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ラピッドプロトタイピングでものづくりベンチャーを支援する「コトチャレンジ」

2016.08.31

Updated by Yuko Nonoshita on 8月 31, 2016, 13:56 pm JST

日本の製造業がイノベーションの創出に苦戦する中、オムロンベンチャーズ(OVC)はハードウェア系ベンチャーを支援するインキュベーションプログラム「コトチャレンジ」を昨年より開催している。大企業ならではの豊富な経験と専門スタッフによる、ものづくりに特化した支援により新たな創造を後押しするのが狙いだ。

事業プランの応募は誰でも可能で、2回目の今回は全国から34チームの応募があり、そこから書類審査と面接を経て選ばれた5チームが、オムロンが運営する「ものづくりクリエイトラボ」でメンターやOBのアドバイスを受けながら、3ヶ月という短い期間でビジネスプランのブラッシュアップとプロトタイプの製作に取り組む。

ものづくり系スタートアップは世界でも数多く登場しているが、事業化の手段はクラウドファウンディングによる資金調達がほとんどで、目標金額は集めたものの製品化でつまづき、トラブルになるケースも少なくない。コトチャレンジはアイデアの段階からプロがアドバイスし、実際にラピッドプロトタイピングを行いながら短時間で事業プランを改善できる。

ものづくりは実際にやってみないとわからないことが多く、3DプリンターやNC切削機、レーザー加工機などの充実した機材を使ってプロトタイプが作れるのもチャレンジャーにとっては大きなメリットになっている。中には応募段階とは大幅にプランが改善されたチームもあった。

▼ラボでプロトタイプを細作しながら事業プランを改善するラピッドプロトタイピングスタイルの支援を行う。
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▼1期ではIoTベンチャーが誕生し、2つのプランが製品化に向けて動いている。
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技術と社会の課題解決に取り組むコトづくりを評価

プログラムの最終日にはDEMO DAYが行われ、100名を越える参加者と審査員の前でプレゼンとデモ展示が行われた。最も評価の高かったプランに対し賞金が贈られ、今回は遠隔地から利用できるバーチャル聴診器の開発に取り組んだAMIが選ばれた。

プランを提案した小川晋平氏は現役の医師で、当初は循環器内科医が聴診器を使って行う診察ノウハウをシステム化することを目指していたが、熊本地震で被災地診療に携わったことで遠隔でもサポートできる診療機器の必要性を感じ、新しい聴診器の開発を思いついたという。胸にあてるチェストピースの部分を工夫し、患者がきちんと聴診器を扱えているかが判断できる機能を取り入れた。将来的には家庭用血圧計のように、一家に一台ある製品にすることを目指す。
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参加者の投票で選ばれるオーディエンス賞は、唯一の学生チームだったiFACToryが選ばれた。台に乗せるだけで生野菜の賞味期限や消費期限を測れる「せんど計」は、技術的に実用化できるか不明ながら製品化の期待値が高い”コトづくりにつながるアイデア”だった点が評価された。
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また、人体通信でデータをやりとりできるウェアラブルタイプのNFCリーダーの開発に取り組んだeNFCは、実用性とニーズが高いことが評価され。特別賞が贈られた。アイデアは以前からあったが、メンターのアドバイスがあって実用化につながったという。今後は指紋認証との組み合わせやアプリ開発、デザインの改善など、コトチャレンジの参加で得られたネットワークを活かしてビジネス化を進めるという。
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高い技術力を持つ日本企業が今ものづくりにできること

コトチャレンジのもう一つの特徴は、華やかなものづくりベンチャーとは異なり、技術に自信はあるが専門的すぎて、通常のベンチャーやシード募集では難しそうなアイデアを支援している点にある。今回選ばれた残り2つのチームは、採血せずに肌にタッチするだけで測れる脂質計や水質管理を見える化するモニタリング技術など、専門家でなければ新しいアイデアかどうかも判断できないものであった。

▼メディカルフォトニクスの脂質計もかなり実用化の高いプランであった。
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▼水質管理のモニタリングシステムを開発したU.W.I.はオムロン社内から参加していた。
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日本の製造業の強みを活かしたベンチャー、イノベーションを生み出す場として、コトチャレンジの取り組みはとても興味深い。だが、プロジェクトのメンターを担当する社員やOBはほとんどがボランティアで支援していることから、なかなか回数を増やせないのが悩ましいところである。

コトチャレンジを運営するOVCの小澤尚志代表取締役は「専門性の高いアイデアをどう掘り起こし、実用化に結びつけるかはものづくり企業にとって大事なビジネスになるかもしれない。ものづくりは簡単ではなく、技術や市場の変化も早いが、大事なのは継続性で、今後もプロジェクトを通じて支援を続けていきたい」とコメントしている。

▼プロトタイプのデモ展示は多くの人から事業プランへの率直な意見を聞く機会にもなっていた。
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オムロンベンチャーズ コトチャレンジ

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野々下 裕子(ののした・ゆうこ)

フリーランスライター。大阪のマーケティング会社勤務を経て独立。主にデジタル業界を中心に国内外イベント取材やインタビュー記事の執筆を行うほか、本の企画編集や執筆、マーケティング業務なども手掛ける。掲載媒体に「月刊journalism」「DIME」「CNET Japan」「WIRED Japan」ほか。著書に『ロンドンオリンピックでソーシャルメディアはどう使われたのか』などがある。

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