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プリコグが犯罪を予知する世界に残る “指先のジェスチャー”は、市民権を獲得しつつ進化中

想像する映画,創造する技術 #4

2015.12.04

Updated by Masato Yamazaki on 12月 4, 2015, 17:00 pm JST

2007年のiPhone発売から8年がたち、スマートフォンはすっかり身近な存在となった。ビジネス利用から始まりコンシューマへ波及するといったIT技術活用のトレンドは完全に逆転し、コンシューマ利用で磨かれたデバイスであり、アプリケーションにセキュリティを追加してビジネスで利用するという流れが主流となっている。しかし、ITベンチャーを除く大企業の多くは、この流れに乗れていない。結果、大企業のIT環境は、個人と比べると、ひどく使い勝手の悪いものになってしまった。

クラウドサービスも、コンシューマは生活の一部として無意識に活用しており、ローコストハイリターンを謳歌しているのに対し、企業はその恩恵を受けきれていない。少なくとも2020年の東京オリンピックまでは、体育会系のIT活用は続くと予想され、市場の変化に柔軟な消費者と企業のIT環境は、ますます差がつくと思われる。

体育会系といえば、2054年の未来を描いた『マイノリティ・リポート』(2002年公開)は、未来技術が満載であるにも関わらず、運動量の多い映画である。本作に限らず、SF映画では全般的に、未来技術を人間っぽく使ったり、ヒューマンドラマ色が強かったりと、どこか人間味を意識した演出がされている。これは未来に対する期待であり、畏れであり、人間に対する敬意なのではないだろうか。

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(C) 2015 Twentieth Century Fox Film Corporation. All rights reserved.

『マイノリティ・リポート』に登場する象徴的ユーザインタフェースであるジェスチャーインタフェースもそのひとつである。予知能力者が犯行の予知を部分的にイメージした映像をディスプレイに投影し、捜査官がセンサー付きの手袋を使ってジェスチャーで完全な映像に組み立てていくシーン(3分30秒)は、クールに見えるが、他のシステムに比べると、いささか情緒的である。本作では、脳波から意思や映像を抜き取る理想的な技術が確立されているにもかかわらず、主人公は、なぜか体を駆使したジェスチャーインタフェースを用いて多画面をコントロールしている。これは映画公開当時、この動きに倣うことが、ちょっとした流行りだったからであろう。

とはいえ、それは2054年の予知システムと比べての話であり、現在でもジェスチャーインタフェースは発展途上にあり、進化し続けている。映画のシーンを体現するシステムとしては、MITの石井裕教授の研究室や、マイノリティ・リポートの科学技術アドバイザであるジョン・アンダーコフラーの取り組み「g-speak」が有名であり、TED2010の映像で、まさに映画そのもののデモンストレーションを観ることができる。

この映像を観る限り、ジェスチャーインタフェースは、未来のユーザインタフェースを予見させるワクワク感があるし、感動的な美しさがある。しかし、一定の空間が必要だったり、パントマイムなみの細やかな動きが求められるため、万人向けとは言い難い。万人向けには、ゲームやプレゼンテーションなどが主な用途ではあるが、多数の製品が発売されている。wii(2006年発売)、Kinect(2010年発売)、Leap Motion(2012年発売)などがよく知られているし、筋肉を動かすと発生する電気パルスを読み取る、ジェスチャーコントロールアームバンド「Myo」(2013年発売)など、いずれも気軽にAmazonで購入できる。

そ して、最も身近なジェスチャーインタフェースはスマートフォンの操作方法であるマルチタッチであろう。タッチスクリーンを必要とするため、若干、広義ではあるが、いつでも、どこでもという点では、他のジェスチャー製品よりも自由度が高い。そして、iPhone6Sで登場した3D Touchにより立体的な表現も加わり、インプットの幅がさらに広がっている。

オーケストラの指揮を彷彿とさせる魅せるジェスチャーに圧倒されているうちに、指先のジェスチャーは一気に市民権を獲得した。キーボードはプロユースになりつつあり、キーボード付きのコンピューターを持っていると「体育会系だね」と言われる日は近い。そして、脳波によってあらゆるものがコントロールが可能な時代は、すぐそこまで来ているであろう。脳波による草食系システムと、人が介在すらしないAI。どちらが理想なのだろうか。また、どちらが先に到来するのであろうか。それとも両者とも社会の脅威となるのであろうか。私のような旧式には、およそ想像がつかないが、MITの石井裕教授が、ラボでの卓球にこだわられている姿が、答えに近いのかもしれない。

マイノリティ・リポートの作品情報はこちら

【参考】
TED2010 ジョン・アンダーコフラーが示すユーザインタフェースの未来
Kinect
Leap Motion
Myo
ほぼ日刊イトイ新聞 石井裕先生の研究室。

【協力】
シネマクエスト-全国の上映館スケジュールが検索できる映画情報サイト
http://cinema.co.jp/

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山崎 雅人(やまざき・まさと)

通信会社社員。まじめに通信の未来を考えるかたわらで、IT初心者、小規模事業者のみなさまに気軽にITを活用して頂くための活動を推進しています。はじめてWEB経理通信Cloud Blogなども展開中。
※本文は個人としての発言であり、所属する会社等とは一切の関係を持ちません。