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家庭内のIoTをもっと使いやすくするフレームワーク「AllJoyn」とは

2015.11.27

Updated by Naohisa Iwamoto on 11月 27, 2015, 21:13 pm JST

ネットワークに接続可能なコネクテッドデバイスは、今後増加して家庭内の機器もIoT化の恩恵を受けるようになるだろう。しかし、一方でIoT対応デバイスの増加は、利便性をもたらすと同時に、混乱の源になるリスクもある。炊飯器、冷蔵庫、エアコン、空気清浄機、給湯器などがIoTに対応したとき、ぞれぞれが異なる通信手段やOS、別々の専用のアプリを使っていたらどうだろう。利用者はIoTデバイスを扱うために、スマートフォンの専用アプリや、パソコンソフト、自宅に備え付けの操作パネルなどを選択して、操作する必要が出てきそうだ。

こうした混乱を避けて、コネクテッドデバイス同士のスムーズな機器連携を実現するためのフレームワークが「AllJoyn」だ。AllJoynは、The Linux Foundationの協調プロジェクトである「Allseen Alliance」が提供するオープンソースのフレームワーク。元々の技術開発はクアルコムによる。現在までにAllseen Allianceにはクアルコムをはじめ、キヤノン、エレクトロラックス、ハイアール、LG Electronics、マイクロソフト、パナソニック、フィリップス、シャープ、ソニーなど、185社を超える世界を代表する企業が名を連ねている。

▼IoT Technology 2015のクアルコムブースの「AllJoyn」の展示。対応機器が並び、デモを行った20151127_alljoyn001

このAllJoyn、海外ではデモなどを通じて体験する機会もあったが、国内ではなかなか触れるチャンスがなかった。そうした中、2015年11月18日から20日に開催されたIoT Technology 2015 総合技術展(主催:組込みシステム技術協会)のクアルコムブースでは、Allseen Allianceの紹介とAllJoynのデモを見ることができた。国内の一般向けのイベントでAllJoynのデモを行うのは初めてとのことだ。

近接のことはクラウドを介さず近接で完結

説明に当たったクアルコム ジャパンの標準化担当部長の内田信行氏は、「IoTの機器開発はすべてを自前でやろうと思うと大変です。一方で異なる機器でもIoTで求められる要素には似た部分もは多く、Allseen Allianceではそうした共通部分をオープンソースのIoTフレームワークとして用意しました」とAllJoynの位置づけを語る。共通した機能をライブラリとして用意し、オープンソースとして提供することでIoT機器やアプリの開発を容易にするわけだ。

AllJoynの特徴は、「近接の通信にクラウドを介さず、機器が相互に接続して機能を提供する」ことで、「メーカーや製品の違いによらず、すべてのモノをつなげる」ことだ。内田氏は、「現在のIoTやIoE(Internet of Everything)はクラウドベースで、メーカーや製品ごとのサービスを利用する形態です。OSや通信手段などの違いもあり、なかなか相互に連携するのは難しいのが現実です。一方AllJoynでは、家庭内にあるデバイスの情報をわざわざクラウドを経由してデータ活用するのではなく、近接した機器同士が連携することでサービスを提供できます」と説明する。

AllJoynのライブラリを利用することで、メーカーや製品による違いを吸収し、IoT機器を相互に接続できるようになる。AllJoynのライブラリは、OSや通信の物理層の違いに依存しないため、異なるプラットフォームを採用している製品を相互につなぐことが可能だ。冷蔵庫とテレビがやり取りできるようになれば、冷蔵庫のドアが開けっ放しになっていることを、リビングのテレビを通じて知らせることができる。コーヒーが湧いたことは、音楽を聞いている自室のスピーカーが知らせてくれる。こうした家庭内の機器が相互に連携したサービスが、手軽に利用できるようになるのだ。

AllJoynでは、ソフトウエアフレームワークを3階層のモデルで構成している。中核になるのが、「AllJoyn基本ライブラリ」で、AllJoynの機能を実現するための機器を見つけて接続し、イベントに対するアクションを制御するほか、アクセス制御、暗号化などの機能をAPIとして提供する。その上位層に、各種の機器にAllJoynを使った機能を提供する「AllJoynサービス フレームワーク」が用意され、さらに最上位の「AllJoynアプリケーション層」でユーザーインタフェースを定義する。AllJoynのフレームワークには、ターゲットとなるデバイスにより、フルの機能を提供する「標準フレームワーク」と、リソースなどに制約があるデバイスに向けた「Thin(シン)フレームワーク」を用意し、適用できるデバイスの範囲を広くした。

