ということでした。さらに言えば図化は、「読む側が自由に視線をうごかして意味を発見できるよう、要素の並びを整える」ことができるのです。そうだとしたら前回の図は? と思った読者はデザイン系の教員に向いてるかもしれません。

前回使った図の問題は、「本文横組みに対して挿入された図の文字が縦書き」だったということです。ウェブ上の横組みテキストを目にすると、私たちはまず画面(あるいは基準となる枠)の左上に視線をもっていきます。そして、水平右方向に文字列をなぞり、その行の右端までたどり着くと、次は一番左に飛んで一行下がり、そこから再び右まで文字列をたどる、という動きを繰り返します。これに対して縦組みの文章では、まず画面右上から下に視線を移動し、一番下までたどりついたら今度はその左の行の一番上まで飛び、再び下降します。この説明は書いていても面倒なのですが、読む方はもっと面倒でしょう。こういう時にこそ図を使うべきですね。

さて、必ずしもテキストの流れの中に図がしっかり組み込まれているケースばかりではないので、あまり神経質になる必要はないかもしれませんが、視線が画面上で交錯してわずらわしいと感じさせるような混乱は避けるべきです。スムーズな視線移動という意味で理想的なのは「本文、図ともに横組み」というパターンでしょう。前に書いた通り、テキストでは左から右への視線移動を繰り返します。図も多くの場合、左上から右下に流れているため、本文に復帰する場合にも同じように読み続けることができます。

YokoYoko_Layout_A

これに対して、「本文が縦組みで図が横書き」の場合、テキストがページ下で終了すると、図の先頭である左上まで移動して図を読むモードに入らなければなりません。仮に図が右下で終了した場合は、図の左上のその先まで移動し、続きの本文が開始する箇所まで目を動かさなければなりません。

TateYoko_Layout_A

このような面倒なことになるため、私は横組み・横書き愛好者なのですが、ほかにも横書きを推奨する理由があります。私たちは基本的に水平方向に生きている動物であり、垂直方向というのは、私たちが否応無しに従わざるを得ない重力のせいもあって、どうも扱いにくいものです。上下関係や上位下達という言葉があるように、上と下との関係にはあらかじめ方向性が埋め込まれているような感じがします。それに比べれば水平方向には楽に動けるはず、と言いたいところなのですが、実は水平方向にしても枠や画面ということを考えると、左右均等ではないようです。

下の図を見てください。この斜めの線がスロープだとすると、これは上りでしょうか、それとも下りでしょうか?

 

Slope

ここまで横組みのテキストを見てきた私たちにとって、これを上り坂だと見るのは自然だと思います。ですが、縦組みのテキストの中にこの図が出てきたら、ひょっとして下り坂だと思ってしまうこともあるかもしれません。

さらに言えば、舞台には上手(かみて)と下手(しもて)という区別があります。客席から向かって舞台左側の下手には身分の低い役柄が置かれ、身分の高い役柄の人物は右側の上手に登場します。家屋のセットも、玄関は左側で座敷は右側となっています。

テレビの対談番組など、ツーショットの場面ではどうでしょう。ホストは画面のどちらに座っているかというと、先頃終わってしまいましたが、タモリ氏が司会を務めた『テレフォンショッキング』での彼の座り位置は右でした。『徹子の部屋』で黒柳徹子さんもやはり、右側に座っています。アメリカでは夜遅い時間にたくさんトークショウをやっていますが、ここでもほとんどのホストが画面右側に座ってゲストを迎えます。

しかし、この規則が全てに該当するというわけではありません。たとえばハリウッドスターが映画宣伝のために来日したとき、インタビューアが左側、スターが画面の右側に座るというのをよく見かけます。ただし、この場合はインタビューアよりも映画俳優の方が重要、つまり大事なものは右に置くという暗黙の文化にしたがっているからだと考えてもおかしくないでしょう。

なぜこんな一致が起こるのか。こう考えてみるとどうでしょう。文字を左から右に書く多くの横文字文化圏の人たちは書字の方向の影響もあり、左から右へと眼を動かすことに慣れています。それもあって、左のものは右に至って終わる、あるいは大事な結論は右側に置くのが自然だと思っているのではないでしょうか。そういえば、アラビア語やペルシャ語は横書きで文字を右から左に書くようです。あちらでは左右の重さをどのように考えているのか、興味深いところです。

さて、これらをふまえると左右で意識する必要のある要素が異なってくるということが分かるのですが、詳しくはまた次回お話したいと思います。

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今泉 洋(いまいずみ・ひろし)

1951年生まれ。武蔵野美術大学デザイン情報学科教授。武蔵野美術大学建築学科卒業後、建築の道を歩まず、雑誌や放送などのメディアビジネスに携わり、'80年代に米国でパーソナルコンピュータとネットワークの黎明期を体験。帰国後、出版社でネットワークサービスの運営などをてがける。その後、フリーランスとなり'99年デザイン情報学科創設とともに着任。新たな表現や創造的コラボレーションを可能にする学習の「場」実現に向け活動している。

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