異業種からのMVNO参入で進む通信サービスの多様化(後編)
2015.12.14
Updated by 特集:トラフィック可視化で変わるネットワークの姿 on December 14, 2015, 08:00 am JST Sponsored by プロセラネットワークス ジャパン
2015.12.14
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異業種からの参入が進むMVNO業界ですが、その大きな壁となっているのがL2接続にかかる投資と事業計画の見極め、万が一の際の事業撤退の難しさです。この敷居を下げるために「MVNO業界における唯一の専業ベンダー」が考える新たなサービスについて、レンジャーシステムズ代表取締役の相原 淳嗣氏に、MVNOの多様化についてお話をうかがいました。
レンジャーシステムズ株式会社 代表取締役 相原 淳嗣氏
(前編はこちら)
相原:通信業界以外の事業者様がMVNO業界に参入される時に一番ネックになっているのは、意思決定の難しさなんです。先ほどご紹介したような特徴あるサービスを実現するためにはL2接続が必須ですが、初期投資が相当にかかります。規模にもよりますが弊社が一般的に提案するL2接続のためのシステム導入費用は、最低3億円から5億円ぐらいですね。他社では10億円以上の見積もりが出てくる場合もあり、それに比べれば安いとはいえ、やはり相当な金額で、損益分岐点はおよそ20万契約くらいと想定しております。契約からシステムの構築、稼働にも10ヶ月から12ヶ月かかる。またこれだけお金と時間を投資してしまうと、もしうまく行かなかった時に撤退するのが難しくなります。
もちろんMVNEのSIMを再販するだけあれば初期投資はもっと少ないし、万が一の場合にも撤退はしやすいですが、既存のMVNOとの差別化は困難になります。L2接続とSIM再販のメリットとデメリットはちょうど裏表の関係にあり、あちらを立てればこちらが立たずという状態です。
魅力的なコンテンツを持っていてMVNO事業に参入したいと思っても、「損益分岐点の20万ユーザーにコミットできない」という理由であきらめてしまう事業者さんがたくさんいらっしゃいます。そうした方々の敷居を下げ、戦略的、野心的な事業者に参入を促し、業界を活性化するために、現在私が考えているのが、「レイヤ2接続型MVNOプラットフォームサービス」です。
帯域についてはMVNEから弊社が帯域の再販あるいは仲介を行い、通信設備と合わせて、ユーザー数に応じた月額サブスクリプションモデルで提供します。また合わせて、ネットワークの設計と運用保守サービスを提供します。弊社パートナーとの協業により、会員管理、コールセンター、SIMのプロビジョニングなど煩雑な業務もワンストップで提供します。最低ユーザー数は1万ユーザーを考えています。
回線をMVNEから借りることで従量調達をタイムリーにできますし、通信設備は仮想化製品を活用し、各事業者向けへ物理的に専用設備として提供することで、他社に干渉されることのない、自由な設計と運用ができます。初期費用や各種ランニング費用はただいま検討している最中ですが、初期コストとランニングコストを大幅に抑えつつも、L2接続と同じサービス設計とマネジメントができるという、SIM再販とL2接続のいいところ取りをした、「半L2接続」というアイデアです。
またサービス提供までのリードタイムも、L2接続ですと一般的に10ヶ月から12ヶ月かかるところが、最短で3〜4ヶ月で提供できます。初期は1万ユーザーから1ユーザー単位で増やせて、契約期間の縛りなしに利用できる、クラウド的な考え方でやれると思っています。先々、自社設備としてMVNO通信システムを導入したいということであれば、途中でオンプレミス型に変えればいいというのも同じです。その時には、ご利用頂いていた設備をそのまま提供することも可能で、今までの弊社の実績やノウハウも継続的に提供させていただきます。
菅野:プロセラの製品も仮想化できますから、1台のサーバーにPGW、PCRFと我々のソリューションを載せてスモールスタートという考え方でMVNOプラットフォームサービスは実現できるでしょう。うちとしては、これからは分析ソリューションも提供していきたいと思っているんです。いつどんなトラフィックが発生しているのかを見ることで、新しいプラン設計するとか、ユーザーのQoE、QoSを常時モニターして契約帯域を合理的に増速するとか、そういったことにもぜひご活用いただきたいです。
