WirelessWire News Technology to implement the future

by Category

“働き方改革”はイスラエルに学べ

2018.05.22

Updated by Miki Alissa on May 22, 2018, 16:08 pm JST

皆様、はじめまして。イスラエル女子部代表の三木と申します。Wirelesswire Newsを通じてイスラエルを勉強していた私が、このように執筆者として参加できることを大変うれしく思います。初回は、“イスラエル女子部”を立ち上げた背景とともに、イスラエルでの男女の仕事へのスタンスをご紹介いたします。

出生率3を超え、女性のマネジメントポジションも高い

イスラエル女子部は「イスラエル式“働き方改革”を日本に!」をビジョンに、2018年1月立ち上げた団体です。まだ半年も経っていませんが、これまで様々な団体にお声がけいただき、400名を超える聴衆の皆様に向けた講演や、メディアの執筆、オウンドメディア「Be a Strong Woman」の展開などを行ってきました。

なぜ、多くの依頼があるかといいますと、市民が知恵を集めたイスラエル式“働き方改革”は,
少子高齢化で財源のない日本において、ヒントとなることが多いからなのでしょう。政治面や経済面ばかりが注目されるイスラエルですが、実は『家庭も、仕事も、両ドリ』に成功している非常に珍しい国でもあるとも思うのです。

▼仕事と子育ての両ドリ(写真はイメージです)
仕事と子育ての両ドリ(写真はイメージです)

まず、イスラエルは子だくさんです。「出生率の高いイスラエル」にもある通り、イスラエルの出生率は3.11人を超えOECDナンバーワン(ついに…!イスラエル・出生率ナンバーワン!。日本が1.42人、出生率が高いイメージの北欧でも2人で推移していることから、3人がいかに高い数値であるかがみてとれます。

また、女性のキャリア形成を指標化した「女性のマネジメントポジション・ランキング」もOECD第9位(The Jerusalem Postの記事)をマーク。さらには、大手企業100社のうち1人でも女性を取締役として雇っている企業の数は、スウェーデン・インド・中国に次いでイスラエルが第4位と高水準です(日本経済新聞の記事)。

実際、現・司法大臣のアイェレット・シャケッド氏は共働きで2児の母、2016年12月に引退したインテルCEOのマキシン・ファスバーグ氏も2人の子供を育てています。イスラエルでは、家庭も、仕事も、どちらも積極的に取る国なのです。

イスラエルの“ボトムアップ”式活動から、日本は学べ

▼男性も女性も積極的に知恵を共有
男性も女性も積極的に知恵を共有

イスラエルが「家庭も仕事も両ドリ」に成功している背景には、1993年にクオータ制(割り当て制度)を政府が導入したり(男女共同参画社会の形成の状況)、企業が働く環境を改善したりといったトップダウンの努力もありますが、注目すべき点は、市民が「家族のため」に知恵を絞り小さな解決策を積み上げる“ボトムアップ”的活動にあります。

ご存じの通り、ヨーロッパなど女性が活躍している国では、政府や企業などトップダウンで税金や環境を整えてきました。しかしこれには莫大の費用がかかる上に、フランスのように手厚くフォローをしても出生率が下がり結果につながらないこと(Japan In-depthの記事)もあります。

その点「家族が何よりも大切」と考えるイスラエルでは、市民が “家族を守るため”に男性も女性も積極的に家事を共有し、『知恵』を形成し、テクノロジーやサービスで置き換えることが可能なものは積極的に活用する、といったボトムアップ式活動も積み上げています。

例えば、お手製ミニ幼稚園。まず子供の同級生とそのママでグループを作ります。そして月曜はAさんが時短勤務しグループの子らを預かり、火曜日はBさんが早めに帰宅し預かり、水曜日はCさん…と預かる家庭をグルグル回してゆきます。結果メンバーが5人いれば、時短勤務すべき日を週1日に抑えることができます。

他にも、日本にも上陸しているロボット掃除機。日本での普及率が4%・アメリカでは9%ですが、イスラエルでは2015年時点で既に37%を誇ります(イスラエルのGlobes の記事)。

これらの知恵は、言われてみればなんてこともない「小さなコト」に見えるでしょう。しかし少子高齢化で財源がなく、家族を中心とした仕事の環境も整っていない日本においては、イスラエルの知恵をマネするだけで、救われる家庭が少なくない、と考えます。

▼イスラエル女子部のWebサイト
イスラエル女子部のWebサイト

そこで、イスラエル女子部は、キャリアを積みながら家族を守っているイスラエル人にインタビューを行い、『知恵』を集め、日本に伝えることで、多くの日本人の皆様にインパクトを与えたい、参考にしていただきたいと考えています。

閉塞感のある今だから、等身大の幸せくらいは守りたい

▼家族と共に生きる「幸せ」だけは守っていきたい(写真はイメージです)
家族と共に生きる「幸せ」だけは守っていきたい(写真はイメージです)

日本は少子高齢化で新しく生み出すエネルギーを失い、隣国中国に押され、世界で戦えるパワーをじりじりと失いつつあります。2020年より先は明るい情報が出てくる気配がなく、夢も希望も持てなくて、生きているだけで頭がクラクラしてしまう方も多いでしょう。

もちろん、先人たちの力で日本がここまで大きくなったことには感謝はしてはいますが、恨めしく思ってしまう気持ちがあるのも正直なところ。何しろ私の世代はバブルを経験していませんし、毎月徴収される年金も私の手元には戻ってこないと確信しています。

とはいえ、嘆いても、地団駄踏んでも、何も未来は変わらない。そんな閉塞感のある今だからこそ、家族と共に生きる「幸せ」だけは守っていきたいのです。等身大の幸せと自分なりの“贅沢”を発見していきたいのです。

イスラエルイノベーション イスラエルイノベーション特集の狙い

WirelessWire Weekly

おすすめ記事と編集部のお知らせをお送りします。(毎週月曜日配信)

登録はこちら

三木 ありさ(みき・ありさ)

1992年生まれ。早大法学部在籍中にプリザーブドフラワー専門ブランド立ち上げに参画し、楽天ナンバーワンブランドに育てる。卒業後。外資系メーカーにその企業初の学卒マーケターとして採用されCRMを担当。その後、日本酒ベンチャーで新ブランド立ち上げに参画。現在は、イスラエルのハイテク製品を日本に展開する企業で新規事業開発マネージャーとして主にHealthTech、EdTech製品を担当。また、イスラエル女子部を立ち上げ代表に就任。これまで、延べ450名に「イスラエル×女性×教育・起業」などテーマに講演。詳しくは「Be a Strong Woman」を参照。