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マルチホップネットワーク・LPWA・エッジコンピューティングを組み合わせたIoTプラットフォーム、オムロンなどが実証実験を開始 

2017.06.01

Updated by Asako Itagaki on June 1, 2017, 06:59 am JST

アーキテクトグランドデザイン(以下AGD)、オムロン、慶應義塾大学の三者は、2017年5月31日より、LPWAとマルチホップネットワーク技術およびエッジコンピューティング技術を組み合わせたIoTプラットフォーム「IoT PLANET GATEWAY」の実証実験を行う。オムロンの「環境センサー」を使用して、離れた拠点から信頼性の高い環境データを収集する。

IoTではさまざまなセンサーにより収集できるデータの量が増えているが、クラウドへの通信量や頻度の増大による無線ネットワークの信頼性・安定性低下が課題となっている。本実証実験では、収集するデータをセンサー側でエッジコンピューティング技術により処理してから伝送することで、離れた拠点から信頼性の高いデータ収集を実現することを検証する。

環境センサーは、温度・湿度・照度・気圧・音圧・加速度センサーを1つのモジュールに搭載し、収集したデータを内部処理できるセンシングデバイス。例えば、温度と湿度の関係を処理することで熱中症の警戒指数を出力するといった処理が可能になる。オムロンは、本実証実験で使用する環境センサーのデータ構成を、長距離伝送向けに最適化する。

ネットワークはAGDがPWA技術を最適化し、省電力かつ数十kmの長距離伝送を可能にしたLPWA技術を使用。マルチホップネットワーク技術と組み合わせてさらにLPWAの通信距離を向上する。

実証実験は慶應義塾大学の日吉キャンパスと周辺施設で実施する。日吉キャンパス内にマルチホップネットワークを敷設し、ネットワークの各ノードには環境センサーを取り付ける。これらのセンサーから取得されたセンシングデータを、日吉キャンパス内に設置したエッジサーバーに一度集約し、数km離れた周辺施設に設置したコアサーバーにLPWA技術を介して無線伝送する。慶應義塾大学は、自律分散ネットワークを活用したセンシングデータ、モニタリングに適したサービスアプリケーションを構築する。

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最近増えている豪雨による土砂災害や堤防決壊などでは、地形や構造物のひずみや地鳴りなどの前兆現象をとらえることができれば、人的被害を軽減することができる。そのためには広い範囲にセンサーを設置した環境モニタリングが不可欠だ。本実証実験で構築されるネットワークは、特に居住地域が分散した地方都市において、各地域の温度や湿度など様々な環境データを安定的に取得することにより、異常気象による災害から住民や農産物、社会インフラなどの見守りに役立つことが期待される。

【報道発表資料】
アーキテクトグランドデザイン、オムロン、慶應義塾大学が共同で、LPWAとエッジコンピューティングを業界で初めて組み合わせたIoTプラットフォーム「IoT PLANET HIGHWAY」による実証実験を開始

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板垣 朝子(いたがき・あさこ)

WirelessWire News編集委員。独立系SIerにてシステムコンサルティングに従事した後、1995年から情報通信分野を中心にフリーで執筆活動を行う。2010年4月から2017年9月までWirelessWire News編集長。「人と組織と社会の関係を創造的に破壊し、再構築する」ヒト・モノ・コトをつなぐために、自身のメディアOrgannova (https://organnova.jp)を立ち上げる。