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リアルタイム需要予測でサービスを効率化 「AI運行バス」実現目指しドコモと未来シェアが協業

2017.03.10

Updated by Asako Itagaki on March 10, 2017, 10:11 am JST

NTTドコモと未来シェアは、「AI運行バス」提供を実現するモビリティサービスプラットフォームの共同開発に乗り出す。ドコモの「リアルタイム移動需要予測」と、未来シェアの配車システム「SAV(サブ)」の技術、および両社の知見とノウハウを組み合わせ、「移動需要に応じて」「最適な時間に」「最適なルート」を走行することが可能となるモビリティサービスプラットフォームの開発に取り組む。2018年度中の実用化を目指す。

ドコモのリアルタイム移動需要予測技術は、携帯電話基地局で把握した端末の位置情報を元に作成する人口統計データに、交通事業者の運行データ等を加え、AIによるリアルタイム処理を行うことで未来の需要を予測する技術。30分前の人口を10分周期で把握し、時系列で見たときに日本全国の人の動きを捉えられる。

未来シェアの「SAV」はSmart Access Vehicleの略称で、デマンド型ビークルであるタクシーと乗り合い型ビークルである路線バスの長所を融合し、ルートを固定せず需要に応じて乗合車両を走行させるシステム。従来人間が行っているオペレータによる配車指示やドライバーの走行ルートの判断を人工知能(AI)によりリアルタイム処理する。

AI運行バスは、移動需要のある場所、時間、乗車人数を事前に予測し、それに応じた走行ルートや配車数を決定して運行するバス。利用者は事前に乗車予約することなく、利用したい時に利用したい場所で、乗車することが可能となる。また、交通事業者は事前に移動需要の把握が可能となり、より多くの人を効率良く乗車させることで、無駄の無い運行による経費削減につながると期待される。

取組の背景として、少子高齢化や人口減少の進行により、需要はあっても利用者数や利用頻度が少ない路線の運行の継続が困難となり、廃線や運行本数の削減が行われる「交通空白地」が拡大しているという課題がある。AI運行バスにより受給をマッチさせることで効率良い交通サービスの運用が可能になり、交通空白地の解消が期待される。さらには、交通分野のみならず物流事業への応用等、新たなサービスの創出にも寄与する可能性がある。

ドコモは東京無線、富士通などと、リアルタイム移動需要予測技術を使った「AIタクシー」の実用化も進めている。東京無線のタクシー運航データ、気象データ、周辺施設データなど組み合わせた需要予測モデルで、30分後にどのエリアでタクシー需要が高まるかを予測する。2016年6月からの実証実験では、需要予測技術を利用したドライバーは平均に比べ売上高が約49%向上したという成果を上げており、2017年度中の事業化を目指している。

【報道発表資料】
モビリティサービスプラットフォームの共同開発に向けた基本合意書を締結 -「AI運行バス」提供に向けた検討を開始-

【参照情報】
タクシー需要が高まる場所を30分先まで予測--ドコモと東京無線ら「AIタクシー」公開(CNET JAPAN)

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板垣 朝子(いたがき・あさこ)

WirelessWire News編集委員。独立系SIerにてシステムコンサルティングに従事した後、1995年から情報通信分野を中心にフリーで執筆活動を行う。2010年4月から2017年9月までWirelessWire News編集長。「人と組織と社会の関係を創造的に破壊し、再構築する」ヒト・モノ・コトをつなぐために、自身のメディアOrgannova (https://organnova.jp)を立ち上げる。