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VR百花繚乱!!最後に笑うのは誰か!?

The VR War Broke Out

2016.02.22

Updated by Ryo Shimizu on 2月 22, 2016, 10:08 am JST

Oculus

Oculus

 ついにVR戦争が勃発したようです。

 
 長年の準備期間を経て、満を持して登場するOculus(オキュラス)の製品版であるCV1の予約販売が1月7日にスタートし、先駆者としての意地を見せると、それを追うHTC Viveは日本時間では3月1日午前0時からプリオーダーを開始すると発表されています。

 Oculusの出荷は初回が3月28日で、価格は599ドル。日本で購入する場合は送料なども考慮すると10万円近い出費となるだけに、当初は「高い」と言われていた価格でしたが、HTC Viveはさらにそれを上回る799ドルと発表され、10万円超えは確実となる高額商品であることが改めて明らかにされました。

 さらにVRを快適に楽しむためには、高価なグラフィックボードを搭載したPCが必要になるため、フルセットで揃えると20万円オーバーは確実と言われています。

 HTC Viveも、Oculusも、それぞれ独自の三次元入力装置を備えていますが、Oculusの提供するOculus Touchの出荷は下半期に延期されてしまいました。

 これに対し、HTC Viveは、3月1日から予約開始で、4月1日からコントローラも含めて全て出荷するという対抗策を打ち出し、VR時代の覇権を誰が握るのか、にわかに盛り上がってきました。

 この盛り上がりを受け、去る2月20日、21日に秋葉原ではVRをテーマにした作品展「Ocufes(オキュフェス)」が開催され、21日にはやはり秋葉原のUDXカンファレンスで「VRまつり 2016冬」が開催されるなど、国内でもVRに対する注目度が飛躍的に高まってきました。

 国内でVRに積極投資を表明しているのは、コロプラとgumiの二社で、それぞれ「Colopl VR Fund」と、「Tokyo VR Startups」を設立。国内でも早くも局地戦が展開され始めています。

 そこで今回は、その2つのイベントに実際に乗り込み、最新のVRコンテンツを体験してきました。

 まず最初に向かったのは、gumi傘下の「Tokyo VR Statups」の参加者が多いOcufes。会場は秋葉原のヴェルサール地下。

 どことなく文化祭のようなノリで、Oculusにかぎらず、いろいろなVR作品を持ち寄って展示するコミケ的な会でした。

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 (株)ハコスコの提供する1200円の格安ヘッドマウントディスプレイから、GearVRなどなど、Oculusにこだわらず、とにかく「今のVR技術でどんなことができるか」を研究する、といった趣きで様々な作品に触れることができました。

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 こちらは飛んで来る唐揚げを顔面でキャッチするという趣きのゲームで、グラフィックスや演出のクオリティも高く、早くも商品化を強く意識していることを感じさせます。

 ゲームセンターにあったら、一回か二回は遊んでしまうかも。

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 こちらは空間センサーのLeap MotionとOculusを組み合わせた作品で、現実の空間にコンピュータグラフィックスを合成するAR(Augmented Reality;拡張現実感)技術を使ったゲームです。

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 ゲームの他にも「ムムッ!?これはなんだ?」と思って凝視したやたらサイバーな機械が展示されていて、「これはなんですか?」と聞いてみると・・・

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 実はカッコよく魔改造したGalaxy Gear VRだったり、とにかく展示物はなんでもアリで、実際にその場でVRヘッドセットとソフトを売っているところもありました。

 中でも疾走感とスピード感に感動したのがこの作品です。

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 実は、本格的なVRコンテンツをプレイするのはこれが初めてだったのですが、やはりLeap Motionと組み合わせたゲームで、手で光弾を撃ったり、グーを握ってチャージしてパッと開くと大出力の光線を出したりと、水口哲也氏の「チャイルド オブ エデン」を彷彿させる仕上がりで、グラフィックスは荒削りながらも、躍動感、ゲーム性には感心させられました。

