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なぜロンドンはUberを禁止したのか?

Why did London banned Uber?

2017.09.25

Updated by Mayumi Tanimoto on 9月 25, 2017, 11:12 am JST

ロンドンでUberの営業免許が停止になったことが話題になっています。欧州のIT拠点であることを目指すロンドンが、ギグ・エコノミーの代表のようなUberを追い出しにかかったことは意外に感じる方がいると思いますが、体感としては、まあ仕方がないかなという印象です。

禁止の理由として、知長が労働党なので単なるタクシー業界の既得権保護だろうという意見もあるわけですが、個人的にはそれ以外の理由も大きいなと思うわけです。

まず、一番の理由は街中の渋滞ですね。

ロンドンにはUberのドライバーが4万人ぐらいるんですが、Uberが増えてから明らかに車が増えました。ロンドンは北米の大都市なんかに比べたらうんと狭い街で、道路も狭いところが多かったりしますので、ちょっと車が増えると大変です。

次は、ドライバーの質です。

あくまで素人ドライバーなので、メチャクチャな所で車を止めて客を拾っていたり、運転マナーもかなり微妙だったりします。なにせロンドンには世界中から人が来るので、運転マナーもルールがイギリス標準からかなりずれてる人もいます。ウインカーを出さない、スピード違反、信号無視など、日本だと考えられないレベルで結構あります。

3つめが安全です。

ドライバーは法定の安全衛生管理に従っていないので十分な休息をとっていませんから、日本の激安高速バスの様に事故る可能性が高い。さらに、プロのタクシー運転手と同じバックグランドチェックを受けてないので、犯罪や運転違反のチェック、健康診断も緩いです。何分ロンドンには世界中から人が来てしまうわけで、免許書はイギリスのに書き換えるものの、母国の運転免許は賄賂で入手可能な国もありますし、犯罪歴だって母国のはチェックしようがありません。行政としてはこれはかなり頭が痛い問題です。ただでさえ犯罪が多いのに、これ以上リスクを増やすのは勘弁して、というのが本音なんでしょう。

4つめは、イギリスとしては、ギグエコノミーに若干歯止めをかけたいというのがあるのでしょう。

昨年10月には、イギリスの労働審判でUberが訴えられ、ドライバーは自営業者ではなく雇用状態にあるので、最低賃金を払うべしという判決がでているわけですが、政府は昨年から、ギグエコノミー系のサイトで「自称」自営業の雇用形態を規制する見直しをはじめています。

政府的にみると、テクノロジーの進展はありがたいが、社会としての安定を確保するには、企業には賃金相場を下げてほしくないという意図があるわけですね。このあたりは、イギリスはアメリカとはなんだかんだ言って哲学のレベルで違いますね。若干保護主義的なところがあり、そのあたりはやっぱりヨーロッパなんです。

ブラック企業が増えれば企業の表面上のパフォーマンスが上がるわけですが、社会全体としてはどうか、という話になるのと同じ。要するにバランスの問題ですね。

5つめは、観光の側面です。

ブラックキャブはロンドンのイメージアイコンで、観光の売りでもあるので、Uberが台頭することで潰れてしまうのは困るわけです。業界保護というよりも、教会とか歌舞伎座を守るようなものでしょうか。この点はアメリカと事情が違う。ただ、ブラックキャブだと若干高くても、車椅子やベビーカーごと乗れますし、通りの名前だけで一発で目的地に到着するのでかなり便利なんですけどね。

テクノロジーによる発展を支援し、一方で保護もする。この辺のバランスをどう考えるか、AIやIoTの台頭で働き方が大きく変わるとするなら、考えておくべきことなんですけども、どうも日本だと規制緩和の話ばかりになりがちなのはいかがなものかと思うわけです。
以下はUberに関して以前書いた記事です。

そろそろシェリングエコノミーのダークサイドに目を向けるべきだ

海外でUberが流行る値段以外の理由(1)

海外でUberが流行る値段以外の理由(2)

 

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谷本 真由美(たにもと・まゆみ)

NTTデータ経営研究所にてコンサルティング業務に従事後、イタリアに渡る。ローマの国連食糧農業機関(FAO)にて情報通信官として勤務後、英国にて情報通信コンサルティングに従事。現在ロンドン在住。

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