相原:そこまでサポートするのがいいとは思っているんです。ただご検討いただくためには「分析ソリューションでコストパフォーマンスが良くなる」ことを的確に示す必要がありますね。サブスクライバー管理、適切な帯域、適切なプランがかみ合うことで収益が上がる、という、通信事業者の常識を、一般の事業者の方に説明するのも我々の仕事だと思っています。
相原:今、モバイルのトラフィックは年々1.6倍ずつ増えていますから、「10Mbpsに何人入れるか」というモデルでは品質崩壊するのは目に見えています。各キャリアはWi-Fiオフロードに注力していますが、利用者目線でも操作が煩雑であること、ネットワーク品質やセキュリティの問題、利用できるサービスが限られるなどの理由でなかなか普及しません。
我々は、次世代のモバイルネットワークの姿はライセンスバンドとアンライセンスバンドがシームレスにインテグレートされているべきだと考えます。そのために、アメリカのnCoreコミュニケーションと「LTE over WiFi」に関する技術協力をしています。
LTE over WiFiは、文字通りLTEのプロトコルをWi-Fiに実装して、Wi-FiアクセスポイントをLTEの基地局として利用するものです。nCoreの技術では、Wi-FiルーターとLTEコアの間も直接3GPP標準インターフェースであるS1プロトコルで接続します。LTE交換機設備を利用してアクセス管理、ポリシー管理、課金管理などを一元化しながら、トラフィックだけをWi-Fiネットワークに逃がします。ローミングや交換機間接続も可能です。LTEネットワークと同様に帯域制御や優先制御を使用したサービスが可能になります。
この技術を利用すれば、建物内のWi-Fiアクセスポイントをコアネットワークに接続し、USIM認証を利用してWi-Fiネットワークのユーザビリティと高いセキュリティを両立できます。また、IoTプラットフォームとしても、USIM認証をベースとしてアンライセンスバンドを活用できます。
先ほどお話したWi-Fiオフロードの問題にしても、nCoreの技術を使えば、LTEとWi-Fiの間で自然にオフロードできます。LTE-U/LAAでWi-Fiの周波数帯を使っていくなんてことはキャリアにしかできませんから、MVNOがキャッチアップしていくためには有効な技術だと思います。
今、総務省のワーキンググループでMNOのHSS/HLRをMVNOに開放するかどうかという議論が進められていますが、もしこれが開放されれば、MVNOのLTE over Wi-FiをキャリアのLTEにハンドオーバーするようなことも可能になるかもしれません。まだコンセプト実証段階で、商用製品の開発はこれからですが、いろいろなことができそうですし、こういうものが普及するとMVNO業界の活性化、価値向上につながると確信しています。
菅野:相原さんはスピード感を持って積極的な提案を次々にされるのがとても魅力だと思っています。チャレンジングなことやアイデアは世の中にたくさんありますが、たいていの人は実際にやるとなったら「100%検証できるまではちょっと…」という感じで、尻込みするんですよね。レンジャーシステムズさんとは技術的な検証もしっかりとやりつつ、いかに早く展開していくかというチャレンジを一緒にさせていただけるかなと思っています。
ところで、相原さんから見て、プロセラネットワークスってどんな会社ですか?
相原:MVNOの先進地域といえば欧州で、MVNOのシェアは目を見張るものがあります。プロセラネットワークスは先進地域でのユースケースやアイデア、成功例、失敗例などをよくご存知です。菅野さんともプロセラネットワークスの皆さんとも腹を割って話せる関係ですから、そうした情報交換を密にできるのがいいですね。
100%検証しないと前に進めない通信業界の姿というのは、ある意味正しいあるべき姿なのですが、せっかくMVNOをやるならチャレンジしていきたいと思います。もちろんお客様に迷惑をかけてはいけませんが、踏み込んだ尖ったサービスを作るには、ベンダーと事業者の信頼関係が不可欠です。古いSIerは自分の仕事が増えることを嫌って本音でアイデアを出さないことがありますが、菅野さんとの間にはそういう壁がありません。業界の未来、求められるサービス、という視点で、熱く語れます。これからも、より、関係を強固にしていきたいと思っています。
菅野:こちらこそ、これからもよろしくお願いします。ありがとうございました。
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