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イギリスの自動運転車用保険

UK's autonomous car insurance

2017.02.15

Updated by Mayumi Tanimoto on 2月 15, 2017, 14:00 pm JST

古くて頑固そうなイギリスも自動運転に関しては世界の先を行っているところもあります。2016年には、自動運転車に関する法律を発表した世界初の国となりました。

the Modern Transport Bill

この法律は、自動運転車、電気自動車、商用宇宙船、ドローンへの投資を促進する一方、自動運転車用の保険が提供されることを推進するものです。

このような政府の動きを受けて、民間サイドでも自動運転車の保険を提供する会社が出てきています。

Adrian Fluxはイギリス初の消費者向けの自動運転車用保険の提供をはじめました。完全な自動運転者は2020年まで市場に出回らない予定なので、この保険は、すでに自動駐車やオートパイロットなど、自動運転の機能の一部を搭載した車向けの商品になります。

ここで面白いのは、自動運転車向けの保険を売り出したのが、大手の保険会社ではなくAdrian Fluxだということです。

ここは元々クラッシックカーや、アメリカ式の大型ワゴンなど、規格外からは若干外れる車に対するニッチな保険を提供している会社で(普通の保険もありますが)、ブティック系の保険会社です。自動車のキーを忘れた場合の保険などユニークな商品もあります。

イギリスは趣味人が多いので、クラッシックカー愛好者も多く、こういうニッチな保険を売る会社が存在し、軍用車両や戦車用の保険を売る会社もあります。

ロンドン郊外であってもイギリスは家が大きいので、自家用ロケットランチャー運搬車や、自家用戦車を持っている人がいます。ロシアが近いのでロシアとかウクライナから輸入するのも難しくありません。軍も軍用車両を喜んで卸売してくれます。従って、こういう保険が必要になるわけです。

ほとんどの人は仕事が定時上がりなので、家に帰ってから車両の整備をしたり、部品の収集を熱心にやります。ですから、軍用車両の専門雑誌が本屋にあります。

なぜ軍用車両や戦車が必要かというと、それはミリフェスで軍装と、歴史的戦闘の再現を完璧にやるためです。野戦病院や軍用糧食も完璧に揃えます。夏休みや週末は、軍装で自家用戦車に乗ってフェスティバルに行きますので、一般道で戦車や兵士を見かけることがありますが、その多くは単なる趣味の人です。事情を知らない外国の人がパニックになって警察に通報することもあるようです。

話は戻りますが、こういう会社が保険を提供するということは、自動運転車は、自家用戦車のような「ニッチかつユニークな趣味的なもの」として扱われているという感覚が伝わってきます。

完全な実用化は2020年の予定ですが、「政府としては一応推進しますけど、私はそんなもんは乗るのは嫌だわ。あんたたち勝手にやってね」という雰囲気が伝わってきます。

イギリスの電車は壊れっぱなしですし、ボイラーもやたらと壊れますし(私は先日一週間風呂に入れず、近所の人の目を避けながら、真冬にタライで行水していたのです)、ネットは二週間ぐらい不通になるのが当たり前ですし、銀行口座から預金は消えますし、そういう状況ですので自動運転したら、間違って高速を逆走しそうだわ、ぐらいの感覚になるのはわからんでもありません。

ところで、『自動運転の論点』という新しい媒体で、自動運転に関してイギリスを中心とした欧州でのあれこれを書く「イギリスの本音」という連載を始めました。月1回程度の頻度で、特に社会制度や行政の視点から、いろいろな話題を書いていく予定です。第1回は、イギリスで議論されている自動運転のリスク管理の話を取り上げています。

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谷本 真由美(たにもと・まゆみ)

NTTデータ経営研究所にてコンサルティング業務に従事後、イタリアに渡る。ローマの国連食糧農業機関(FAO)にて情報通信官として勤務後、英国にて情報通信コンサルティングに従事。現在ロンドン在住。