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ユーザーには罵倒でかえす:対話型人工知能(AI)「罵倒少女:素子」

2016.08.08

Updated by Hitoshi Sato on August 8, 2016, 11:03 am JST

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ソニー・ミュージックエンタテインメントは、言語理解研究所と共同開発した対話型人工知能(AI)[PROJECT Samantha](プロジェクト・サマンサ)のβサービスとして「罵倒少女」を、 世界最大級のイラストSNSサイトpixiv上で2016年8月4日から15日まで提供する。

[PROJECT Samantha]は言語理解研究所が開発した、対話型人工知能エンジン[K-laei]を利用している。[K-laei]は最新の自然言語理解システム(NLU)とマシーンラーニング(NLP)をハイブリッド化した知識駆動型AIで、数百億パターンの感情、感性等を記憶した大規模知識(GAIA、 URANUS)と、言語理解エンジン群(Semantic Substance Sampler)で構築されている。ユーザーの意図を推論したり、対話の状況から動的に感情が変化するなど、利用者との対話から学習し、進化していく典型的な人工知能だ。

[PROJECT Samantha]は人格データをAI化することにより様々なサービスシステム内で、コミック、アニメ、ノベルズなどに登場する架空のキャラクターたちとの会話コミュニケーションを実現する。 今回のβサービスでは期間限定(8/4~8/15 12時まで)でカイカイキキ所属のクリエイターmebae氏の人気コンテンツ『罵倒少女』の「素子(もとこ)」をAI化した。CVは『図書館戦争』、『進撃の巨人』の人気声優・井上麻里奈さんが担当している。2016年8月10日からKADOKAWAより「罵倒少女:素子」の書籍が発売されるそうだ。

ユーザーには罵倒で返すAI「罵倒少女:素子」

ユーザーの入力に対し、考えて応答するサービスで「罵倒少女:素子」とのチャットを楽しむことができる。「罵倒少女」はカイカイキキに所属するクリエイターmebae氏によるオリジナルコンテンツで、 黒髪の美少女「素子」が様々なシチュエーションで罵倒するというキャラクターだ。ユーザーからの話しかけに応じ、「素子」が考えて応答(主に罵倒)する。様々なジャンルの内容を「素子」に話しかけると、反応を楽しめる。「素子」はテキストチャットだけではなく、スタンプやボイスメッセージで反応することもある。

日本マイクロソフトが開発したチャットボットで2015年夏にはLINEにも登場したAI女子高生「りんな」は、LINEでユーザーからの問い(書き込み)に、人工知能で学習した機能を元に的確と思われる会話を返していた。この時も女子高生だった。今回も女子(「罵倒少女:素子」)だ。

女子の方がお喋りだから、多くの会話情報が蓄積されているのだろう。もしくは女子じゃないと、アクセスしてこないから、今後のデータや情報収集に役立たないのかもしれない。おじさんAIよりは女子と話したい人が多いのだろう。

「りんな」とはテキストベースでのやり取りだったが、「素子」は、アニメだが顔が見えて、主に罵倒されるが声が聞こえる。「りんな」は日本国民のほとんどが利用しているLINEで提供していたことから多くの人が「りんな」との会話を楽しんでいた。その点では「罵倒少女:素子」よりは利用のしやすさがあり、電車内での暇つぶしなどにもなった。(とはいえ、私自身は最初興味本位でやってみたものの、全く知らないAI女子高生と話していてもつまらないし、ネタもないし、そもそも暇でもないので、すぐに飽きてしまったのだが)

「罵倒少女:素子」は罵倒するというAIで期間限定での提供で、サイトには「世界初、AIに罵倒される12日間」とあり、「過激で美しい音声が出ます。音量に注意してください」と注意書きがある。罵倒されることに快感を覚えるような特定の人にはうけるかもしれないが、「朝っぱらから声かけんじゃねえよ!」「少しは自分で考えろよ、無能」「なんでそんなに愚図なの?」などとAIに言われて、怒りを感じたり、むかつく人にはお勧めできない。

人工知能の強化と進化には、多くの情報やデータが必要だから、「罵倒少女:素子」はまだβ版だが、ここから少しでも多くの情報を吸い上げてAIを強化していくのだろう。暇な人は是非試してみてはどうだろう。なお、利用にはPixivのアカウントが必要となる。

▼「罵倒少女:素子」との会話例
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[PROJECT Smanta](β)「罵倒少女:素子」

【参照情報】
mebae
カイカイキキ
KADOKAWAの書籍『罵倒少女』の公式サイト

罵倒少女 Illustrated by mebae(Kaikai Kiki)
©mebae / Kaikai Kiki
[PROJECT Samantha]
©Sony Music Entertainment(Japan)Inc. ©Institute of Language Understanding Inc.
©pixiv

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佐藤 仁(さとう・ひとし)

2010年12月より情報通信総合研究所にてグローバルガバナンスにおける情報通信の果たす役割や技術動向に関する調査・研究に従事している。情報通信技術の発展によって世界は大きく変わってきたが、それらはグローバルガバナンスの中でどのような位置付けにあるのか、そして国際秩序と日本社会にどのような影響を与えて、未来をどのように変えていくのかを研究している。修士(国際政治学)、修士(社会デザイン学)。近著では「情報通信アウトルック2014:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)、「情報通信アウトルック2013:ビッグデータが社会を変える」(NTT出版・共著)など。