VALU キャプチャー

個人上場市場VALUの秘めた可能性

2017.07.25

Updated by Ryo Shimizu on 7月 25, 2017, 15:45 pm JST

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最初はどうも胡散臭いかもしれないと思われていたVALUの勢いがどうやら止まらない。
そしてここまで走りきってしまったということは、世の中がVALUという新しい市場を受け入れ始めているということでもある。

仮にVALUが今後何らかの法規制を受けるとしても、既に流通してしまったVALUを取り戻すことは難しいので現実問題としてはVALUに法規制がされるとしても限定的なものになるだろう。

そしてここに来て、ネットのレジェンドである小飼弾氏の参画があって、いよいよVALUは社会に受け入れられていく流れが出来つつある。

なぜ、VALUがどことなく胡散臭く思えるのか。まず第一に、最初に飛びついた人たちがいわゆる炎上マーケティング中心の人たちであり、その人達が煽りに煽ったからだ。

次に、そもそも価値のないもの(個人のVALU)に価値があるかのように思わせること、そして人の価値を可視化し、人間の価値に値段(VALU時価総額)を付けてランキングする行為がどことなく後ろめたい感じがすることなどがある。

ただ、VALUは単に変動相場制のファンクラブ会員権のようなものだと考えることも出来る。我々日本人はいちどVALUのプロトタイプとも言える現象を目撃している。アイドルの握手券付きCDなどだ。CDが持つ本来の目的は横に据え置かれ、CDにオマケでついてくる握手券の枚数だけアイドルと二人の時間を過ごせるというシステムがこの国に受け要られた瞬間、実はあの握手券CDは一種の仮想通貨として機能していたことを今頃になって思い知るのだ。

VALUを発行した側は、優待以外の特典は基本的になにも提供しない人が多い。
何も提供しない人が多い場合、その人のVALUを買うということは、単純にその人のファンであるということを意味するに過ぎない。

VAは言い換えれば個人通貨だ。個人通貨を個人が発行して、それをビットコインに変換できる。
実際の株式市場との違いはいろいろあるが、今後信用売りや信用買いがサポートされると、スキャンダルを仕掛けて意図的に株価操作したり、そもそも本人と仲良くなってインサイダー情報を入手したりといろいろな混乱が起きる可能性がある。

VALUが早期に問題化しないのはビットコインを使っているからで、今のところビットコインはある程度リテラシーの高い人しか買うことが出来ないから見逃されているが、ビットコインのような暗号通貨がもっと身近になるか、何らかの方法で円で直接VALUを買うことができるようになると話は一気に複雑化する。さらにいえば、VALUの運営会社がいまはたまたま日本にあるが、これがシーランド公国やその他法規制のゆるい外国に移転したり、もしくは今のところブロックチェーンとは直接無縁なVALUが、暗号通貨として流通しはじめるようなことがあれば、これはもう立派な事件である。

個人のVALUの初期値はTwitterのフォロワー数やFacebookの友達数などから算定される。
そこから個人のVALUを発行し、それが順次上がったり下がったりする。

ちなみに、VALUの恐ろしいことは、これが容認されていると、全く同じような仕組みをブロックチェーンのような仕組みを用いることなく、誰でも作って運営できるということだ。このような仕組みを技術的な特許で保護するのは難しいので、本当にアイデア勝負ということになる。

もし仮に、これが社会に容認されることになれば、社会のお金の回り方はもっと激しいことになる。

たとえば、シャープは株式市場を使わなくても、シャープの公式アカウントでVALUを発行すればいつでも瞬時に資金調達を行うことが出来る。もしかしたら、シャープがVALUを公開したら、中国企業に買収されなかったかもしれない。

シャープは企業Twitterアカウントが有名なのでたまたま例に挙げたが、たとえばシャープのロボホンのアカウントがVALUとして上場することもあり得るし、そうなればシャープはクラウドファンディングよりも効率的に資金調達が出来るかもしれない(ロボホンは先日1000万円のクラウドファンディングを成功させた)。

コレが何を意味するかというと、もはや「何でもあり」なのである。ヒトだろうがモノだろうが概念だろうがキャラクターだろうがなんでもかんでも上場できる。VALUの場合、TwitterアカウントとFacebookアカウントがひとつの歯止めになっているが、いまどき企業アカウントや製品アカウントを持ってる会社などゴマンとある。

要は、そういうアカウントがある日突然資金調達を実行することができるようになってしまう。今のところVALUで数千万単位で調達したという話はまだ聞かないが、いずれ市場が成長してくればそういうことは十分起きる可能性がある。

たとえばフレームワークだって上場できる。ChainerかTensorFlowかCNTKかKerasか、まあもちろんフレームワークを公開している主体が上場する意志があれば、だが。たとえばオープンソースプロジェクトはどれでも上場できることになる。オープンソースのパトロンになる似たようなサービスもあるが、VALUの方が圧倒的に分かりやすい。

このような個人通貨の概念は2000年代初期に鈴木健(現スマートニュース会長)が提唱した価値伝搬貨幣P.I.C.S.Y.に源流を見出すことが出来る。ただしこれはかなり複雑でわかりにくいものだった。

しかしVALUはP.I.C.S.Y.よりも遥かに単純で分かりやすい。要は値段が安いうちに応援した人は、値段が高くなったらいつでも利確できるのである。

VALUは誰が誰のVAを売ったり買ったりしたか可視化されているので、「あの人は口では応援すると言ってるけど今日オレの株を売った」とかがわかるようになっているのも面白い。

というわけでVALUにはこれからも注目していきたい。
筆者のVALUはこちら

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清水 亮(しみず・りょう)

ユビキタスエンターテインメント代表取締役社長CEO。1976年新潟県長岡市うまれ。6歳の頃からプログラミングを始め、16歳で3DCGライブラリを開発、以後、リアルタイム3DCG技術者としてのキャリアを歩むが、21歳より米MicrosoftにてDirectXの仕事に携わった後、99年、ドワンゴで携帯電話事業を立上げる。'03年より独立し、現職。'05年独立行政法人IPAより天才プログラマーとして認定される。

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