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ALSOK綜合警備保障株式会社 商品サービス企画部次長 干場久仁雄氏

ALSOK綜合警備保障株式会社 商品サービス企画部次長 干場久仁雄氏(前編) IoT、AI、ロボットが拡張する、「見守る」セキュリティ

ヒトとモノを巡る冒険 #004

2016.10.26

Updated by 特集:ヒトとモノを巡る冒険 on October 26, 2016, 10:33 am JST Sponsored by ユニアデックス株式会社

「モノ」「ヒト」「サービス」の3つの分野で先進的な取り組みをされている企業様へのインタビューを通し、IoTがもたらす未来とそこまでの道筋を描きだすことに挑戦する本特集『ヒトとモノを巡る冒険』。第4回目は警備サービスの分野で IoT 化の先端をはしるALSOK綜合警備保障株式会社 商品サービス企画部次長/HOME ALSOK営業部担当次長 干場久仁雄氏に、ユニアデックス株式会社 山平哲也が、お話をうかがいました。(構成:WirelessWire News編集部)

ALSOK綜合警備保障株式会社 商品サービス企画部次長 干場久仁雄氏

干場 久仁雄(ほしば・くにお)
沖電気工業、日本ルーセントテクノロジー(現:日本アルカテル・ルーセント)、インターネット総合研究所、ウィルコムにて一貫して各種通信システムの設計開発、製品企画、事業開発、コンサルティングに従事。2010年に綜合警備保障(株)に入社し、ユーザー企業の立場から情報通信技術の利活用を推進中。

法人・個人共にきめ細かいニーズに対応する「セキュリティサービス」

山平:御社はさまざまなセキュリティサービスを提供されて、多くの方々に接しておられます。最近のセキュリティサービスにおける特徴や傾向を教えて頂けますか。

干場:サービス全般の話でいうと、日本の犯罪認知件数というのは下がっていて、2002年くらいがピークでした。ただ最近は皆、なにか「不安だな」と思うことが多いと思うんです。幸い、テロは日本では起こっていないのですが、気味の悪い殺人が増えている。

山平:そういった「不安だな」と感じさせるような事案は母数としても増えているんでしょうか。

干場:母数でいうとあまり多くないんですけれど、印象に残る事件で、理解しがたい理由の殺人が増えています。例えば2008年の秋葉原通り魔事件や、今年7月に起こった相模原障害者施設殺傷事件など、弱者を狙って、捕まっても構わない、確実に人を殺したい、というような事件ですね。

今まで我々が対応していたのは主に「窃盗犯」でしたが、今、法人事業に求められているのは、施設などでそのような事件が起きた時にすぐに駆けつける、即応性が求められています。相手は金品ではなく命を狙っているので、0コンマ何秒でも早く対応しないと、どんどん被害が膨らんでいく。この状況は2020年のオリンピックに向けてますます加速すると認識しており、これらに対抗する手段が、研究開発上も運用上も、求められています。

山平:このような法人でのニーズと比べると、個人向けにはなにか違う動きや特徴があるのでしょうか。

干場:「警備」というのは、身体、生命、財産を守るという目的があるのですが、今は個人のお客さま本人の高齢化が進んでいて、ご自身の身体が守る対象になってきています。つまり「見守り」という、介護施設への入所や在宅介護の前段階で「一人で住んでいるんだけど大丈夫かな」というところを警備がカバーしています。

3年位前に発売したホームセキュリティ商品は「みまもりサポート」という名前をつけたのですが、このサービスは、警備会社のサービスなのに防犯機能が無いんです。「何かあったらボタンを押してください、様子を伺います」ただそれだけ。このような見守りサービスが、個人向けではとても増えています。

山平:その「みまもりサポート」では、本来は警備サービスを提供されているいわば本職の警備の方が対応されるんですか?

