Glastonbury Festival

IoTと企業のブランディング

IoT and enterprise branding

2017.01.25

Updated by Mayumi Tanimoto on 1月 25, 2017, 07:55 am JST

EU離脱動き出したので混乱しているロンドンですが、今週は南部で開催されていたIoT Tech Expo Global に行ってきました。

今回のイベントは若干狭めの会場で開催されていたのですが、大盛況でコートのクロークも満杯、カフェには席が一切ないという状況で、ここ最近のソーシャルメディア系イベントが若干閑散としているのに比べると凄まじい熱気でした。昨年後半辺りからIoT を事業会社でも重要戦略して考え始めたので、テック系以外の来場者が多かったのも超満員だった理由でしょう。

初日から色々おもしろいインプットがありましたが、今回は「いかに付加価値を産み出すか」という議論が目立ったことが気になりました。昨年前半あたりまでは、単にデバイスを繋ぐ、データを集めるとう話が多かったわけですが、マネタイズの議論が真剣になってきた気がします。

初日の How is the IoT shaping consumer-brand relationships in retail and beyond? というパネルディスカッションでは、企業がIoTをどのようにブランディングに生かすか、という興味深い議論が繰り広げられました。

IoTとブランディングがどのようにリンクしているか、ぱっと思い浮かばない方もいると思いますが、ポイントは「IoTで消費者に刺激的な体験を与えることがブランディングにつながる」という点です。

議論の中で紹介されていた例として、イギリスの大手携帯電話会社のOrange(現EE)が、以前イギリス最大の音楽フェスであるGlastonbury で提供していた「Text Me Home Tent」というサービスは示唆が多いように思いました。

このサービスではOrangeがユーザーにアンテナと受信機を提供し、テントにつけてもらいます。ユーザーが携帯電話で指定された番号へSMSを送信すると、テントの明かりがついたり、テントから好きな着メロを鳴らすことが可能です。会場は真っ暗なので、遠くから送信したSMSでぱっと明かりがついて、しかも着メロで場所がわかるとかなり便利です。

このフェスはチケット代もテントの宿泊代金も高いので、近年では「中流以上のリア充がマウンティングするための必須イベント」と呼ばれていますが、友達や彼女の前で、自分達のテントにだけ携帯でパッと電気がついて、お気に入りのアーティストの曲が流れてきたら、ドヤ顔できます。ユーザーの心理をよく理解した、痒いところに手がとどくようなサービスです。

同行者に「これってOrangeのサービス」といったら「ええ、ちょっとおもしろい会社じゃない?」と話題になるでしょう。口コミ効果も期待できます。

Orangeは昔から若い人向けのブランディングがうまく、契約者は毎週水曜日に映画館で無料で映画を見ることができるとか、ソーシャルメディアを使ったキャンペーンもかなり早いうちからやっていたわけですが、「Text Me Home Tent」が実施されたのも2004年とIoTがハイプになるかなり前です。

今は技術的に似たようなサービスを提供するのが遥かに簡単になったわけですが、こういう「しかけ」とか、口コミ効果も期待したブランディングとして、IoTを活用したサービスを提供する企画はまだまだ少ないように思います。

IoTというと、ついついハードウェアやソリューションを「売る」、という側面で考えがちですが、テレコムや小売、保険、金融などの業界は、ユーザーとして、消費者向けのイメージ作り、顧客サービスの一つとして、IoTを活用するのもありでしょうね。

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谷本 真由美(たにもと・まゆみ)

NTTデータ経営研究所にてコンサルティング業務に従事後、イタリアに渡る。ローマの国連食糧農業機関(FAO)にて情報通信官として勤務後、英国にて情報通信コンサルティングに従事。現在ロンドン在住。

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