 特に、ロボットに乗り込んで移動する感じが、特に体感装置などもないはずなのに、実際に「フワッ」という浮遊感に包まれることに戸惑い、驚きました。

 そんなわけで見るものモノ沢山、大盛況なOcufesですが、筆者が帰ろうとすると、ベルサールの出口のところで旧友のKAF the Doomerこと佐藤耕司に出会ってしまいました。

 その名の通り、VR系ゲームの魁であるDOOMの熱狂的かつ悪魔的プレイヤーで、現在はe-sportsやVR系のテクノロジーを追いかけるライターとしても活躍しているのですが、彼が「まだ体験してないならぜひHTC Viveをやってみて」と誘ったところで、そういえば整理券を持っていたのを思い出し、体験することにしました。

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 正直に言うと、HTC Viveは観測外というか、筆者自身、今の仕事の興味が専らAIにあるところで、頭からかぶらなければならないVirtual Realityにどれだけの市場可能性があるのかは疑問でした。

 そもそもOcufesに来た理由も、やはり旧友に誘われてなんとなく、といった感じだったのですが、このHTC Viveとの出会いが、筆者の価値観を根底から破壊することになります。

 それまで散々、OculusでVRゲームを遊んだ後だったというのに、HTC Viveのデモは、まるで別世界でした。

 あまりのことに感動して、佐藤耕司にHTCの人を紹介してもらい、翌日の「VRまつり」にも急遽参加することになったのです。

 これだけVRを追いかけている佐藤ですら、「VRまつり」でのデモは初体験とのことだったので、筆者は非常にラッキーだったと言えます。なにしろ2日連続で、世界最先端のVR体験をすることができたわけですから。

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 この、かなり脱力したタイトルとは裏腹に、VRまつりは事前登録制でしかも有料。その上チケットは瞬殺、という、非常に盛り上がったイベントでした。

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 GearVRとPlayStationVRも展示されていて、Ocufesが学芸会だとしたら、こちらはビジネス向け内覧会といった趣きで、朝早くから熱心な参加者が行列を作っていました。

 「朝イチで来て」

 
 と言われた筆者は、会場前に体験させていただける予定だったのですが、セッティングに手間取り、結局、参加者が途切れたスキマ時間を待って佐藤耕司と順番に体験することになります。

 となりではPlayStationVRが大行列を作っています。

 佐藤によれば、「PlayStationVRの武器は圧倒的なコストの安さ。PS4のコストパフォーマンスも去ることながら、PS Moveと全く同じ原理でヘッドトラック(頭部追跡)を行うし、コントローラもPS Moveを流用できるので新規に作るものが極端に少なくて済む。故の、低コストが最大の武器」とのことでした。筆者もVRはPlayStationVRの圧勝で終わると予想していたので、この答えそのものに驚きはありませんでした。GearVRも、液晶とCPU/GPUはスマートフォンに内蔵されているので、スマートフォンごと買わなければならないというところがコストとパフォーマンス、両方のネックになるのはしかたありません。

 さて、このHTC Viveはなにが違うのか。

 それは「ルームスケールVR」と呼ばれる、圧倒的なスケール感と自由度のVRが初めて可能になったということです。

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 ルームスケールVRとは、その名の通り、部屋サイズのVRで、そのためには特別なポジショントラッキング(位置追跡)用の装置「Lighthouse」をニ個設置する必要があります。

 実はVRは、頭部に装着するヘッドマウント・ディスプレイ(HMD)だけでは十分な頭部追跡ができず、Oculusでは外部カメラを使い、PlayStationVRではPS Move用のカメラを使うようになっています。

 しかしこれだけでは十分な位置追跡が難しく、たとえば手を認識するとしても、さまざまなノイズの中から手の正確な位置を検出しなければなりません。画像からの正確な位置検出というのは最先端のディープラーニング技術でもまだまだ難しい分野ですから、これは相当なノウハウが必要です。

 HTC Viveでは、逆転の発想でHMDの方に無数のカメラが搭載されていて、全方位に向けて位置検出を行うようになっています。

 その結果、5メートル四方の広大な空間をまるごとキャプチャーできるようになり、まさにルームスケール、日本風に言えば、四畳半程度の広さで完全なVRが実現できるようになっています。