干場:そうです。昔から「非常ボタン」は警備サービスについていますから、同じ扱いです。以前は呼ばれるのが強盗事件だったんですけれども、今はお年寄り自身が倒れられている、という事です。

山平:なるほど、個人向けの警備サービスもずいぶん変わってきていますね。個人向けと言うことで高齢者のお話がありましたが、他の属性の方々、例えば外国人についてはいかがですか。

干場:外国人については「民泊」という新市場が出てきています。みなさん普通に住んでらっしゃるところに、不特定多数の方が出入りし、しかも普段は空き部屋になっている。これは人が勝手に入って来る可能性が高まる少し危ない状況ですので、そこにホームセキュリティをしっかり入れるというような需要が徐々に出てきています。

山平:空き家というと、地方で空き家が増えているという話もありますが、御社のサービスでもそのような商品はあるのでしょうか。

干場:はい。「るすたくサービス」という空き家専門のホームセキュリティがあります。これは新聞や郵便が溜まっていたら回収し、水を流したり風を通したり、草刈りをしたり、というサービス付きのホームセキュリティです。家という財産をお守りするという目的は達しています。

山平:「ホームセキュリティ」という言葉がだんだんよくわからなくなってきました(笑)。

干場:あとストーカー事件も定期的に起きているので「レディースサポート」という専門の警備サービスもあります。これは堅調に需要があります。

山平:ストーカー向けセキュリティへのニーズは、やはり都市部が多いんでしょうか。

干場:全般的に一定数の需要はあります。三鷹や逗子での事件もありましたし。大変な仕事ですけれども、警察は事件が起きるまでは動けませんから、その前を抑えるのが警備の仕事ということで、取り組んでいます。

IT/インターネットを利用したサービスは10年前から

山平:これまでのお話で、今までの「ホームセキュリティ」の枠組みに収まらないサービスが増えていることがわかりました。そのようなサービスの裾野が広がりを見せる中で、IoTやAIという分野で注目している取組みや、実現されてきたものがあれば教えていただけますか。

干場:ホームセキュリティがわかりやすいと思いますが、現地に警備員は配置せず、インターネット回線を使って警備信号を送り集中監視を行うIoTに近い機械警備は、2005年から提供しています。

今は、誰もがいつでも情報にアクセスできるようになりました。センサーを買ってきて、インターネットでスマートフォンと繋げれば、自分で警備ができてしまう時代です。以前は24時間365日、信号を監視する手段がありませんでしたが、今はできます。しかもスマートフォンはすごく使いやすくなった。実際、「DIYセキュリティ」といわれる分野がアメリカでは広がってきています。

山平:スマートフォンの普及で確かにDIYはやりやすくなったでしょうね。

干場:弊社のオンライン監視サービスほどがっちりしたホームセキュリティではない領域での需要にお応えする為に、いくつか商品を出しています。例えば「アルボeye」は、家庭用のIPカメラを設置して、普段はお客さまご自身で画像を確認して頂き、家で変なことがあった場合は、弊社にご依頼をいただくと警備員が現場に急行するというサービスです。

▼「まもるっく」
「まもるっく」

その流れで出しているのは、「助けて」と信号が発信されると駆け付ける「まもるっく」です。これは加速度センサーが内蔵されていて、持っている人が倒れたら、アラームが自動で送信されます。IoTの道具を使うことで、ニッチで新しい需要に応えています。

▼「みまもりタグ」
「みまもりタグ」

「みまもりタグ」では、認知症の高齢者の靴に装着しておくと高齢者の方が家から出るとアラームが鳴り、何処へ行ったのかご家族がスマートフォンで捜索できるサービスを提供しています。

これらの商品は、まだ元気で日々ウォーキングを楽しんでらっしゃる高齢者の方に利用していただきたいと思って提供しています。歩いているとたまに転んでしまうこともありますし、少し認知症になってくると道がわからなくなってしまうんですね。「まもるっく」はハンズフリーで喋れるので、簡単な無線の代わりにもなり、便利なんです。意外とBtoBの需要も多く、働く高齢者や単独で営業される女性など、さまざまな需要を見つけて使っていただいています。

