毎年3月末から4月初め頃には、ペサハ(過ぎ越しの祭)という旧約聖書、出エジプト記を由来とするユダヤ教の最も大切なお祭りがある。
紀元前13世紀頃、古代エジプトで奴隷としての労働を強いられていたユダヤ人は、疲れ果てていてエジプトを抜け出す気力も体力も残っていなかったといわれる。そこで、ユダヤの神はその力をユダヤ教徒に見せて奮い立たせるため、またユダヤの民を開放しようとしない頑固なエジプト王ファラオに罰を与えるために、10つの災いをエジプトに与えた。
10の災いとは、
1.ナイル川の水を血に変える
2.蛙を放つ
3.ぶよを放つ
4.アブを放つ
5.疫病を流行らせる
6.腫れ物を生じさせる
7.雹を降らせる
8.バッタを放つ
9.暗闇で覆う
そして最後の災いが、エジプトの初子を人間から家畜に至るまで皆殺しにするというものだった。
神は指導者であるモーゼに「扉に印が無い家にその災を与える」ことを伝えた。モーゼの指示で、ユダヤ人の家は扉に印をつけることでその災いを受けずに済んだ(過ぎ越した、英語でPassover)のがこの祭りの由来である。
この祭りを通してユダヤ人は、エジプトから脱出して自由の身となった奇跡を親から子へと語り継ぐ。出エジプト記の物語は、何十年も前になるが、チャールトン・ヘストン主演で「十戒」という映画になっている。
ペサハ初日の晩は、ハガダという台本に従って、定められた形式の食事会セデルを家族や親戚で行う。また、この日から1週間は、パンやパスタ、ビールなどの麦製品を食べること、見ることは戒律で禁止され、その代わりにマッツァと言われるイーストで発酵されていないクラッカーのようなものを主食とする。
▼食事会の形式を伝える ハガダ
▼ペサハの夕食。羊の肉、ゆで卵、野菜などそれそれ意味がある。使う野菜は家庭によって異なることも。
砕いたマッツァを団子状にしたマッツォボールのスープやパンケーキのようにして焼くマッツォブライはペサハの代表的な料理だ。味気がなく、口の中がパサパサしてあまり美味しいものではないのだが、なぜか好むイスラエル人が多いのが不思議だ。
▼マッツァを粉にして卵とこねて団子状にしたマッツォボールスープ
イスラエルでは、法律で麦製品を公に陳列することが規制されるため、ピザ屋やパン屋は休業するか、スーパーは一部の棚をビニールで覆って営業する。
※写真提供:Yoko Yamaguchi氏(イスラエル在住)
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