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AIはセキュリティ業界の救世主となるか?

Would AI help security industry?

2017.05.18

Updated by Mayumi Tanimoto on May 18, 2017, 11:28 am JST

イギリスでは先週起こったWannaCryによる攻撃で多数のNHS(国民保険サービス)が被害にあった件が大炎上しています。

予約やスケジュールの確認など事務作業がストップしたばかりではなく、患者の情報の閲覧、医療機器の使用、コールセンター、ドアのロックまで影響が出たために、業務が麻痺状態の病院も多く、手術が受けられない患者もでてきています。救急車すら受け入れできない病院もあるほどです。

ICS-CERTも医療機器に対するWannaCryの影響に関してアラートを出してますね。

そんな中で、Darktraceのソリューションを導入していた病院は被害を回避した件が話題になっています。

Darktraceはケンブリッジ大学の研究者が母体となっており、Autonomy 創業者のMike LynchのInvoke Capital、TenEleven Ventures 、SoftBankなどの投資を受けています。今週に入り石油と天然ガス業界向けのセキュリティ事業でSiemens との提携を発表しています。

回避した病院は同社のEntrerprise Immune Systemを導入していましたが、この製品は、ボックスとソフトウェアをネットワークに実装すると、自動的に脅威を発見します。Antigenaという自動応答システムが含まれており、脅威を発見するとデバイスの接続を遅くするか切断し、通常業務には影響を与えません。

この製品の面白い点は、人間の免疫機能の仕組みを応用しているところですね。普段からネットワーク内のユーザーの行動パターンを学んでおいて、脅威が発生すると異常な動きとして認識し、脅威を排除します

これまでのソリューションは脅威に対して壁を作る方向で動いていたわけですが、Entrerprise Immune Systemの場合は、人間の免疫機能の様に、一旦脅威を受け入れ、問題がある場合は除去し、さらにマシーンラーニングが人間の体のようにパターンを学習していくというわけです。

セキュリティソリューションを次々に導入したり、レガシーシステムが混在している組織だとパッチの管理だけでもかなり大変で、NHSのように予算の問題もあるわけで、DarktraceのソリューションのようなAIを活用した製品はセキュリティ対策の打開策になる可能性は高そうですね。

ところでこのソリューション、ネタ元はケンブリッジの数学者であり、ITと他分野の協業の結果です。人間の免疫機能の仕組みをITに応用するという分野横断型なアイディアな実にケンブリッジらしいと思った次第です。

ケンブリッジは北米の大学街に比べると極めてこじんまりしていて(日本の感覚で言うと村レベル)、街中は知り合いだらけです。研究者や学生は「カレッジ」に所属していますが、カレッジには様々な専門分野の人が集まっているので、ラウンジでテレビを見ていたり、食堂でご飯を食べていると、だんだん知り合いや友達ができて、自然と他の分野の人と協業する機会が産まれたりします。

大学も街もユルユルした雰囲気で、長靴を履いて暮らすのがピッタリ来るような感じなので、切羽詰まって競争する感じでもないので、自然に他の人と協力し合ったり、いろいろアイディアを交換してみる気になるんじゃないかなあと思います。

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谷本 真由美(たにもと・まゆみ)

NTTデータ経営研究所にてコンサルティング業務に従事後、イタリアに渡る。ローマの国連食糧農業機関(FAO)にて情報通信官として勤務後、英国にて情報通信コンサルティングに従事。現在ロンドン在住。

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