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アバターを生成・育成してWEBインテリジェンスを調査する「HIWIRE」

2018.02.22

Updated by Hitoshi Arai on February 22, 2018, 12:00 pm UTC

イスラエルのインテリジェンス・サービス/ツールとして今回紹介するのは、「WIP (webintPro)」の「HIWIRE」というソリューションである。過去に紹介した「KELA」や「ClearSky」は、DarkWeb、SurfaceWebの世界を独自のツールでクローリングし、顧客にとっての脅威情報を調査・分析するもので、膨大なデータの収集と分析を基本としたサービスである。HIWIREはこれらとは少し異なり、アバターによるWebインテリジェンス調査のための仮想HUMINT(Human Intelligence)ツールである。既にある情報を調査するのではなく、アバターにより、「能動的」に情報を引き出してくる点が特徴である。

下記の画像は、HIWIREの画面キャプチャである。1段目に、HIWIRE COREとHIWIRE KINDERGARDENというセクションがある。COREの機能で目的に沿ったアバターを生成し、KINDERGARDENの機能で生成したアバターの育成を手助けする。

アバターを生成・育成してWEBインテリジェンスを調査する「HIWIRE」

例えば、アバターの属性として「英国に住むイスラム教徒の男性」を想定する場合、居住地の英国の住所を設定することで、PCの機能がすべてローカル(英国)の設定に入れ替わる。この場合であれば、英国版のウインドウズ、IPアドレス、エンコーディング、時計設定等に入れ替わる。従って、以降のパーソナル情報等の設定は、正に英国国内で入力している状態になる。

ソフトウエアにかかわる人であれば経験したことがあるかもしれないが、同じオープンソースのアプリなのに、海外では動いているのに日本では動かない、というようなことが良くある。多くの場合、エンコーディングの設定が異なるために入力したデータが正しく認識されないのが原因だ。このような細かな点まで一発で設定してくれる。

生成したアバターは、KINDERGARDENを使ってFcacebook等の各種SNSのアカウントを作り、それらしい発言を続けてゆく。Facebookのアカウントを作るときにローカルの電話番号を設定することもできる。また、このような細かな設定作業がもれなくできるようなテンプレートが用意されている。

このようにして完成させたプロファイル情報を使い、ターゲットとするアカウントを検索しながら、徐々につながりを拡げてゆくのだ。無論、テロリストや犯罪組織の調査をするような場合は、ターゲットに信頼されるようにアバターを育てることは容易なことではない。このような場合にはWIPのプロがサポートする。

画面の2段目には、POI、ANALYTICS、SURVEILLANCEというセクションがある。POIは、構築したコンタクトとそこから引き出せるネットワークを元に、調査テーマに関連することを強く発言している人(影響力のある人)を探し出す機能である。

ANALYTICSは、インターネット全体から各ウエブサイトの関連性やSNSでの交友関係を解析し、組織的な犯罪の調査や怪しいコミュニティの解析等に利用する。また、コミュニティ内で参加者が発言した内容を、調査テーマに沿ってシステムがスコアリングし調査・解析の材料とする。

SURVEILLANCEは、決められたキーワードについて、誰かがTwitter等で呟いた時にアラートを出し、発言場所等を特定する機能である。

特徴的なのは、3段目にある、HIWIRE DARKだ。仮に、SNSで怪しいターゲットを見つけた場合、その人がさらにDarkWebの世界で活動をしていないかどうかについても探索範囲を広げることができる。このセクションから、一般的にはアクセスすることが難しいDarkWebの中でのターゲットの行動を調べることもできるし、アバターを侵入させることも可能である。SurfaceとDarkの世界をシームレスに探索することが可能だ。

HIWIREは、日本では日本通信エレクトロニック株式会社が扱っている。日本でどのような顧客を想定しているのかを尋ねたところ、警察や防衛省など、国家の防衛や犯罪の防止を担当している組織を考えているようだ。民族・宗教の対立や、世界の政治情勢が内向き指向になっている状況など、不確実性が増す世界情勢のなかで、インテリジェンス能力なしに国の正義と平和は維持できるものではないだろう。

興味深いのは、一般企業でもこのようなツールに興味を持つところが出てきたという点である。例えば、社会インフラに関わるような事業をしている企業の場合、外部の脅威というだけではなく、その社員が反社会的活動にかかわったりすることも大きな事業リスクである。そのようなリスクの確認のために使えると考える企業が出てきているという。このような情報活動をする場合、個人情報保護の観点からも十分な配慮が必要であるが、プロアクティブな対応をすることが最大のリスクヘッジになるはずだ。

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新井 均(あらい・ひとし)

NTT武蔵野電気通信研究所にて液晶デバイス関連の研究開発業務に従事後、外資系メーカー、新規参入通信事業者のマネジメントを歴任し、2007年ネクシム・コミュニケーションズ株式会社代表取締役に就任。2014年にネクシムの株式譲渡後、海外(主にイスラエル)企業の日本市場進出を支援するコンサル業務を開始。MITスローンスクール卒業。日本イスラエル親善協会ビジネス交流委員。E-mail: hitoshi.arai@alum.mit.edu