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欧州委員会、アップルに145億ドルの法人税支払い命令 - アップルとアイルランド政府は反発

2016.08.31

Updated by WirelessWire News編集部 on August 31, 2016, 14:18 pm JST

アップル(Apple)がアイルランド法人を利用して大規模な租税回避を行っている件に関する調査を進めていた欧州委員会(European Commission)が現地時間30日、同社に対して、約145億ドル(130億ユーロ)の法人税をアイルランド政府に納めることを求める命令を下したが、これに対してアップルやアイルランド政府はさっそく反発する姿勢を示しているという。

欧州委員会がこの件で問題視していたのは、アイルランド政府がアップルに認めていたアイルランド子会社に対する税制面の優遇措置で、この問題について2014年から調査を進めていた同委員会は、この措置がEU加盟国による特定の企業への援助を禁じるEUのルールに違反しているとの結論に至ったという。また同委員会のマルグレーテ・ベスタゲール(Margrethe Vestager)委員は、この件について「アップルが欧州市場で上げた利益に対する実効税率は、2003年の1%から2014年には0.005%まで低下した」などとコメントしている。

なお、今回示された130億ユーロという課税額は、2003年から2014年までの利益をもとに算定されたもの。また欧州委員会は声明のなかで、2011年にApple Sales Internationalというアイルランド子会社が得た利益は160億ユーロ(約220億ドル)だったのに対し、同社が実際に納めた法人税は1000万ユーロ以下で実行税率は約0.05%だったといった例を示している。

欧州委員会の判断に対して、アップルはティム・クック(Tim Cook)CEO氏署名の公開書簡を発表し、そのなかで「(今回の判断は)企業の利益に対する徴税は、その製品やサービスの価値が生み出された国で課税されるべきものとする国際的に合意された原則に反するもの」「欧州委員会の主張が通った場合、欧州への投資や同地域での雇用創出に深刻かつ有害な影響が及ぶことになる」などと反論。また、アイルランド政府のマイケル・ヌーナン(Michael Noonan)蔵相も「欧州委員会の判断は、EU加盟国の持つ税制に関する主権を脅かすもの」などとして、この判断について控訴する考えを明らかにしたという。

なお、この話題を採り上げたThe Guardianでは、アイルランドが長年にわたって続けてきた税制の悪用などが今回の判断で違法とされたことを前向きに評価し、これで他のEU加盟国はアイルランドのような国の出方を心配する必要がなくなったなどとする税制専門家の見方が紹介されている。いっぽうBloombergでは、グーグル(Google)やフェイスブック(Facebook)などアップル以外の企業にも影響が及ぶとする見方や、EUと米財務省との関係悪化の可能性を指摘する見方もあると記している。

【参照情報】
State aid: Ireland gave illegal tax benefits to Apple worth up to €13 billion - European Commission
A Message to the Apple Community in Europe - Apple
Apple Ordered to Pay Up to $14.5 Billion in EU Tax Crackdown - Bloomberg
Apple Ordered by EU to Repay $14.5 Billion in Irish Tax Breaks - WSJ
Apple ordered to pay up to €13bn after EU rules Ireland broke state aid laws - The Guardian

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