▼機器を連携させた動作は、ストーリーを記述することで簡単に指定できる20151127_alljoyn002

機器同士が連携したサービスは、ストーリーを記述することで指定できる。デバイスからの通知を受けて、どの機器にどのようなアクションを起こすかを定義するもの。「レシピ」でWebサービスなどを連携する「IFTTT」が、リアルの機器で利用できるようになった世界を想像するとわかりやすいかもしれない。AllJoynに対応していないIoT機器などに対しては、「AllJoynデバイス・システム・ブリッジ(DSB)」が仲介することで差異を吸収する。現時点では「Z-Wave」「BACnet」に対応、今後は対応プロトコルの拡張を目指す。また、遠隔制御やクラウドサービスとの連携を実現するために、家庭の外のネットワークと接続する「AllJoynゲートウェイ・エージェント」も用意する。承認されたトラフィックだけがゲートウエイを介して外部ネットワークとやり取りできる形態だ。

デモでは、スマートフォンや照度センサー、LEDライト(を模したスマートフォンアプリ)、スピーカーなどを使って、機器間の連携が手軽に行えることを示していた。照度センサーとLEDライトの間に、「暗くなったらLEDライトを点灯」「明るくなったらLEDライトを消灯」というストーリーを用意しておくことで、センサーに手をかざすなどして明るさを変化させるとLEDライトが点灯、消灯するデモを実際に行った。内田氏は、「すでに海外ではAllJoyn対応のテレビや空気清浄機、パナソニックからはワイヤレススピーカーなど、製品が続々と登場している。すべてのEditionのWindows 10がAllJoynに対応したことも後押しになる」と説明。国内での今後の普及に期待を寄せる。

▼手前の照度センサーに手をかざすことで、LEDライトを模したスマートフォンアプリが点灯したところ20151127_alljoyn003

AllJoyn機器やアプリ開発が容易にできる開発ボードが国内発売

AllJoyn対応のIoTデバイスを開発するための開発ボード「DragonBoard 410c」の展示、デモもあった。クアルコムのSnapdragon 410プロセッサを搭載したボードで、国内ではアロー・ユーイーシー・ジャパン、チップワンストップが販売する。11月16日に注文の受付を始めたばかりということで、来場者の関心も高く引き合いも多いと言う。

▼開発ボード「DragonBoard 410c」。右側が製品、左側はSnapdragon 410などのプロセッサを見えるようにした状態20151127_alljoyn004

DragonBoard 410cはAndroid、UbuntuベースのLinux、Windows 10 IoT Coreが動作する開発ボード。カメラのキャプチャー機能、Wi-Fi、Bluetoothのアンテナも含めた通信機能、GPSなどの機能をあらかじめ用意する。40ピンの低速(LS)拡張コネクタ、60ピンの高速(HS)拡張コネクタを備え、各種のセンサーや機器の接続が可能だ。Windows 10 IoT CoreはAllJoynに対応するため、AllJoyn対応の環境を手軽に作ることができる。

また、現時点ではAllJoynとの直接の関連はないものの、会場のクアルコムブースにはBluetooth Low Energy(Bluetooth Smart)機器をメッシュ接続するプロトコルの「CSRmesh」の展示、デモもあった。通常は1対1の接続となるBluetoothを、対応機器間でメッシュ接続できるようにするもの。複数の機器を連携させてコントロールできるようになるほか、メッシュ網でメッセージをリレー転送することで機器間の到達距離を大幅に拡張できるものだ。様々な機器が相互に接続してIoTのメリットを生み出すAllJoynと親和性の高い技術であり、現時点ではゲートウエイを介する形でAllJoynとの連携が実現可能との説明があった。

▼BLE機器をメッシュ接続する「CSRmesh」のデモ。BLE対応のLEDライトの色をまとめて緑色に変えたところ20151127_alljoyn005

様々な機器が新旧取り混ぜて使われている家庭内のIoT化は、単一の仕組みを整備しただけでは容易に進まない。AllJoyn は、AllJoyn対応機器同士を簡単に連携させるだけでなく、それ以外のIoT機器も連携させてサービスを提供できる仕組みとして、家庭内IoTの普及を後押しすることにつながりそうだ。

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岩元 直久(いわもと・なおひさ)

日経BP社でネットワーク、モバイル、デジタル関連の各種メディアの記者・編集者を経て独立。WirelessWire News編集委員を務めるとともに、フリーランスライターとして雑誌や書籍、Webサイトに幅広く執筆している。