 実際、最初にOcufesで体験したHTC Viveのデモでは、The Bluという、深海ゲームが楽しめます。

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 難破船のデッキに居て、しゃがむとさまざまな角度から難破船を眺めたり、甲板のへりから下を覗きこんだりといったことができます。

 この、ルームサイズというのが本当に感動的で、さっきまで体験していたOculusなどのVRが、まるで玩具に見えて色あせてしまうほどの衝撃でした。

 さらに、HTC Vive専用のコントローラは握りやすく、位置追跡も完璧なため、本当に自分の手がVR世界に潜り込んだかのような錯覚に陥ります。

 しばらく難破船で小魚と戯れていると、後ろから巨大なクジラが現れます。

 
 これ、とにかく、初見のときは本当に怖かったです。
 ちょっと怖いなんてもんじゃない、鬼怖い。

 思わず発狂するんじゃないかと自分が心配になるほどの恐怖でした。マジで怖かった。

 もうその頃には既に自分が秋葉原にいることなど完全に忘れて、完璧に別世界に入っているかのようでした。

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 敢えてのローポリゴンが楽しい「Job Simulator」というゲームでは、仮想空間のオフィスを実際に歩き回りながら(ルームランナーなどなくてもルームスケールなら歩き回れる!!!)、いろいろな仕事をこなしていきます。

 全てのものは触れることが出来、ドーナツを食べたり、PCの電源を入れたり、コンセントを抜いたり指したり出来ます。

 これもまた感動です。

 二日目しかプレイできなかった一人称視点(ファーストパーソン)シューティングの「Arizona Sunshine(アリゾナ・サンシャイン)」はアメリカ人が大好きなゾンビシューター。

 実際に戦場を歩き回りながら(5平方メートルではあるけれども)、遮蔽物に隠れたりしながら、ハンドガンやショットガン、サブマシンガンでゾンビを撃ちまくります。

 右からくるゾンビと左からくるゾンビを二丁拳銃でバンバン撃つのは、まさしく快感そのもの。完全に映画の主人公になったような気分で楽しめました。

 さらにデモ終盤になると上空からヘリコプターがあらわれたりとか、本当に周囲を360度ぐるぐる見回しながらゲームをするスリルは、ホンモノのサバイバルゲームにも匹敵する緊張感です。

 とまあ、二日間で一通り最新のVRゲームを体験させていただいたわけですが、いくつか課題のようなものも見えてきました。

 ひとつは、GearVRのようなスマートフォン型VRの場合、当然ながらヘッドトラッキングがないし、三次元入力デバイスもないので比較的単純なゲームしか作れないのではないかという懸念です。

 もっとも、デバイスの問題はBluetooth接続でいくらでも解決しそうですが、さすがにスマートフォンでゲームをするのに部屋に無線カメラを設置するというのは非現実的です。

 次の問題は移動手段です。

 実はVR空間で普通の一人称視点ゲームのように移動するとすぐにVR酔いという酔いを起こしてしまうことはよく知られています(そう考えるとViveで室内を移動して全く酔わないというのはつくづく驚異的です)。

 そこで、大半のゲームは移動しないか、移動を制限して、たとえば先ほど紹介したOculusとLeap Motionのシューティングゲームでは、ライドシューター形式、つまり移動は勝手に行われて、プレイヤーは撃つことだけに専念する、といった意味付けが必要になります。

 また、移動範囲が制限されているHTC Viveのゲーム「アリゾナ・サンシャイン」では、戦闘中は5メートル四方しか移動できないものの、ひとつのステージをクリアするごとに瞬間移動にも似た方式で移動することができるようになっています(このあたりは、普通に走ってもいいんじゃないかと筆者は思いましたが)。

 しかし筆者が一番期待するのは、ゲームそのものではなく、HTC Viveによって実現されるであろう全く新しいビジネス・アプリケーションやエデュケーションといった分野の開拓です。

