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[2015年第38〜39週]スマートグラスで野球観戦、Beaconの活用範囲が広がる、ドコモは11月に300Mbpsへ

2015.09.29

Updated by Naohisa Iwamoto on September 29, 2015, 11:46 am JST

シルバーウイークを挟んだ2週間だったが、新型iPhoneの発売といったコンシューマ向けの話題だけでなく、IoTからサービス、技術など各方面でトピックが多かった。

ウエアラブルやBeaconなどIoT関連の話題が続々

まず、IoT関連のトピックから紹介する。北海道日本ハムファイターズとセイコーエプソンは、共同で「スマートグラスを使った野球観戦」システムの開発を行い、9月22日に札幌ドームで開催された「日本ハムファイターズ vs ソフトバンクホークス」の試合でトライアル実施を行った。

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実験に参加したのは、日本ハムファイターズ所属の陽岱鋼(ようだいかん)選手の応援に来日した台湾人観客。エプソン製スマートグラス MOVERIO BT-200を使用し、選手情報や投球カウントなどの試合情報を台湾語で目の前に表示した(関連記事:札幌ドームで台湾人観光客向けにスマートグラスを使った野球観戦、ファイターズとエプソンがトライアル)。

Beaconで高精度な屋内測位を実現する技術を、DNPデジタルコムと岩手県立大学が共同で開発した。両者は、この技術をスマートフォンアプリに組み込むためのソフトウエア開発キット(SDK)も販売する。ナビゲーションアプリに高精度測位の機能を組み込むSDKで、吹き抜がある空間や入り組んだ形状の建物内でも高精度に測位できるほか、移動する方向を特定することも可能だ(関連記事:複数のBeaconで高精度に屋内位置を測定、DNPデジタルコムと岩手県立大が共同開発)。

同じくBeaconの話題。アプリックスIPホールディングスは、防塵、防水、難燃性能を備えた全天候型ビーコンの提供を開始した。強化型の「MyBeacon MB901 Ac」がそれで、同時に東京メトロに採用されたことをアナウンスした。

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「MyBeacon MB901 Ac」は、屋外広告や案内版など風雨にさらされる条件での設置に対応する防塵、防水性能と、公共施設などに設置する際に求められる難燃性を備え、ビーコンの利用範囲を広げられる(関連記事:アプリックスが全天候型ビーコンを提供開始、東京メトロ東西線の保守に採用)。

個人向けのIoT製品の発売のニュースもあった。ソフトバンク コマース&サービスは、ドイツ・エルガト システムズ(Elgato Systems)のワイヤレスホームセンター「Eve」シリーズの製品をSoftBank SELECTIONを通じて国内で発売した。Eveシリーズは、米アップルのApple Homekitに対応した製品で、国内でApple Homekit対応製品は初めての販売になるという。販売するのは、屋内で利用する「Eve Room」と屋外の利用を想定した「Eve Weather」の2モデル(関連記事:iPhoneで温湿度などをモニタリングできるセンサー「Eve」、SoftBank SELECTIONから発売)。

訪日外国人向けWi-Fiやデュアル回線2など多様なサービスが展開

新規サービスの展開のニュースも相次いだ。NTTドコモは、法人企業等による訪日外国人向けサービスや商品販売支援を目的として、法人企業向けに「docomo Wi-Fi for visitor」サービスをトライアル提供する。具体的には、「docomo Wi-Fi for visitor」のアカウントに引き換えが可能なクーポンコードをドコモから法人企業に提供し、各法人企業はノベルティやキャンペーン等の一環としてクーポンコードを活用する。

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クレオ、全日本空輸、ナビタイムジャパン、バーニーズ ジャパン、ブリックス、KNT-CTホールディングスが本トライアルを活用した訪日外国人向け施策を実施する予定だ(関連記事:ドコモ、訪日外国人向けサービス提供企業に「docomo Wi-Fi for visitor」クーポンコードを提供するトライアルを開始)。

NTTドコモのサービスの話題をもう1つ。NTTドコモは、2015年7月に開発した手書き文字やイラストで意思を伝える翻訳サービス「ひつだん翻訳」を「てがき翻訳」へと名称を変更し、Androidスマートフォンやタブレット向けに無料トライアルサービスを開始した。11月30日まで、東京国際空港ターミナル(羽田空港)と協力し、訪日外国人を対象とした案内の充実を目的に、羽田空港国際線旅客ターミナルのコンシェルジュが常駐する案内カウンターに「てがき翻訳」を導入し、実証実験を行う。日本に到着したばかりの訪日外国人に、「てがき翻訳」を用いて、滞在予定先への行き方や、地図を描いて空港内の施設案内などを行う(関連記事:NTTドコモ、「てがき翻訳」のトライアルサービスを提供開始:羽田空港で実証実験)。

