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SurfaceBookを使ってみた

Microsoft Surface Book Review

2015.12.11

Updated by Ryo Shimizu on December 11, 2015, 09:32 am JST

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 それにつけても悩ましいのはSurface Bookです。

 Surface BookがMicrosoftの最近のハードウェアとしては最大級の野心作であることはもはや疑いようもありません。

 
 Surface、そしてSurface Proシリーズで確固たる評価を固めたMicrosoftは、ついにSurface Bookという本格的な2 in 1型コンピュータを売り出すことになりました。

 発売前から大人気で、アメリカでは数日で在庫が完売。残念ながら日本では未発売で、筆者は数々の幸運に恵まれ、サンフランシスコで最後の一台を手に入れることができきました。

 まず手に持った感触で最初に感じたのは「ゴツい」ということです。

 アルミニウムを削りだしたまんまのようなザラザラした質感にややひんやりとしたボディ。同じアルミニウム削り出しでも、滑らかな表面に仕上がっているMacBookと比べるとやや無骨な感じは否めません。

 キートップはさすがにプラスチックなので、おなじみの手触りなのですがややストロークが深く感じます。

 ノートパソコンとしてはごく普通の使い方ができます。

 特筆すべきは、セパレート型なので、右上の分離ボタンを長押しすると電気的な回路が働いてキーボードとディスプレイの接続が切断され、外せるようになることです。

 とりはずしたディスプレイ側こそが本体で、キーボード側はバッテリーと追加GPUという異色の構成になっています。

 キーボードを接続すると、キーボードに内蔵されたNVIDIAの強力なGPUが動作する・・・という触れ込みだったので、早速、比較的重めのグラフィックスデモンストレーションを動かしたところ、8fpsくらいしかでなくてひどくガッカリしました。ドライバを最新のものに変えようと思ってNVIDIAのページに行き、Surface BookのGPUの型番はなにか調べようとしましたが、なんと型番が割り当てられておらず、従ってどのドライバをダウンロードすればいいのか全く解らず困りました。

 でもNVIDIAのGPUといえば最近のディープラーニングでも注目されています。
 普通に持ち歩ける重さのノートPCで、手軽にディープラーニングができたらどれだけ楽しいだろうか。

 そう期待していざ使ってみようとすると、なんと300少しくらいしかCUDAコアがありません。

 今のデスクトップの最新GPUであるMaxwell世代のTITAN Xでは3000コア以上ありますから、これは10倍もの性能差です。

 300ちょっとのCUDAコアだと、さすがに用途も限られてしまいます。

 GPUをぶん回して深層学習させようと思ったら、かなり非力であると認めざるを得ません。

 
 帯に短したすきに長し。

 どうしたものかと思案していたら、そういえばSurface Bookにはペンが同梱されていることを思い出したのです。

 やや大振りになったSurface用のペンは、多面体で構成されており、以前よりはずっと握りやすくなっています。書き味も良好で、Apple Pencilよりも良いと評価する人もいるくらいです。

 ペンは磁石でボディにピタリとくっつくようになっていて、ある程度の距離ならずっとくっついてますが、やはり鞄の中ではちょっとした衝撃で外れてしまいます。

 iPad Proもそうなのですが、なぜペンを格納したり一緒に持ち歩いたりするための工夫があまりにもないんでしょうか。そういうものはサードパーティに任せっきりなのでしょうか。

 ちなみにSurface3やSurface Pro3では、ペンに同梱されているシールを使うことで本体にペンホルダーを追加することが出来ます。しかしこれはこれでいかにも不格好なのであまり評判が良いとは言えません。悩ましいところです。

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 Surface Bookは画面を裏返しにして、キーボード部分を単なる増設バッテリー兼外部GPUとして使うことも可能です。

 Surface Bookには既存のWindowsの様々な問題を解決したWindows10が搭載されているのですが、これがSurface Bookの佇まいとなかなか良く似合います。

