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今回の座談は、当初1時間程度だった予定が、結果として3時間近くにも及び、その内容は紙幅の都合で大幅に割愛せざるを得ませんでした。それでも1万字近い記事となったことからも、いかにパネリストの皆様が「熱い思い」をお持ちだったか、お察しいただけるのではないでしょうか。

そのすべてをご紹介する術もないのですが、敢えて共通項を見出すとしたら、「閉塞感」というキーワードが挙げられるかもしれません。そしてそれは、データプライバシーを論じるコミュニティの小ささや、世代や性別等の多様性の小ささなど、文中でも触れられたことだけでは、なさそうです。

個人情報保護法改正に向けた先般の検討が、全体としてとても有意義であったことは、多くの方に共感いただけるのではないかと思います。しかし、その議論が詳細に及ぶほどに、概念の定義やデータ取扱いのテクニックの話になっていったようにも思えます。

「本当にそんな話をしたかったんだっけ?」という声は、検討に直接関わった方の中からも、うかがったことがあります。しかしながら、そうした検討自体はとても大切なもので、決して否定されるべきものではありません。

その両方が大切だということと、しかし現実がなかなかそう進まないこと、それぞれの難しさをいずれのパネリストも感じていたように、編集作業を進めながら感じていました。

座談自体は春先に行われたのですが、その編集作業に時間を要し、本稿を最後にまとめたのは、掲載直前でした。ちょうどその頃、「なりすまされない権利」、あるいはいわゆるアイデンティティ権を認める司法判断が大阪地方裁判所で下されました。

この判断そのものやその解釈自体には、まだまだ議論の余地があると思います。しかし、今回も触れられていたIDマネジメント界隈を中心に、「こうした議論が何にせよ大事」という声が挙がっていたようです。

そもそも私たちは自らのプライバシーに関わる情報として、何を持っているのか。そしてそこでどんな権利が認められていて、何を守りたい/守れるのか。そんな「そもそも論」に光を当てることが、パーソナルデータの利活用というテーマを考えるにあたって重要であることが、もしかするとこの判決で確認されたのかもしれないと、改めて座談を読み返しながら、考えています。

2年以上にわたって続けてきた特集「プライバシーとパーソナルデータ」も、今回で一区切りとなります。しかし、まだまだ議論が始まったばかりであることは、いみじくも今回の座談が、時間も文字数も大幅に超過したことからも、明らかです。今後も何らかの形で、こうした議論を続けていければと考えています。

ご登壇やご協力をいただいた皆様、そしてご愛顧いただいた読者の皆様に、改めて御礼を申し上げて、ご挨拶に代えさせていただきます。

【テーマ14:プライバシーとパーソナルデータのこれから】
新しい世代がデータプライバシーを切り拓く
(1)なぜプライバシーの議論は分かりにくいのか
(2)本物のプライバシーポリシーを作ろう
(3)AI時代のデータプライバシーを考えよう

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特集:プライバシーとパーソナルデータ

情報通信技術の発展により、生活のあらゆる場面で我々の行動を記録した「パーソナルデータ」をさまざまな事業者が自動的に取得し、蓄積する時代となっています。利用者のプライバシーの確保と、パーソナルデータの特性を生かした「利用者にメリットがある」「公益に資する」有用なアプリケーション・サービスの提供を両立するためのヒントを探ります。(本特集はWirelessWire News編集部と一般財団法人日本情報経済社会推進協会(JIPDEC)の共同企画です)