山平:こういった高齢者むけのサービスを個人で利用される方は、自分で自発的に持とうと思われるんですか、それともやはり家族が持たせるケースが多いのでしょうか。

干場:家族が持たせる方が多いと考えています。ご本人は元気なつもりでいらっしゃるので、敬老の日のプレゼントにどうぞとお伝えしています(笑)。BtoBの方が持たせる強制力がありますね。あとは、従業員にスマートフォンを持たせられないから代わりにこれを持たせる、というケースもあります。

このあたりがこの3-4年で出してきたIoT的な商品でしょうか。

IoTデバイス出現による効率化と、業務支援体制の変化

山平:このようなIoT的なというか、ITを活用した商品の利用が拡大することで、現場で警備されている方との連携や、人の担う役割が変わってきているというようなことはあるのでしょうか。

干場:基本的に「警備」というのは、人を沢山使う労働集約型のサービスなんですね。ところが高度成長期にコストも人件費も上がって来たので、現場は無人で、何かあれば25分以内に駆け付けるという「機械警備」が始まり、普及してきました。ですから効率化に貢献していると言えると思います。

山平:そうすると、警備サービスを担当される方が減っているというような状況はあるのでしょうか。

干場:採用難はずっと続いていて、最近は更に人手不足ですので、警備員をしてくれる人は少ないです。採用した方はできるだけ大事にして、働きやすい良い環境を作っていかなければなりません。その為にも色々な道具の開発が必要です。

例えばビルの常駐警備員ですと、そのビルに入っている会社の社長さんのお顔や車両ナンバーを覚えて対応するなどの、おもてなしが求められるんです。警備員が交代してサービスレベルが落ちないように、そして現場の負担が過剰にならないように、アシストをする仕組みや道具を入れていくことも今後は重要だと思っています。

ロボットが得意な分野は「案内」「受付」「監視」

山平:ALSOKさんはロボットの開発もされていますが、ロボットが提供しているサービスの内容と、人が提供するサービスは、どれくらい連携していて、また、どのように違うものなのでしょうか。

干場:ロボットが実際に警備する、というのはまだなかなか難しいんです。でも得意なこともあって、それは「案内」「受付」です。

警備員を見ていただけると分かると思うんですけれども、同じことをずっと言い続けることが多いんですね。「並んでください」「注意してください」という言葉を喋らせておくのをロボットに任せると、必要な人員が一人減る可能性が出てきます。つまり警備の中でも、やや単純作業に近い案内や巡回は、ロボットにやらせることができるんです。弊社では、案内や巡回警備をしてくれる「Reborg-X(リボーグエックス)」という商品があります。

▼「Reborg-X(リボーグエックス)」
「Reborg-X(リボーグエックス)」

商業施設や娯楽施設ですと、先進的なイメージを表現するためにロボットを使う、という需要もあります。もちろん実際に夜間の巡回警備をロボットに回らせることで、監視カメラの目が届かないところの監視もできます。

このあたりが、今実際にロボットが使われているところですね。

後編に続きます

干場 久仁雄/山平 哲也

IoTの実現に向けたユニアデックスの取り組みはこちらをご覧下さい。

【聞き手】山平 哲也
ユニアデックス株式会社 エクセレントサービス創生本部 プロダクト&サービス部 IoTビジネス開発室長
企業向けシステムエンジニアとしてキャリアをスタートし、インターネット普及に伴いIPネットワーキング技術などを担当。2001年に米国シリコンバレーにおける拠点立ち上げ。2007年からICTソリューションのマーケティング企画部門を経て、現在、IoTを中心としたエコシステム構築とビジネス創造を推進している。
山平哲也氏によるインタビュー“あとがき”は、ユニアデックスのオウンドメディア「NexTalk」をご覧ください。

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特集:ヒトとモノを巡る冒険

ユニアデックスは、IoTで新たな価値を創造すべくさまざまな取り組みを進めています。本特集では、エクセレントサービス創⽣生本部 プロダクト&サービス部 IoT ビジネス開発室⻑である山平哲也が、「モノ」「ヒト」「サービス」の 3 つの分野で先進的な取り組みをされている企業様へのインタビューを通し、IoTがもたらす未来と、そこへ至る道筋を描きだすことに挑戦します。(提供:ユニアデックス株式会社