WirelessWire News Technology to implement the future

by Category

Cybertech TelAviv 2018 レポート(5) Cybertechの目玉、スタートアップパビリオン

2018.03.01

Updated by Hitoshi Arai on March 1, 2018, 07:00 am JST

Cybertech展示会の目玉は、大企業のブースではない。小さな机一つで起業したばかりの企業が集まる「スタートアップパビリオン」だ。今年は、68社が参加した。昨年はAIと機械学習だらけだった印象があるが、今回はは少し地味ではあるものの現実的、という印象を受けた。集まったスタートアップの中で面白かったものを紹介する。

Cybertech TelAviv 2018 レポート(5) Cybertechの目玉、スタートアップパビリオン

Cybertech TelAviv 2018 レポート(5) Cybertechの目玉、スタートアップパビリオン

Perimeter81(Safer VPN)
空港やホテル等のフリーWiFiからネット接続をする場合、常にセキュリティの不安がつきまとう。そのような場合でも、SaferVPNのアプリがあればSaferVPNのセキュアなサーバーへVPN接続し、そこからインターネットを閲覧することでセキュリティを担保するサービスである。

元々は個人向けサービスとして開発されたもんだが、それをビジネス向けVPNという形にして発表していた。個人向けは、月額5ドル程度のサブスクリプションモデルだが、アンチウイルスソフトをPCに導入している場合、時間またはデータ量の上限はあるにせよ、無償で同等の機能を利用することができる。

個人向けとしては競争が厳しいと感じたが、ビジネスVPNという形に進化させたのは良いアイデアだと思った。31日午後のセッションである「Startup Competition」のファイナリストにも選ばれていた。

Cybertech TelAviv 2018 レポート(5) Cybertechの目玉、スタートアップパビリオン

Difenso
電子メールのメッセージや添付ファイル、安全なストレージ、安全な文書の共有など、「データ保護」のソリューションを提供する2015年創業のフランスの企業。EUで今年の5月25日から適用される「EU一般データ保護規則」(General Data protection Regulation : GDPR)の認証を受けていることを掲げており、グローバルビジネスを行う企業にとっては急ぎ対応する必要のある規制でもあり、目のつけどころが良いサービスである。

CYDOME
「Maritime(海運)セキュリティ」を掲げており、海運で用いられる様々なIoTデータをセキュアにするソリューションである。あまり日本では馴染みの無い領域に特化したサービスであるが、例えば、GPSを攻撃されて貨物船の進路を少しでも変えられると、海運会社としては巨大な損失を被る。海上コンテナ最大手であるデンマークのマースクが顧客で200万ドル規模のビジネスをしているという。

empow
2014年10月に創業で、SIEM(Security Information & Event Management)ソリューションを提供している。一般に企業は、各種のセキュリティツールを様々なベンダーから導入しているが、それらの上位にempowのプラットフォームを導入することで、すべてのツールのログを一元管理することができる。企業のセキュリティ管理者をマルチベンダーの問題から解放することが狙いだ。こちらも、Startup Competitionのファイナリストとして登壇した。

Cybertech TelAviv 2018 レポート(5) Cybertechの目玉、スタートアップパビリオン

Detelix社のArgoscope
Fraud(詐欺)検出に特化したソリューションである。24時間/365日で企業の「支払い」に関する処理プロセスを監視し、出金にかかわる詐欺やミスをリアルタイムに検知する。例えば、特定の支払い先に、短期間の間に複数回送金される、あるいは同じ名前の企業だが異なるアドレスに送金される、といった様々な怪しいケースのアルゴリズムが組み込まれている。

NeuraLegion
ソフトウエアの開発者向けに、プログラムコードの脆弱性、論理的欠陥を見つけるソリューションである。今年の展示の中では珍しく、機械学習アルゴリズムにより、人間の「Critical Thinking」をシミュレートすることで、未知の脆弱性を検出するという。開発段階で潜在的な脆弱性を見つけることができるので、ソフトウエア開発者には非常に役に立つツールであると感じた。説明をしてくれた男性は見事な日本語を話したので、どこで勉強したのかと聞いたら、「日本の漫画で学んだ!」という答えが返ってきた。

Page Seal
Webサイトへのインジェクション攻撃を防ぐことに特化した対策ソリューション。ユーザーのPCを常時監視し、独自のアルゴリズムにより、マルウエアに感染したコンピュータからのインジェクション攻撃を防ぐ。企業のコンピュータやWebサイトが原因で、その企業の顧客のPCに被害を与える、といったトラブルを防ぐためのソリューションだ。

Cymmetria
2014年創業の会社で、新しいコンセプトのセキュリティ対策で、Deception(相手をだます)技術を提供している。「breadcrumbs(パン粉)とdecoy(おとり)」と呼ばれるものを顧客のネットワークの中にばら撒き、攻撃者をそちらに誘導して隔離する。顧客ごとに、どのような「だます要素」を入れるかを自動生成する。

イスラエルイノベーション イスラエルイノベーション特集の狙い

WirelessWire Weekly

おすすめ記事と編集部のお知らせをお送りします。(毎週月曜日配信)

登録はこちら

新井 均(あらい・ひとし)

NTT武蔵野電気通信研究所にて液晶デバイス関連の研究開発業務に従事後、外資系メーカー、新規参入通信事業者のマネジメントを歴任し、2007年ネクシム・コミュニケーションズ株式会社代表取締役に就任。2014年にネクシムの株式譲渡後、海外(主にイスラエル)企業の日本市場進出を支援するコンサル業務を開始。MITスローンスクール卒業。日本イスラエル親善協会ビジネス交流委員。E-mail: hitoshi.arai@alum.mit.edu