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なぜシェアバイクは英マンチェスターでうまくいかなかったか

Why sharing bike did not work in Manchester

2019.12.05

Updated by Mayumi Tanimoto on December 5, 2019, 11:37 am JST

前回は、電動スクータービジネスはメンテ費用がかさむのでどうもうまくいかなんじゃないか、という話を書きましたが、実は前例が存在します。この問題は、シェアリングエコノミーの設計思想自体の問題かもしれません。

その典型的な例は、イギリスにおけるシェア自転車サービスの撤退です。

北部のシェフィールドやマンチェスターでは、自転車の扱いがあまりにも荒く、盗まれる、草むらに放置される、放火される、徹底的に破壊されるなどが相次ぎ、サービスが成り立たなくなってしまいました。2018年から2019年にかけて、中国の「Ofo」や「oBike」が撤退しています。

シェア自転車の窃盗や破壊があまりにも多いため、シェフィールドでは地元警察が自転車絡みの捜査はもうやらないと公言したほどです。

民度が高そうなイギリスでなぜこんなことが起こってしまうのか、と思う方が多いかもしれません。

そもそもイギリスというのは、一応先進国ではありますが、国内の経済格差と階級格差が大変大きく、ひとつの地域の中で凄まじい格差があるのです。

さらに、北部と南部での格差というのもかなり大きいです。

マンチェスターやシェフィールドのような北部の都市の多くは、産業革命の頃に重工業や軽工業が起こって大変栄えていたのですが、80年代の産業改革ですっかり地元の産業は衰えてしまい、今では貧困地区が並ぶ大変貧しい地域になってしまいました。

仕事というと、地元の市役所や賃金が安いサービス業ばかりで、ロンドンとは大違いです。公立の学校には、給食代を払えない子供が大勢います。生徒の家庭が貧しい割合がある程度に達しているので給食費が無料になっている、という統計が学校ごとに発表されるほどです(つまり親は、こういう統計を見て子供が行く学校を決めるのです)。

そういう地域ですので、窃盗や公共物の破壊といった犯罪が大変多く、経済的に貧しいためにモラルが崩壊している地域も少なくありません。

それでも、どちらの都市もマンチェスター大学やシェフィールド大学といった大学があって、一応大学町でもあるのですが、いかんせんお金がないので犯罪の多さは日本の比ではありません。

こういった社会状況があるところでは、公共物を大事に使うといった感覚がどうしてもなくなりがちです。

また、簡単に手に入りそうな物があれば、安価なものでも無理矢理入手して転売してしまったりすることもあります。それだけ貧しいということなんです。ですから、こういう街では公共サービスやシェアリングサービスがうまく機能しないわけです。

 

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谷本 真由美(たにもと・まゆみ)

NTTデータ経営研究所にてコンサルティング業務に従事後、イタリアに渡る。ローマの国連食糧農業機関(FAO)にて情報通信官として勤務後、英国にて情報通信コンサルティングに従事。現在ロンドン在住。