 ようやくOSのルック&フィールと、PCのルック&フィールを統一するという意識がMicrosoftに芽生えつつあるとすればそれは歓迎すべきことでしょう。

 MacやiOSが嬉しかったのは主にそういうところだったはずです。

 ハードウェアをも含めた、ユーザーエクスペリエンスと世界観の提供。

 Surface Bookほど、Windows10の未来的なUIデザインがしっくりくる端末もちょっとめずらしいのではないかと思います。

 個人的にはWindows10の色使いは、歴代のWindowsシリーズの中でも最も好きです。

 ただしひとつだけ危険なことがあるとすれば、青を貴重として鋭角が目立つデザインは、好き嫌いが分かれそうだということです。

 また、Surfaceシリーズ以外の他のWindowsマシンのデザインと組み合わせると少し違和感が出る可能性があります。

 まあそのあたりは単なる慣れの問題なのかもしれませんが。

 個人的にはカラフルすぎたWindowsXP移行のデザインよりも、シンプルなデザインのWindows10の方がプロのための高性能な機械を触っている気がして安心感があります。

 そうして私はSurface Bookを結局どうしたか。
 なにしろ40万円近くする最上位機種です。

 さぞかし持ち歩いて自慢したりして減価償却するものとばかり思っていたら、これが最初の数日持ち歩いただけで、すぐにMacBookとiPadにもどってしまいました。

 同時期にiPad ProとApple Pencilも買ったのですが、結局MacBookAirとiPhone6s Plusを持ち歩く生活に逆戻りです。

 それにはいくつか私なりの特殊な理由がありました。

 ひとつは、私自身がUNIXでプログラムを書くことが多いこと。
 UNIXでプログラムを書く場合、OSそのものがUNIXであるMacの方が作業がしやすいというのがあります。

 今、AIのプログラミングはUNIXでやるのが普通ですから、当然ローカル環境でもやりたいと思うわけです。

 そして深層学習に関しては手元のマシンでやるよりはリモートに大規模・大容量のマシンを用意して遠隔アクセスする方が圧倒的に速くて便利なため、手元のマシンにはGPUは必要ないという感じです。

 もう一つは、私がかな入力を主力としていること。今のところアメリカでしか売っていないのでキーボードは当然のように英語キーボードしかありません。もちろん私はローマ字入力も相当なスピードで打てますが、それでもかな入力に比べると3割くらい遅くなってしまいます。

 そして最後のひとつは、ペンの使いみちがあまりにも思い浮かばないこと、です。

 もちろんWindowsマシンですから、One Noteを始めとしてペンを使うアプリは山程あります。場合によっては自分で作ればいいわけですし、それを想定しなくても相当数のペン対応アプリが存在しています。その点でいえばまだまだApple Pencil対応アプリの少ないiPad Proよりもずっと実用的だと言えるでしょう。

 ところが、絵を日常的に書くわけでもなく、単にメモをまとめたり、考えをまとめたりする私のような人間に適したアプリにはついにひとつも出会わなかったのです。

 また、汎用品であるが故に、メモをしている最中に誤って画面の端に触れると、Windows本体のメニューが出てきて邪魔をされるなど、問題点は多いです。この点に関してはiPad Proの方がはるかにマシです。

 色々試した結果、私にとってはノートPCとしても原稿書きマシンとしても手書きノートとしてもSurface Bookは使いづらい、という結論に達してしまいました。

 しかし頑なにSurfaceシリーズがペンに対応し続けるのは見事です。
 Microsoftの意地というか、ビル・ゲイツの遺言でも聞いたのでしょうか(まだ生きていますが)。

 OSを作っている会社が本体同梱で売っているというのに、これほどまでにシステム全体から無視されている周辺機器というのは奇妙です。

 まるでタッチパネルがついているのに一部のタッチパネル対応アプリでしかタッチで使えない、というくらいにはヘンです。

 いずれMicrosoftはこの矛盾を解決することにエネルギーを注ぐのでしょうか。
 とはいえ、Microsoft Surface登場から既に何年も経過しています。

 こうなるとなぜSurfaceシリーズにペンが付属するのか、本当に不思議ですね。

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清水 亮(しみず・りょう)

新潟県長岡市生まれ。1990年代よりプログラマーとしてゲーム業界、モバイル業界などで数社の立ち上げに関わる。現在も現役のプログラマーとして日夜AI開発に情熱を捧げている。

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