capture image: Gogoro's electric scooter of the future — CES 2015(The Verge)
心意気は「エネルギー関連企業」 - 元HTC幹部が創業した電動スクーター・ベンチャーの話
2015.12.08
Updated by WirelessWire News編集部 on December 8, 2015, 12:40 pm JST
capture image: Gogoro's electric scooter of the future — CES 2015(The Verge)
2015.12.08
Updated by WirelessWire News編集部 on December 8, 2015, 12:40 pm JST
元HTC幹部らが立ち上げた台湾の電動スクーターメーカー、ゴゴロ(Gogoro)の現況を伝えた記事がNTimesに掲載されていた(ゴゴロの取り組みについては文末の日本語記事なども参照いただければと思う)。
・Electric Scooters, and a Network - NYTimes
「電動スクーターとネットワーク」という見出しの付いたこの記事は、現在パリで開催中のCOP21に当て込んだものと思われ、「将来のエネルギー」という特集レポートのひとつとして掲載されている点が目を惹く。「ゴゴロは自社が『スクーターの会社』と呼ばれるのは好きでない」「自社を『エネルギー・サービス関連会社』と見なしている」などとする箇所が記事中に出てくるのも、そうしたことと関係していると思われる。
ゴゴロのホレス・ルーク(Horace Luke)というCEOは、「IT技術がコンテンツの分野を様変わりさせた。それと同様のことがエネルギー分野でも(IT技術をつかって)可能だと思う」などとコメントしている。電動スクーターの販売はあくまで手段に過ぎず、事業の目的は大気汚染防止にある、ということのようだ。
自動車やバイクから出る排ガスの大気汚染は台湾でも深刻で、空気中の「PM2.5」の濃度が上がると呼吸器系の病気で来院する患者の数が増える、といった調査結果もすでに出されているという。また「2ストローク・エンジンを積んだスクーターから出る排気ガスは、四輪車のそれと比べてはるかに多く、排ガス対策をするならまずは化石燃料で走るスクーターを減らさなくてはいけない」「これはアジアの多くの都市にもあてはまること」といった外部の専門家のコメントも引用されている。なお人口が約2300万人の台湾には、現在約1400万台のスクーターが走っているそうだ。
今年初めのCESで発表され、夏から市場に投入されているゴゴロの電動スクーターは、値段が2200ドルから2375ドル(米ドル)で、これまでに2000台以上が販売されたという。この数については従来型も含めたスクーター販売台数全体の約5%、という説明もある。また、ガソリン駆動式のスクーターからの買い換えには、ゴゴロから最高800ドル、それに台北市では市当局から約45ドルの補助金がそれぞれ出るといった話も載っている。
電動式車輌で避けて通れない充電の問題については、ゴゴロは交換式のリチウム・バッテリー(パナソニック製)を備えるスタンドを各地に設置することで対応。下掲のビデオからは、このバッテリーがプリンターカートリッジのように簡単に交換可能な感じも伝わってくる。NYTimesによると、このバッテリースタンドは現在台北市内外を中心に90箇所ほどあり、設置コストは1万ドル以下で、あとは電源とインターネット回線があればいいという。
また、このスタンド自体が4G接続でネットとつながっている、あるいは空になったバッテリーを充電スタンドに戻すとBluetooth接続で車輌の診断データがゴゴロのネットワークに送られる、さらに利用者はスマートフォンアプリで最寄りのバッテリースタンドがわかる、といったあたりは、スマートフォン・メーカー出身者ならお手のものかもしれない。
自国の半導体産業に関して中国勢の台頭を気にしている台湾政府が、ゴゴロに期待をかけており、同社が今年秋に行った資金調達では、政府の開発ファンド(Taiwan Development Fund)を通じて3000万ドルを投資。またバッテリー供給元であるパナソニックもこの増資に参加したといった話も書かれてある。
ゴゴロはこの増資完了時に、集めた資金をつかって欧州へ進出する計画を発表していたが、2016年前半に予定するアムステルダム(オランダ)進出はその第一弾。アムステルダムを選んだ理由については「現在世界でスマートシティといえば、真っ先に名前が挙がるのが同市だから(少なくともトップ3には入る)」などとするCEOの説明がある。
なお、同記事中には、GMやフォード(Ford)、ダイムラーベンツ(Daimler-Benz)といった各社が、自社をメーカーではなくサービス事業者と見なしはじめている、という一節もあり、「電動式の移動手段(electric-powered mobility)提供に関わる企業が固定型蓄電分野に参入するのは自然なこと」とするナヴィガント・リサーチ(Navigant Research)アナリストの見方も紹介されている。
【参照情報】
・CES:Gogoroはバッテリーレンタルの電気スクーター・システム―調達資金は1億5000万ドル - TechCrunch
・台湾ベンチャーが描く電池交換式スクーターの夢 - 日経BP
・バッテリーレンタル式電動スクーター Gogoro が出荷開始。スマホで電池交換予約やロック解除 - Engadget
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