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荒野 樹木 イメージ

イスラエルイノベーション特集とは何か

Israel's open innovation ecosystem

2018.01.18

Updated by WirelessWire News編集部 on January 18, 2018, 12:27 pm JST

一般に物資や資源が豊富な国は、その物量にモノを言わせた競争ができるので、諜報活動等にはあまり本腰を入れません。いざとなれば、小細工を弄することなく圧勝できるからです。逆に、資源が貧弱な国は頭脳あるいは教育(制度)に頼ることになるわけですが、イスラエルという国はその最右翼にいると考えてよいでしょう。

建国の経緯からして複雑な政治事情が絡んでいるのはみなさんご承知の通りですが、それ以上に、資源がないために知恵を絞らざるを得ない、さらにその知恵の品質を世界に向けてアピールし続けることで国の存在意義を訴え続けていかねばならない“宿命”にあるのがイスラエルだと言えるのかもしれません。

しかし経緯はともかく、その結果出てきた技術に眼を見張るべきものが多いのは確かです。何しろ“水(飲料水)”からして人工的に作らねばならない国です。半導体や最先端素材などのテクノロジーの現場では実は大量に水(洗浄水)を使う場面が多いのですが、ある技術レベルを実現するために、日本であれば大量の水があることを前提に開発を進めてしまうところを、イスラエルが驚異的なのは同じような技術レベルを、ほとんど水を使うことなく実現してしまうところにあります。

「なければ、作れ」がこの国の技術革新力の源泉になっているのです。資源が貧弱、という意味においては(水や森林を除けば)イスラエルと日本の置かれた状況はさほど違いがないはずですが、最先端技術の分野、特にサイバーセキュリティ、水・農業関連技術、バイオテクノロジーなどではおそらくイスラエルが圧倒しているでしょう。

イスラエルと日本の技術交流には比較的古い歴史が存在しますが、世界的に環境負荷に与えるインパクトを最小限にしようというムードが高まっていること、国連のSDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)が採択されたこと、あるいはグローバル企業にESG経営(Environment:環境、Social:社会、Governance:企業統治)などが求められ始めたことをきっかけに、そして2017年5月に日本政府とイスラエル経済産業省との間で「日イスラエル・イノベーション・パートナーシップ」に係る共同声明が署名されたことを受けて、今までにはない日本とイスラエルの技術交流が活性化すると予想されます。

今回の「イスラエルイノベーション」特集は、このような状況を受け、MITに匹敵する知の集積と創造が行われているテクニオン(イスラエル工科大学)に早くから着目し、サイバーセキュリティやIoT/AI、そして自動運転の要素技術の研究拠点(Hiroshi Fujiwara Cyber Security Research Center)を同大学に設置したインターネット総合研究所と共同で、イスラエルの最先端技術情報、そして“本当の”オープンイノベーション(open innovation)の方法論をお届けします。貴社の研究開発活動の参考になれば幸いです。

竹田茂(スタイル株式会社代表取締役/WirelessWireNews発行人)

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