日本通信、MVNO規制緩和で事業をモバイルソリューションの「黒子」へシフト

2016.01.25

Updated by Naohisa Iwamoto on 1月 25, 2016, 06:11 am JST

日本通信は2016年1月22日に事業戦略発表会を開催し、今後の事業の方向性をモバイルソリューションの「黒子」へとシフトする戦略を公表した。これまで、MVNOの「モデル事業」者として直接サービスを提供してきたが、今後の主軸はMVNOやその他の多くの事業主体がモバイルソリューションを実現するための「MSEnabler」(モバイルソリューションイネイブラー)に移行する。

▼MVNOに課された「2つのギプス」が規制緩和で外れることになった20160125_jci001

発表会に登壇した同社代表取締役社長の福田尚久氏は、「総務省の『携帯電話の料金その他の提供条件に関するタスクフォース』で、私たちは『2つのギプスを外してください』と主張してきた。1つが接続料算定問題で、もう1つが技術的制約だ。接続料算定問題については、一定の解決を見た。技術的制約問題でも、9つの項目のうち音声伝送交換機能やデータ伝送交換機能(L2)など4つはアンバンドルに指定され、料金情報提供機能やHLR/HSS連携機能など残る5つの項目も解放を促進すべき機能に指定された。L2接続の解放を実現した2007年の総務大臣裁定がMVNO規制緩和第一弾だとすれば、今回はMVNO規制緩和第二弾と言える」とこれまでの状況を振り返る。

▼日本通信は「格安SIM」だけでない多様なサービスの提供を計画している20160125_jci002

規制緩和の方向が見えてきたことで、日本通信はサービスの提供範囲を拡大する。複数のキャリアを使える「デュアルネットワーク」、世界中で使える「グローバルマルチキャリアSIM」の提供、安全な回線を提供する「グローバル無線専用線」といった回線サービスに加えて、「通話定額」「フルIP電話」「ユニバーサル電話番号」「NFC決済」「決済プラットフォーム」「IoT向けセキュアサービス」などの上位レイヤーのサービス、自社でSIMを発行する「SIMソリューション」の提供といった具合だ。

これらを提供する事業者として、日本通信はこれまでの「MVNOのモデル事業者」の役割から、「MSEnabler」へと軸足を移す。サービスは、現行の「b-mobile」のようにユーザーに直接提供するのではなく、MVNOやSI、メーカー、金融機関などエンドユーザー向けのモバイルソリューションを実現しようとする事業者に対して提供することになる。福田氏はこの事業形態を「黒子」と表現した。

▼MSEnablerへと軸足を移す日本通信の戦略20160125_jci003

日本通信が「MSEnabler」として提供するサービスでは、端末のレイヤーは独自にSIMを発行する計画で、その種類はプラスチックカード型のSIMだけでなくM2Mなど工業用のSIMである「MIM」、書き換え可能な「ソフトSIM」(エンベデッドSIM)も想定する。アクセス網としてはドコモ、KDDI、ソフトバンクの国内各キャリアの回線、Wi-Fi網、Vodafone、Verizon、Sprintなど海外キャリアの回線を使って、柔軟な利用に対応する。さらに、エンドツーエンドで安全なモバイル回線として、「無線の専用線」を世界中で提供することで、法人のネットワーク利用やソリューション提供のインフラを形作る戦略である。

▼日本通信の新しいビジネスモデルでは、MVNO以外の一般企業のモバイルソリューション実現に力を貸す20160125_jci004

こうした多様なサービスを提供するための本質的な基盤となるのが、HLR/HSSの解放で、すでに同社はHLR/HSSの接続をNTTドコモに申し入れるなど、準備を進めている。福田氏は「過去のL2接続解放のときに、合意からサービスインまで9カ月程度かかった。その経験を踏まえ、HLR/HSS接続によるサービスを2016年内にはサービスインしたいという日程感を持っている」という。

一方、HLR/HSS接続がすべてにMVNOのビジネスにとって有効かという面では、否定的な見解を示す。「HLR/HSS接続のためには、30億円程度の設備費用がかかると概算している。日本通信は多様化するサービスのMSEnablerとなるために必要な投資と考えているが、10社も20社もこの投資をしてHLR/HSS接続をするMVNOが出てくるとは思わない。MVNOにサービスを提供するMVNE的な位置づけの数社程度がHLR/HSS接続をして、その他のMVNOがサービスを利用するという形態が現実的ではないか」(福田氏)。日本通信は、多様なサービスやグローバルで利用できる無線の専用線といった高付加価値なサービスを提供するインフラベンダーへと軸足を移し、料金競争が進む「格安SIM」で戦うMVNO事業者からの脱却を図る。

【報道発表資料】
日本通信、新事業戦略を発表

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岩元 直久(いわもと・なおひさ)

日経BP社でネットワーク、モバイル、デジタル関連の各種メディアの記者・編集者を経て独立。WirelessWire News編集委員を務めるとともに、フリーランスライターとして雑誌や書籍、Webサイトに幅広く執筆している。

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