画像はイメージです original image: © Aleksey - Fotolia.com
厚生労働省の「毎月勤労統計」問題をITガバナンスの観点から検討(2)
Discuss Japanese Government's stat scandal with IT Governance
2019.01.29
Updated by Mayumi Tanimoto on January 29, 2019, 07:15 am JST
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Discuss Japanese Government's stat scandal with IT Governance
2019.01.29
Updated by Mayumi Tanimoto on January 29, 2019, 07:15 am JST
今回は前回に引き続き、厚生労働省の「毎月勤労統計」問題をITガバナンスの観点から検証します。検証にあたっては、厚生労働省の毎月勤労統計調査を巡る不適切な取扱いに係る 事実関係とその評価等に関する報告書を引用しています。
・要因管理、リソースマネジメントが不十分
システム改修の依頼を受けたシステム担当係は外部業者等に委託することなく自前でシ ステム改修を行うことになるが、毎月勤労統計調査に係るシステムのプログラム言語は COBOL であり、一般的にシステム担当係で COBOL を扱える者は1人または2人に過ぎなかっ た。
これもかなり驚いた事実ですが、基幹統計に係るシステムなのにも関わらず、COBOLを扱える要員がたった一人であったことです。
この要員の労働工数の検証は十分であったか、またどの様なスキルレベルだったかということが疑問視されます。
また、その人が事故や病気で就労できない場合のバックアップが一切考慮されていないようです。これは要員管理の原則を無視した無理のある要員計画です。
ITガバナンス委員会できっちりと検証する仕組みがあったのであれば、この体制はまっさきに議論になるところでしょう。またこの組織には、要員管理を監督するリソースマネージャが不在であったことがよくわかります。
・チェックができない体制
このため、一般的にシステム改修を行う場合はダブルチェックを行うが、ダブルチェッ クができない場合も多かった(平成15(2003)年当時は COBOL を扱える者は2人い たが、それぞれが別の仕事を分担して処理していたため、当該者同士でダブルチェックを するようなことはなかった)。
要員が一人しかいなかったためにダブルチェックできなかった、という説明になっていますが、つまりこの組織では、変更管理が一切なかっただけではなく、テストが行われていなかったということです。
これも変更管理の不備です。
また2013年には要員が二名いたのでダブルチェックしていなかったとありますが、要員が何人でも変更管理プロセスのタスクとして変更の確認とテストを行うのは当然のことでしょう。
・定期的な品質管理が行われていない
一度改修されたシステムのプログラムの該当部分は、それに関連するシステム改修がなされない限り、当該部分が適切にプログラミングされているか検証されることはなく、長期にわたりシステムの改修漏れ等が発見されないことがあり得る。
これも驚くべき事実ですが、変更が行なわれない限り、アウトプットの検証が行われないということです。基幹統計という重要データを扱うわけですから、定期的な検証を行うプロセスを品質管理プロセスに含めるべきでしょう。
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登録はこちらNTTデータ経営研究所にてコンサルティング業務に従事後、イタリアに渡る。ローマの国連食糧農業機関(FAO)にて情報通信官として勤務後、英国にて情報通信コンサルティングに従事。現在ロンドン在住。