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多岐にわたる支援策は自治体のやる気を引き出せるか?「オープンデータシンポジウム2016」(2)

2016.11.25

Updated by Yuko Nonoshita on 11月 25, 2016, 07:25 am JST

「オープンデータシンポジウム2016」の後半では、開催地となった神戸市やJリーグでの取組み、海外で始まっているシェアリングシティの動きなど、さまざまなジャンルでのオープンデータの活用事例が紹介された。

前半の様子はこちら

課長級職員全員参加のリテラシー教育に踏み切った神戸市

攻殻機動隊とのコラボ「神戸市公安9課」オープンデータのポータルサイト公開など、先進自治体の中でも積極的な取組みを進めている神戸市では、「利活用には人材育成や自治体職員の意識改革が不可欠」とし、課長級全職員を対象とした「神戸市データアカデミー」などを実施している。内容はオープンデータ伝道師によるリテラシー教育で、神戸市企画調整局の松崎太亮課長によると、今後さらに体験者が講師となってセミナーやワークショップを行い「現場の人間がなるべく関わることで意識を変えていきたい」と話す。

▼神戸市ではオープンデータの公開だけでなく職員の教育にも力を入れている。
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スポーツにデータ活用はもはや必要不可欠

スポーツの分野ではデータ活用が急速に進んでいるが、「Jリーグでは全53クラブが個々にデータを囲い込み、フォーマットもばらばら」という、オープンデータと同様の課題を抱えていることが、日本プロサッカーリーグ事業の出井宏明部長から説明された。今後は、競技とチームの強化、マーケティング、視聴と観戦体験の大きく3つを活用先に設定し、データ共有によるサービスの広がりを目指す。また、トラッキングデータコンテストの開催や、センサー付きウェアで試合中のデータを収集する新技術を取り入れるなど、データの扱い方のバリエーションも拡げていくとしている。

▼Jリーグはクラブ間のデータ仕様が異なるため共通化で利活用先を拡げることを目指す。
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世界で進むシェアリングシティとは?

国際大学GLOCOMの庄司昌彦准教授からは、スマートシティとあわせて注目されているシェアリングシティの動きとそれに伴うデータ活用のあり方が紹介された。ソウルでは都市政策として、公用車をカーシェアリングにするなどシェアリングシティの取組みを進めている。他にもサンフランシスコやアムステルダム、ミラノで「埋もれたデータを社会的な資源として発掘し、官民双方のデータとあわせて活用する」動きが進められており、日本でも社会課題を解決する方法の一つとして、検討する必要があるのではないかと提案した。

▼データを活用したシェアリングシティを都市政策に採用する都市が増えている。
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データの可視化がもたらすメリットを可視化する

パネルディスカッションは、オープンデータの今後や活用のあり方について議論が拡がった。

庄司氏のシェアリングシティの話に対し、パネルディスカッションに参加した総務省の渋谷闘志彦企画官は「半年ぐらい前から日本でもシェアリングを何らかの形で応援する方法を考えており、ICTやIoTとの組み合わせで支援を行っていきたい」とコメント。具体的には「IoT創出地域支援」があり、医療や防災、農業に対してIoTとシェアリングを組み合わせた支援が進められる予定だ。

オープンデータは課題やタスクの可視化に有用であり、神戸市の松崎氏は「学校の部活指導のノウハウなどをある程度数値、データ化できれば、初めて担当する教師の苦労を軽減でき、生徒のメリットになる」とコメント。Jリーグの出井氏は「強くなるために何をどうがんばればいいかを数値化するのもありだが、失敗よりも実はうまくいったことを言語化する方が難しく、それらが可視化できれば」とし、データ分析にもアイデアが必要であることを述べていた。

アイデアを考えるにあたり「データサイエンティストを採用していくことも必要か?」という問いに対し、出井氏は「採用できるかどうかクラブで差がつくので悩ましい」としつつも、「専門家の協力はあったほうがよいので今後対応を考えたい」とコメント。サッカーが盛んなヨーロッパでも取組みはこれからで、渋谷氏は「これまでICTとスポーツがつながる発想をしてこなかったが、今後は取り入れる方向で考えたい」とコメントしていた。

▼パネルディスカッションではオープンデータの今後について様々な意見が交わされた。
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ヒト,モノの両面から多数の支援策を実施

最後にプログラムの締めくくりとして、内閣官房の龍澤直樹企画調査官から内閣官房IT総合戦略室が行っている地方公共団体の取組支援策が紹介された。人材やスキル、予算といった問題解決のために、データカタログサイトやダッシュボードを提案し、成功事例をまとめた「オープンデータ100」も公開している。他にも、自治体クラウドの推進、農地情報公開システム、マイナンバー制度の活用に取り組んでおり、オープンデータ伝道師によるサポートや政府CIOが自治体の首長を直接訪問して、必要性をアピールしていくと説明している。

いずれにしても、オープンデータ化を進められる自治体や組織、企業はすでに始めているが、難しいのが理由を探してでもやりたがらない自治体をどうするかである。国はヒトとモノの両方向からさまざまな支援策を強めているが、必須事項となるには先進自治体の成功事例がもっと必要であり、市民の理解や協力を増やす努力もあわせて必要になりそうだ。

▼内閣官房から自治体に向けて様々な支援策が行われている。
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イベントの模様は各プログラム毎にYouTubeで公開されている。プログラム一覧はこちら

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野々下 裕子(ののした・ゆうこ)

フリーランスライター。大阪のマーケティング会社勤務を経て独立。主にデジタル業界を中心に国内外イベント取材やインタビュー記事の執筆を行うほか、本の企画編集や執筆、マーケティング業務なども手掛ける。掲載媒体に「月刊journalism」「DIME」「CNET Japan」「WIRED Japan」ほか。著書に『ロンドンオリンピックでソーシャルメディアはどう使われたのか』などがある。

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