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⑤自動運転車と連動するモーテルと住宅

2017.03.10

Updated by Shinya Matsuura on March 10, 2017, 13:11 pm UTC

自動運転車は電気自動車またはプラグイン・ハイブリット車として普及する

自動運転車は、従来の自動車と比べると住居としての性格が強くなる。が、車体サイズが住居ほど大きくなるのは非現実的であるし、電気・ガス・給排水のすべてのリソースを車体の中に抱え込むのも困難だ。走行中はともかくとして、停車中はリソースを外部に求める必要があるだろう。つまり、自動運転車は、自動運転車の存在を前提とした新しい建築物が必要だ。自動運転車と“協力する”建築物だ。そのような建築が社会に普及すれば、自動運転車はより一層便利に使えるようになるだろう。

自動運転車は、まず間違いなく動力系の制御が容易な電気自動車、またはプラグイン・ハイブリッド車となるだろう。となると、まず自動運転かどうか以前に、充電のインフラの充実が普及の鍵であり、現在既に充電ステーションの設置は進んでいる。また、自動車に充電プラグを差し込むのではなく、外部から電磁誘導を使って無線で充電する研究も行われている。無線充電が実用化すると、自動車を駐車させただけで即充電が可能になる。

自動運転車を対象としたモーテルが新しい旅のあり方を開拓する

このことを念頭に、まずモーテルについて考えてみよう。モーテルとは、モーターとホテルの合成語で、自動車の利用を前提とした宿だ。現状のモーテルは、自動車で直接部屋まで乗り付けることができるというものだが、自動運転車を前提とすると、どのようなモーテルが考えられるだろうか。

すぐに考え得るのは、自動運転車の内部に宿泊するという構成だろう。ガレージの様な1両ごとの屋内に車両を止める。その上で外部から電気を供給し、空調は車両側設備にまかせる。電気駆動の車両ばかりになれば、施設内が排ガス臭くなることもないだろう。

空調の熱効率、すなわち建屋の断熱性を無視すれば、車両を屋外駐車させるというのでもいいだろう。その分宿泊料金は安くすればいい。外部設備としてはバスとトイレがあればいい。各ガレージ毎にバス・トイレがあってもいいし、安下宿のような共用バス・トイレでも構わないだろう。自動運転車が、カプセルホテルにおけるカプセルの役割をするわけである。

その利点は、インフラの機能の一部を自動運転車が引き受けるので、建設コストが安く済むことだ。それだけ宿泊料金も安くなる道理である。高速道路のサービスエリアや、道の駅などに併設すれば、大変便利だろう。自動運転車だけではなく、テント持参のバックパッカーも受け入れれば、新たな旅のありかたを開拓できるかも知れない。

前回、「自動運転車が実現したとしても、当初から快適なノマド生活ができるのは、あまり物を持たず、子どもも持たない家庭に限られるだろう。と書いた。が、このような施設が充実すれば、少し大きな、例えばトヨタ・ハイエースぐらいのサイズの自動運転車なら、施設を渡り歩くノマド的生活を営むのは、難しくないだろう。移動の利点を満喫しつつ、かなり快適な生活が可能になるはずである。となると、ウィークリー・マンションのように、自動運転車向けの施設を、やや長めに貸す、長期滞在用施設も考え得る。もちろん、自動車の中の生活に飽きたり、息苦しさを感じるようになったりしたら、通常のホテル・旅館に宿泊すればいい。

切り分けられる自宅の一部にもなる

宿泊施設ではなく、自宅を自動運転車と一体化することも考え得る。駐車時にリアゲートを自宅とつないで、一室として利用するのだ。オーディオのリスニングルームのような趣味の部屋としは、かなり使い勝手が良いのではなかろうか。ワンルームマンションのような狭い賃貸住宅ならば、「自動車を持ってきたら寝室として使っていいよ」というような建物の設計も考えられる。部屋は荷物で一杯だが、自動車車内はモノがないので、地震の時に安全、という使い方はどうだろう。

今でも自動車のトランクを自宅の倉庫代わりに使う人がいる(自動車が重くなって燃費や走行性能が悪くなるので、あまり良いことではない)。その延長線として、自動車の車内をシームレスに自宅の一部として使うわけだ。

この場合、「どの自動運転車でも」というのは難しいかもしれない。自動車と住宅が、かっちり組み合う必要があるからだ。例えばトヨタホームが、トヨタ車に対応した住宅を発売するというように、自動車と住宅をまとめて供給できる事業者が商品化することになるのだろう。さらに、本格的な普及には接続部の規格化が必要になるだろう。

このような宿泊施設、あるいは住宅を実現させるためには、相応の法制度が必要になる。どこまで先回りして適切な法制度を整備できるかは、自動運転という新技術が、社会でどれほど便利に使えるものになるかを決める重要な要素である。

“自動運転車と協力する建築物”がなくとも、居住性を高めた自動運転車には、緊急時・被災時の仮の住宅という機能を持たせることができる。この問題は、かなり大きなトピックなので次回、本格的に扱うことにする。

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松浦晋也(まつうら・しんや)

「自動運転の論点」編集委員。ノンフィクション・ライター。宇宙作家クラブ会員。 1962年東京都出身。日経BP社記者を経て2000年に独立。航空宇宙分野、メカニカル・エンジニアリング、パソコン、通信・放送分野などで執筆活動を行っている。自動車1台、バイク2台、自転車7台の乗り物持ち。