モバイル通信サービスの信頼性を高めるサービスも提供が始まった。NECは、モバイル回線の電波状況を判断して、2つの回線を自動的に切り替える「デュアルモバイル回線サービス」の販売を開始した。新サービスが利用する回線は、NECが提供する法人向けのモバイル回線サービス「モバイルクラウド(MVNO)サービス」のau回線と、BIGLOBEのドコモ回線。これらを、ワイヤレスVPNルーターの「UNIVERGE WA1511」または、無線LANアクセスポイント付きVPNルーターの「UNIVERGE WA2611-AP」と組み合わせて利用することで、2キャリアの回線を自動的に切り替える冗長化が可能になる(関連記事:NEC、auとドコモの2回線で冗長化した「デュアルモバイル回線」を提供)。

300Mbpsへの高速化からセキュリティまで今後の技術や事業展開

技術や今後の事業展開に関連するトピックを紹介する。NTTドコモは報道関係者向けにネットワーク説明会を開催した。プレゼンテーションは同社取締役常務執行役員の大松澤清博氏。PREMIUM 4Gの下り最高速度262.5Mbps化に合わせ、4つの周波数を組み合わせた4通りのCAについて高度化C-RANを導入して制御する。また、2015年11月には800MHz帯、1.5MHz帯、2GHz帯の3キャリアを束ねて下り最高速度300Mbpsのサービスを開始することを説明した(関連記事:NTTドコモ、高度化C-RANの運用を開始、2015年11月には300Mbpsサービスを提供)。

情報通信研究機構(NICT)は、横河電機、京都大学と共同で、電力、ガス、水道などの重要インフラ制御システムのネットワークの健全性を確認するためのトラフィック分析・可視化技術を開発した。この技術により、重要インフラ制御システムのマルウェア感染等の早期発見が可能になる。今回開発した技術は、インフラ制御ネットワークの特徴である「システム内を流れるトラフィックの種類は限定されており、正常状態を把握しやすい」という点に着目して開発された(関連記事:ネットワーク可視化で電気、ガス、水道等インフラ制御システムのインシデントを検出する技術、NICTなどが開発)。

エリクソン・ジャパンは、エリクソンの日本法人の設立30週年を記念したイベント「Networked Society Day」を開催し、併せて記者説明会を実施した。同社では8月3日付けでマイケル・エリクソン氏が代表取締役社長に選任され、これまで代表取締役社長を務めてきた野崎哲氏とダブル社長体制を採る。

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説明会では、2020年に向けた事業戦略として、エリクソン氏がグローバルの方針を中心に、野崎氏がエリクソン・ジャパンの方針を中心に説明した。特に、エリクソン・ジャパンの日本市場における取り組みについては、“日本から世界へ”を目指していることをアピールした(関連記事:最先端市場“日本”で得た知見を世界に発信--エリクソン・ジャパンの戦略説明会)。

iOS 9が公開、iPhone 6s/6s Plusも発売

最後に、iOS 9の公開と新型iPhone関連の話題を紹介する。

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MVNO各社は9月17日に公開されたiOS9についての動作確認結果を公表している。主要MVNOの状況は、NTTドコモの回線を利用しているMVNOでは、多くのケースで最新の構成プロファイルを利用するなどによって対応が可能とアナウンスされている(関連記事:iOS9へのMVNO対応状況)。

一方、KDDIの回線を利用するサービスを提供するケイ・オプティコムも、iOS 9を搭載した端末におけるmineoの動作確認結果を公表した。iOS 9でmineoを利用できない組み合わせは、auプラン(Aプラン)においてSIMフリー端末またはauブランド端末のiPhone 5s、iPhone 5cを使う組み合わせ。このプランと端末の組み合わせでは、iOS 9、iOS 8ともに利用できない。auブランド端末でもiPhone 6/6 PlusではiOS 9で利用が可能、ドコモプラン(Dプラン)を利用する場合は、SIMフリー端末およびドコモブランド端末で利用が可能ということだ(関連記事:mineoがiOS 9で動作確認、auプランのiPhone 5s/5c以外は利用可能)。

iPhone 6s/6s Plusは2015年9月25日に、予定どおり発売された。それに伴い、NTTドコモは、5分以内の国内音声通話を回数制限なく利用できる音声通話定額プラン「カケホーダイライトプラン」を9月25日に提供開始した。時間、回数の制限なく国内音声通話が無料になる月額2700円の「カケホーダイプラン」よりも1000円安く、月額1700円で提供する。KDDIが先鞭を付け、ソフトバンクが翌日に追従を発表した「1700円プラン」は、ドコモも追従することで主要3キャリアが横並びで提供することになった(関連記事:ドコモも月額1700円の「カケホーダイライトプラン」を提供へ、3社横並びに)。

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岩元 直久(いわもと・なおひさ)

日経BP社でネットワーク、モバイル、デジタル関連の各種メディアの記者・編集者を経て独立。WirelessWire News編集委員を務めるとともに、フリーランスライターとして雑誌や書籍、Webサイトに幅広く執筆している。