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拘置所

米トラヴィス郡の「塀の中とのライブチャット」中止される

2015.10.21

Updated by Kenji Nobukuni on October 21, 2015, 12:09 pm JST

逮捕されて裁判を待つ間、拘置所(jail)に収監されている被疑者にとって、家族との面会は外界との数少ない接点だ。アメリカの拘置所は地方自治体(多くはカウンティ)が運営していて、多くの場合、地域の財源にするため面会する側の家族が料金を支払わなければならないようだ。しかし、保釈金を払う経済的な余裕がないからと言って、裁判を待つ間の被疑者が家族と会う機会を奪われたり、家族が高額な料金を強いられたりするのは人権上の問題とも言える。

テキサス州オースティンのトラヴィス郡は、拘置所に2013年にライブチャットを使った面会を導入した。ダラスのSecure Technologies社が開発したSkypeのようなシステムで、家族は1分1ドルの料金を支払って、画面を通じて面会する。これによって、従来の面会室で柵を挟んで会うというテレビや映画でおなじみの面会は廃止された。

拘置所の中で被疑者を移動させるのにはリスクが伴うし、面談は禁制品の手渡しなどの恐れもあるなど、トラヴィス郡はシステム導入の理由をセキュリティ上の課題に対応するためだと説明してきた。

だが、9月にフェイス・トゥ・フェイスの面会を復活させる予算が承認された。再開する面会室などの設備や人員にかかるコストを認めたわけだ。

直接の面会は、被疑者にも家族にも画面越しの会話とは比べものにならない安心感を与える。面会の機会があれば、仮に裁判で有罪となっても再犯率は面会がなかった人と比べると低いという研究もあるらしい。通信を使うと、被疑者と弁護士の会話が盗聴される恐れもあるわけで、実際にこうした事例はあるようだ。

アメリカの場合は特に拘置所の運営も資金繰りの観点が非常に重要になっている。直接の面会にせよビデオ面会にせよ、財源となり得る以上、当事者の精神的な負担だけでなく、収入源としても見なければならない点が難しい。トラヴィス郡では、面会再開に当たっての予算は年間70万ドルに及ぶという。

【参照情報】
Travis County will go back to in-person jail visits
Travis County Approves $951M Budget; Face-to-Face Jail Visits Passed
Face-to-Face: Will in-person visitation return to Travis County Jail?

WirelessWire Weekly

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信國 謙司(のぶくに・けんじ)

NTT、東京めたりっく通信、チャットボイス、NECビッグローブなどでインターネット関連の事業開発に当たり、現在はモバイルヘルスケア関連サービスの事業化を準備中。 訳書:「Asterisk:テレフォニーの未来