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紙に記憶される旅

2015.11.28

Updated by Ryo Shimizu on November 28, 2015, 11:36 am UTC

 先日の西日本一周旅行の記録を敢えて紙に印刷して一冊の本にしてみました。

 Macに標準でついてくる「写真」アプリにはiPhoto時代からフォトアルバムを作成して注文する機能があり、筆者はどこかへ出かける度に写真集を作る習慣がありました。

 今回は久しぶりにそれを思い出してやってみたのです。

 人の記憶とは移ろいやすいもので、従って記憶を長く留めておくために外部の記憶メディアを必要とするのも無理のないことです。

 今年から筆者のクラスでは全く、Facebookを使わなくなりました。
 去年まではFacebookで授業の資料などを配っていたのですが、今年は学生が嫌がったからです。曰く、「Facebookなんかやってない」と。

 Facebookがないと学生たちのフィードバックが得られないため、筆者は筆者らが開発した匿名チャットシステムを授業でも活用してみることにしました。

 するとそれまでなかなか吸い出せなかった学生たちの感想をかなり容易に引き出すことができるようになりました。

 さらに、授業外の質問まで受け答えできるようになりました。

 常にあちこち飛び回る必要のある筆者には、チャットはもはや非常に重要なツールとなっています。

 しかしふと疑問にも思いました。
 彼らは大切な思い出をどこに保存しているのだろうか、と。

 筆者のFacebookページのアルバムは、基本的には思い出を留めておくためのページになっています。

 どこかへ出張に行ったとか、こんな美味しいものを食べたとか、そういうことを写真に撮って、とりあえずオンラインに置いておくと妙な安心感があるものです。

 しかし、Facebookを使わない学生たちは、いったいぜんたい、どこに思い出の写真を保存しているのでしょうか。

 Facebookを積極的に使う我々のような世代は、昔から銀塩写真を現像してプリントしてアルバムに保管するという習慣がありました。

 筆者などは今でも時々、秋葉原のヨドバシカメラの1Fのプリンターでデジカメ画像を印刷して壁に飾ったりするほどです。

 しかし産まれた時から携帯電話に当たり前のようにカメラが搭載されていた今の世代は、思い出を保管したり振り返ったりする機会はあるのでしょうか。

 もしかしたらスマートフォンのアルバムに全ての写真を集約しているのかもしれませんし、私の知らない全く別のフォトストレージサービスを使っているのかもしれません。

 しかしふと、不思議だなあ、と思ったのです。

 筆者がFacebookを使うモチベーションは3つです。

 ひとつは連絡手段。
 Facebookは今やメールよりも遥かに到達性と確実性の高い連絡手段になりつつあります。

 リアルタイムかつ同時に複数人を相手にできる利便性は他の何者にも代えがたいものがあります。

 たとえば「来週イベントを組もう。ゲストは誰それさんと誰それさんがいい」と思ったら、電話するよりも先にFacebookで連絡をとってしまえば、ものの数分で決定することがあります。人間は音声情報を理解するよりも最初から記号情報になっている文字情報を理解するほうが簡単です。

 それは手書き文字を読むよりも活字を読むほうがストレスがないのと同じです。
 活字は記号化されています。記号化されているというのは、つまり人間の個性がそこに反映されていないということです。ですから記号化された状態のまま、別の人が受信することができます。要するにデジタルなわけです。

 ところが音声信号は個性があります。
 活字と違って、合成音声が世の中に溢れているわけではないので、情緒や抑揚といったものが未だに重視されます。

 抑揚のない合成音声を聞くのも疲れますし、そもそも単位時間あたりに送受信可能な音声言語は制約があります。これは音波が波であり、振動によってしか伝えられないからです。

 また、同じ内容を複数の人に同時に送ることができるのもFacebookによる連絡の利点です。

 さらにいえば、知らない人からいきなりメールが来たりしないというのもFacebookの利点です。

 煩わしい人がいればミュートするのも簡単です。

 Facebookを使うもうひとつの理由は情報収集です。
 Facebookでは様々な人が有用な情報をやりとりしています。

 Facebookで得られる情報はスマートニュースやニュースサイトそのものよりも精度が高く、情報の鮮度そのものと関係なしに興味深いことが多いのです。

 Facebookを使う最後の理由は、アルバムです。
 アルバムに写っている人物をタグ付けできる機能は非常に素晴らしく、相手にも通知することができます。

 つまりFacebookにおいてアルバムを作ることは一種のコミュニケーションを形成しているのです。

 けれども最近は確かにFacebookのアルバムも以前ほどは使わなくなってきました。

 
 あまりにもアルバムを作りすぎて閲覧性が悪くなってきたためです。

 昔の写真を見ようと思ってもなかなか出てこない。
 かといってGoogleフォトはそれはそれでやり過ぎです。

 なかなかいいバランスのものがないものですね。

 その点、紙に印刷すると、なんというか、これはこれでいかにもコレクションしたなあという感じがあります。

 そして一番いいのは、一緒に旅行にいった仲間に紙のアルバムをプレゼントするととても喜んでもらえるということです。

 Facebookのアルバムでは、相手と疎遠になったり喧嘩したりしてしまったとき、一方的にデータが消えてしまいます。けれども紙のアルバムは消えません。

 また、昔の旅行の写真を電子的に持っていても、探すのが大変です。
 実際、筆者は10年以上に渡る某大な写真データをとりあえず保管はしていますが、探すのはほんとうに大変で、だいたいは途中でめげてしまいます。

 その点、紙のアルバムは物理的なサイズがあるので、まとめておけばまずなくしません。

 引っ越しを繰り返したせいで色んな物をなくしたけど、高校の卒業アルバムだけは実家にとってある。そんなイメージです。

 この機能があることが以前ほど強調されていないので、意外と知らない人が多いのですが、一度作ってみるとやみつきになる機能です。

 1300円から作れます

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清水 亮(しみず・りょう)

新潟県長岡市生まれ。プログラマーとして世界を放浪した末、 '17年にソニーCSLとWiL LLC.とともにギリア株式会社を設立し、「ヒトとAIの共生環境」の構築に情熱を捧げる。 '17年より東京大学先端科学技術研究センター客員研究員を兼務。著書として「教養としてのプログラミング入門(中央公論社)」「よくわかる人工知能 (KADOKAWA)」「プログラミングバカ一代(晶文社)」など。

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