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Pokemon Goから考えるクールジャパン

Cool Japan and Pokemon Go

2016.07.27

Updated by Mayumi Tanimoto on 7月 27, 2016, 11:33 am JST

大原様

随分間が空いてしまいましたが、いかがお過ごしでしょうか?イギリスはEU離脱国民投票の後の責任の押し付け合いが一段落し、メイ首相のヒョウ柄の靴ってどうよ、という話題で盛り上がっております。

前回の

英米のEブックを支えている読者は誰?

には大変重要な示唆があると思いました。

実際のところ、若い女性はもう紙の本なんてなくても全然平気なのかな、と思ったりします。一時期注目されたケータイ小説もティーンエイジャーの女の子たちが支えていたし、BLをケータイで読めればわざわざ書店に行かなくてもいい。アメリカでもKindleをずっと使っているのは圧倒的に女性層です。『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』や『ゴーン・ガール』のように映画化されて話題になるのも、世界中の女性に読まれた結果、バカ売れした本なのですから。

YA(ヤングアダルト)の本をベストセラーに押し上げる力を持ったいろいろな国の女性が、自発的に日本のものを「KAWAII」といって支持するのならともかく、男目線の萌え少女コンテンツを「クール・ジャパン」と売り込んで行っても、果たして勝算はあるのかな? と少々疑問に思います。どうせ何かキャンペーンを張るのなら、もう少し彼女たちが求めているものと真剣に向き合ってほしいですね。

英語圏の電子書籍ユーザーには女性が多いというお話でしたが、書籍にしろ、ネット系のコンテンツにしろ、ゲームにしろ、日本の企業は、海外のユーザーが本当に欲しいと思っているモノを提供するにも関わらず、チャンスを逃している事が多いのかもしれません。ご指摘の通り、英語圏の女性の中には、萌系ではなく、その他の日本のコンテンツを求めている人が少なくないのにも関わらず、なぜか日本側は、萌やカワイイを押し売りしておりますね。

こういうギャップがよくわかったのが、この所、世界的な大ブームとなりつつあるPokemon Goの様に思います。まずは北米など海外でリリースし、話題になった頃に日本でリリースという流れ、インフラが追いつかなかったという話もありますが、ブームを盛り上げる上で大変賢いやり方の様に思います。

日本ではPokemonというと、ファンは、アラサー中心という印象があります。

ワタクシは家に幼児がいますので、日本のお子様トレンドも抑えておかなければと思い、日本にいる時は、小学生や当地園児に聞き取りを行っています。日本の学校に行った時に、流行りモノの話の一つでもできなければハブになってしまいます。小学生と話をしますと「ポケモン?そんなダサいのやらないよ。妖怪ウオッチが好きなの。」というレスが返ってまいります。仮面ライダーでもウルトラマンでもなく、とにかく妖怪ウオッチです。

幼稚園児からは「ポケモン?なにそれ?ポケモンふりかけ、やだ、こんなの。ジバニャンちょうだい」という答えが返ってきたりして、子どもといえばポケモンだろう」と思ってお土産を持ってきたのに、孫にミッキーマウスを手渡して、冷笑されるジジババ状態を体験してしまいました。(ジジババは子どもといえばミッキーと思っている)

ところで、なんでワタクシが「子どもといえばポケモン」と思ったかというと、自分はアラフォーで、流行りものについていってないというのもあるのですが、英語圏や欧州大陸だと、ケーブルテレビの子供向けチャンネルでは、今だにポケモンが大人気だからです。これはAmazon PrimeやNetflixの様なコンテンツ見放題のネットサービスでも同じで、「アニメ」カテゴリをピコピコ押すと大量に出てくるコンテンツがポケモンです。

ちなみに英語圏は、日本製の子供向けアニメコンテンツは、ポケモン以外はないといって良い状態です。競合するのはミュータントニンジャタートルズとか、スポンジボブとか、カンフーパンダとか、いわゆる、アメリケン丸出しの単純系アニメです。おもちゃ売り場に行くと、今だにポケモンの人形やらグッズが大人気です。それ以外の日本アニメのグッズは皆無です。英語圏も欧州大陸も、Pokemon Goに大興奮しているのはアラサーが少なくないことは事実ですが、日本の子供に比べると、こちらの子供にとってポケモンは「今」です。

しかしなぜポケモンかというと、1990年代のブームだった頃に遊んでいた若い子が親になっているというのもありますが、英語圏や欧州大陸の大人というのは、子供が接触するコンテンツの内容に思った以上にうるさく、イジメや暴力シーンがあるもの、性的な示唆があるものなどはアウトです。子供の就寝時間、行く場所、食べられるもの、礼儀なども思った以上に厳しく、犬以上に厳しくしつけるのでびっくりしますが、そういうのが普通のようです。

ドラゴンボール、ドラえもん、仮面ライダー、ウルトラマン、ちびまる子ちゃんといった作品を、英語圏や欧州大陸の親に見せると、唖然とすることがあります。殴る蹴る、いじめシーンなどが登場するため、子供が模倣することを恐れてこんなものを見せられないというのです。ワタクシ的感覚では、カンフーパンダなどは単純すぎて全然おもしろくないのですが、こちらの親は、悪影響がありそうなものはとりあえず隠したがります。従って、ヌード雑誌などのゾーニングも日本に比べると厳しいです。しかしポケモンの場合は、そういった親の検閲に引っかからないので、Amazon PrimeやNetflixでも子供向けコンテンツとして堂々と放送されています。

子供は小さい頃からポケモンのアニメを見ているので、Pokemon Goにも大喜びです。そういうわけで、ポケモンファンの裾野は海外のほうが大きいので、まずは海外でリリースし、日本に持ってきたというNianticと任天堂の戦略は賢いといえるでしょう。

しかしながら、Nianticと任天堂の様に、海外と日本で好まれる「日本のコンテンツ」の違いを十分に理解している会社が多くはないでしょう。特に、国内市場だけで食べてきた出版業界やテレビ業界は、ポケモンの様な事例から学ぶ必要があるように思います。日本にはまだまだ良いコンテンツや製品もあるわけですが、意外なものが好まれたり、日本でOKなものが海外ではNGだったりします。この辺は、大原さんの様に海外経験の豊富な方のアドバイスを活用するのが時間の短縮になるでしょう。

一方で、日本ではゲームというと、最近はソシャゲーばかりが話題になっていました。Pokemon Goの登場で風向きが変わりつつありますが、課金廃人や子供から銭をむしり取っていたゲーム会社の一秒でも早い凋落をお祈り申し上げます。

 
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連載企画「往復書簡・クールジャパンを超えて」は、マガジン航[kɔː]とWirelessWire Newsの共同企画です。マガジン航側では大原ケイさんが、WirelessWire News側では谷本真由美さんが執筆し、月に数回のペースで往復書簡を交わします。[編集部より]

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谷本 真由美(たにもと・まゆみ)

NTTデータ経営研究所にてコンサルティング業務に従事後、イタリアに渡る。ローマの国連食糧農業機関(FAO)にて情報通信官として勤務後、英国にて情報通信コンサルティングに従事。現在ロンドン在住。