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シンガポール 監視カメラ イメージ

権威主義とAI

Authoritarianism and AI

2018.09.28

Updated by Mayumi Tanimoto on September 28, 2018, 07:15 am UTC

AIはビジネスを変革し、世の中に革新をもたらすといいうイメージが先行しています。

負の側面が取り上げられることもありますが、その大半は雇用が減る、といったもので、議論の視点が自由民主主義を主体とする先進国の視点に偏っているように思うのです。

AIと監視技術の発達により、権威主義国家や独裁国家では民衆の抑圧がさらに容易になっていることはあまりとりあげられることはありませんが、ネットで過激派勢力が拡大したり、フェイクニュースが溢れ世論に影響を及ぼし始めたように、AIによる抑圧は、革新よりも大きな問題になる気がするのです。

権威主義国家や独裁国家では、従来は「民衆を抑圧し、貧困と停滞に甘んじるか」、「民衆の自由や想像力を解き放って経済的果実を手に入れるか」の選択肢が存在していました。

ところがAIと監視技術の発達は、権威主義国家は市民を豊かにしながら、技術を使って市民を統制できるようになっているところがポイントです。

例えば、中国は信用創造システムやデジタル決済を使って民衆を細かく監視するようになってきています。

消費者にとって便利ではありますが、その根源的な目的は、かつての計画経済以上の統制でしょう。

中国だけではなくシンガポールもこういった監視システムを政府が導入することが発表されています。

例えば、シンガポール政府のテクノロジー部局であるGovTechは、島内の11万の電灯に顔認識が可能なカメラを搭載し、Lamppost-as-a-Platform(LaaP)として来年から実施実験することを発表しています。

ロイターによれば、中国の顔認識技術を持つ企業であるYitu Technologyは、すでにシンガポールにオフィスを開設しています。

同社は開発拠点の開発も計画していますが、3秒の間に18万の顔の認識が可能です

私は先月はシンガポールに滞在していたのですが、街にゴミひとつ落ちていない、コンビニも店の品揃えがきちんとしている等、近隣アジア諸国のルーズさや、欧州の適当さとはかけ離れた「きちんど度」に度肝を抜かれました。

しかし、町中や天井を見上げるとそこには監視カメラがあり、掃除人の仕事ぶりが細かく監視されています。

街のいたるところに「何をやったら罰金」という看板や注意書きがあり、監視国家の息苦しさを感じたのも事実でした。

書店では日本から輸入されたSPA!などの週刊誌が有害書籍として検閲されてページを切り取られ、漫画「進撃の巨人」は販売されていません。

元々厳しく監視している所にデジタルツールが登場したわけですから、監視がより厳しくなるのは目に見えています。

新興国のほとんどは権威主義国家や独裁国家であり、その統治の仕方も哲学も、自由民主主義国家とは大きく異なります。

今後主役となっていくのがそういう国々だとした場合、次世代の経済発展モデルのデフォルトになるのは、民衆の自由を制限した上での経済発展になってしまうのでしょうか。

しかし創造性や権威の破壊というのは、表現や思想の自由を下地として産まれるもので、そういう体制が主流になった場合、自由闊達な発想や技術は産まれるのかどうかはわかりません。

一方、ロンドンやサンフランシスコはゴミだらけで、落書きも自由な格好をした学生も、独立系の過激な書店もあって、トイレの掃除も極めていい加減なのでありますが、しかし変わったものを求める人々が世界中から集ってきて変なものを作っています。

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谷本 真由美(たにもと・まゆみ)

NTTデータ経営研究所にてコンサルティング業務に従事後、イタリアに渡る。ローマの国連食糧農業機関(FAO)にて情報通信官として勤務後、英国にて情報通信コンサルティングに従事。現在ロンドン在住。

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