 例えば、HTC Viveはヘッドセットが複数あれば複数人が同時に同じ空間でVR体験ができます。

 とはいえ5メートル四方ですから、何十人というわけにはいきません。とりあえずHTC社では6人くらいまでは試したとのことです。現実には2〜4人が限界でしょう。

 これがたとえば博物館やイベント会場にあったら、どんなことが起きるでしょうか。

 たとえば、Powers of Tenという有名な科学映画があります。

 これは1977年につくられたものですが、非常に簡単な映画です。

 草原に寝転がっている人間サイズからスタートし、カメラは地球、太陽系、銀河系、そして宇宙の巨大構造までバックしてから、今度は逆にズームインしていき、やはり最初の人間サイズに戻ったかと思えば、そのままミクロの世界に行きます。細胞、原子核、素粒子のところまで拡大して、それからまた人間サイズにもどって終わりです。

 ミクロとマクロを一直線につなぐ、だけ、という、非常に実験的、かつ感動的な映像です。これを見て科学に魅せられた人も少なくないのではないでしょうか。

 このPowers of TenをそのまんまHTC Viveで再現したら・・・

 我々は超宇宙中的スケールと超ミクロ的スケールを同時に体験できるわけです。

 通常は見ることが出来ないインターネットの構造などもVR空間なら簡単に把握させることができます。

 深層ニューラルネットワークの、直感的には把握しづらい特徴も、もしかすると3D空間なら把握しやすくなるかもしれません。

 複雑にからみあった構造を様々なスケールで見渡せば、理解も深まるはずです。

 プロトタイピングも今と大きく変わるでしょう。
 今はハードウェア製品は3Dプリンターでプロトタイピングするのが当たり前になりましたが、私ならその手前でVRでプロトタイピングしてみます。

 VRでプロトタイピングするのが最もコストがかからず、効果的だからです。

 自動車のショウルームなども一変します。

 自動車のボディ色を確かめたりとか、オプション品を装着したりとか、エンジンの構造を見たりとか、現実のショウルームではなかなかできないことができるようになります。

 建物や家具のショウルームも同様に大きく変化するでしょう。
 もう建材や家具のサンプルを見せる必要はありません。パースやCGの中に実際に顧客が入り込み、そして自由に歩き回ることが出来ます。しかも四人家族が一緒に、です。

 5メートル四方を歩き回りながら、実際に建築予定のマイホームやオフィスを感じ取りつつ、家具を選んだり、壁紙の色を選んだりすることができるわけです。

 また、この路線だと、もしかするとゴルフシミュレーターも大きく変わるかもれません。

 HTC Viveは、カメラが内蔵されているため、VRだけでなくARヘッドセットとしてもそのまま使えます。

 シミュレーションゴルフバーなどに設置されれば、実際に参加者全員がヘッドセットを被ったまま、ゴルフ場にいるのと同じ臨場感でバーチャルゴルフを楽しむことができるようになるでしょう(その際、女性の髪が乱れてしまうなど、解決すべき問題もまだありますが)。

 そして現在バルセロナで開催中のMobile World Congressでは、Facebookのマーク・ザッカーバーグがSumsungのキーノートに登場し、Facebookも本格的にVRに対応することを表明しました。

 SumsungとLGは同時にVR用カメラの提供も発表。
 ゲームメーカーだけでなく、携帯電話メーカーも巻き込んだ、まさにVR世界大戦の様相を呈してきました。

 VRはAIと違い、効果が誰にでも体験できるので、今年これが話題を呼ぶのは間違いないでしょう。秋にはPlayStationVRも控えています。

 とりあえず今からできることは、部屋を片付けて、自宅でルームスケールVRができるようにしなくては。

 なんてことを考えている今日このごろです。

 とりあえず弊社もVRソリューション事業でいろいろな実績を積んでおりますので、ご興味のある方はぜひお問い合わせを。

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清水 亮(しみず・りょう)

1976年新潟県長岡市うまれ。6歳の頃からプログラミングを始め、16歳で3DCGライブラリを開発、以後、リアルタイム3DCG技術者としてのキャリアを歩むが、21歳より米MicrosoftにてDirectXの仕事に携わった後、99年、ドワンゴで携帯電話事業を立上げる。'03年より独立し、現職。'05年独立行政法人IPAより天才プログラマーとして認定される。

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