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デジタル化の波に乗れない日本の銀行

Japapense banks and digital revolution

2018.02.17

Updated by Mayumi Tanimoto on February 17, 2018, 12:52 pm JST

ここ最近日本では、大手銀行のリストラや支店削減計画が話題になっていますが、コンサルティングファームのマッキンゼーが昨年1月に発表した「A brave new world for global banking」という報告書を読むと、日本の銀行がデジタル化の波によってかなり大きな脅威にさらされているというのがよくわかります。

この報告書は日本ではあまり話題にはなかったのですが、興味深いのは「デジタル化により銀行は業務の変革が必須だが、特に手数料で稼ぐ分野の減収が激しい」と述べているところです。

先進国だけではなく新興国の銀行も減収が予測されているのですが、日本の銀行の状況というのは他の国に比べて際立っています。

日本の場合、手数料ビジネスの中心である消費者金融、支払い、資産管理は21-25%の減収が予想されるというのです。米国や欧州の場合、これら分野での減収は13-18%なので日本の打撃の大きさがよく分かります。

日本の銀行がここまで大きな影響を受ける可能性があるのは、そもそも他の国に比べると業務の効率化やデジタル化があまり進んでいない、というのがあるように思います。日本の銀行だけ使っているとなかなか気がつきにくいのですが、欧州であっても、日本の銀行と比べると業務の効率化やデジタル化がかなり進んでいます。

口座の開設ひとつとっても状況が大きく違うことに驚きます。

例えば、英国の場合、口座を開設するには、シンプルな申込書のみで、印鑑も最初からありません。新興のチャレンジャーバンクの場合は、スマホだけで申し込み完了で10分ほどで口座が作れたりします。

一方、日本で大手の銀行で口座を開設しようと思うとまず印鑑が必要ですし、申込書に書く内容も非常に細かく手間がかかります。ネット主体の銀行の場合でも手間がかかります。

銀行業務の中に目を向けると、その違いはさらに明らかで、日本の銀行では各種書類や印鑑など「存在することが儀式化」しています。全く付加価値がない稟議書や申請書があり、そこに印鑑を押してPDF化して担当者に送付していたり、顔合わせだけのために行う会議が大量に存在したりしています。

プロセスの適正化やグローバル化も、かなり遅れている印象を受けます。仕事の流れがデジタル化の恩恵を受けておらず非効率ですから、労働時間は長くなり中にいる人々のストレスもかなりのものです。

銀行の窓口には多くの行員がおり、ATMの横には操作を指導する人が何名か立っており、入り口にはよくわからない案内係の人も立っていたりします。一見、至れり尽くせりではありますが、支店内のATMの数は欧州の銀行の支店に比べると少ないですし、入金のみ、出金のみといった機能に分かれていませんので待ち時間も長く、大変効率が悪いのです。そして銀行は、なぜか3時に閉まってしまいます。

こういう状況を見た欧州の人々は、 通常、日本はすごいというどころか、あまりの非効率性に呆れてしまいます。もちろん日本の銀行は間違いが少なく、中の人々の一人ひとりは労働意欲も資質も高いのですが、業界全体として非効率で技術の恩恵を受けていないという話です。技術革新を活用せずに、人力で埋め合わせているという、日本の停滞した産業の標本のようなものなのです。

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谷本 真由美(たにもと・まゆみ)

NTTデータ経営研究所にてコンサルティング業務に従事後、イタリアに渡る。ローマの国連食糧農業機関(FAO)にて情報通信官として勤務後、英国にて情報通信コンサルティングに従事。現在ロンドン在住。

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