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オリーブオイルの絞り滓から化粧品が生まれた偶然の物語

2018.06.24

Updated by Hitoshi Arai on 6月 24, 2018, 17:07 pm JST

いままで、主にサイバーセキュリティやAIなど、ハイテク分野でのIsrael-Innovationを紹介してきたが、今回は生活に身近な分野で「廃棄物を有効利用」した例を紹介する。

イスラエルの優れた農産物の一つにオリーブオイルがある。

日本でオリーブオイルといえばスペイン産やイタリア産が身近かもしれないが、中東地域の乾燥した気候と土壌はオリーブの育成には適しているようで、旧約聖書の時代からオリーブの文化はあった。

イスラエルでは、オリーブおよびオリーブオイルは食材として利用されているだけではなく、宗教・生活・文化に深く関わっている。

▼オリーブの実の収穫作業
オリーブの実の収穫作業

廃棄物だった絞り滓を活用する

オリーブオイルは、オリーブの実を圧搾することで製造するが、当然その搾油の行程の後には、水と大量の絞り滓が出る。

これを単なる廃棄物としないための試みは既にいろいろとなされていて、例えば肥料や燃料として利用したり、香川県では牛の飼料にしているようだ(日本オリーブオイルソムリエ協会のサイトへ)。

さらに、そのオリーブ飼料を食べた牛のふんを堆肥としてオリーブ栽培に利用することで「循環型農業」を実現しようとする試みもある(アグリオリーブ小豆島のサイトへ)。

オリーブオイルには、ポリフェノール、ビタミンEとして知られるトコフェロールなどの抗酸化物質が含まれている。搾油行程の残渣にも当然これらの物質は含まれる。この絞り滓と水の両方を利用して化粧品を開発したのが、Avner Talmon氏である。

Talmon家はゴラン高原のガリラヤ湖地域で1997年にオリーブ栽培を始めた。伝統的な有機栽培でオイルを製造していたが、最初は水と絞り滓は厄介な廃棄物であったようだ。特に、ガリラヤ湖はイスラエルにとっての飲料水の主要供給源でもあった(現在は海水の淡水化が主)ので、搾油後に出る絞り滓や水は環境にとって有害なものであった。

▼搾油前のオリーブの洗浄行程
搾油前のオリーブの洗浄行程

▼オリーブを圧搾して出てくる液体。ここからオイルが分離される
オリーブを圧搾して出てくる液体。個々からオイルが分離される

偶然見つけた皮膚への効果

ところが、偶然Avner氏自身が、作業中に転んで絞り滓の山の中に埋もれてしまう事件が起こった。本人は皮膚にダメージが出る(ガサガサになる)と懸念したが、実際には逆で、皮膚がシルクのようにすべすべになったのだという。

この事件をきっかけにして、Avner氏はラボを作って化粧品の研究開発を始めた。そして、この絞り滓と水が、先に述べたポリフェノールやトコフェロールだけではなく、omega6&9、oleic Acid、linoleic acidなどの脂肪酸も含有することを知った。

良く知られているように、人間の代謝活動を通して体の中に活性酸素(フリーラジカル)が生成される。代謝にとって必要なものではあるが、過度に生成されると、老化の促進や動脈硬化を引き起こす可能性がある(タニタのサイトへ)。

絞り滓の中に含まれる様々な成分は、まさにこれらの影響を緩和することが出来る「抗酸化剤」なのだ。

100%天然の化粧品

このような経緯で、質の良いオイルの保湿効果とこれらの成分を利用していろいろな化粧品が開発された(OleaEssenceのサイトへ)。個々の製品の説明・紹介はしないが、素材そのものに抗酸化作用があるため、保存料の不要な100%天然素材化粧品であることが特徴である。

また、絞り滓を細かく砕いた材料を、角質を落とすExfoliate(スクラブ)として利用した、顔やボディのピーリングも開発している。

▼オイルから分離された残渣
オイルから分離された残渣

同じイスラエルの「死海の化粧品」では、スクラブに「塩」を使うが、肌の弱い人はこすると皮膚が赤くなってしまう。しかし、この粉砕したオリーブの絞り滓を利用した角質除去材料はペースト状なので、肌に優しいようだ。Avner氏によれば、ユーザーから「ニキビや湿疹」を治す効果も報告されたとのことである。

沖縄の平良氏との出会い

オリーブの絞り滓から作られたOleaEssenceの日本のパートナーは、沖縄で日本最初のショッピングセンター「プラザハウスショッピングセンター」を経営する平良由乃氏である。

なぜ沖縄なのか、と疑問に思ったのだが、Avner氏は「コンサルタントの方に紹介されて出会った時に、ひと目で平良氏が信頼できる人だと感じたからだ」と言う。アクセスできるマーケットサイズや企業の規模という理屈よりも「信頼できる人」で判断した、というのもイスラエルとのビジネスの特徴だろう。

イスラエル人は、最初は付き合うのが容易な相手ではないが、ひとたびお互いの信用を得れば、とても頼りになる。

7月にはECサイトが用意できるとのことなので、沖縄に行かなくても手に入れることができるようになる。

政府や東京の大企業を中心としたハイテク分野のビジネスだけではなく、異なる分野で自然豊かな沖縄と中東イスラエルのつながりができた、しかも「人の信頼」をベースにしている、というのも両国にとって嬉しい展開である。

イスラエルイノベーション IRI イスラエルイノベーション特集の狙い

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新井 均(あらい・ひとし)

NTT武蔵野電気通信研究所にて液晶デバイス関連の研究開発業務に従事後、外資系メーカー、新規参入通信事業者のマネジメントを歴任し、2007年ネクシム・コミュニケーションズ株式会社代表取締役に就任。2014年にネクシムの株式譲渡後、海外(主にイスラエル)企業の日本市場進出を支援するコンサル業務を開始。MITスローンスクール卒業。日本イスラエル親善協会ビジネス交流委員。E-mail: hitoshi.arai@alum.mit.edu